7 鶴瓶さんをほぼ日の社員に?!
糸井 鶴瓶さんがさ、
『A-Studio』だっけ、トーク番組。
あれをはじめるときの新聞を読んで、
ぼくは鶴瓶さんに、
すぐに連絡が取りたかったんですよ。
鶴瓶 ほうほう。
糸井 「いまのテレビは
 ぜんぶアンケート取ってるのが嫌だ」と。
「あのアンケートをなくした番組を作りたい」
っていうのがスポーツ新聞に書いてあったんです。
おれがもう、まったく、
テレビから離れた理由は、それなんですよね。
鶴瓶 うん。
糸井 つまり、
全員がわかってることを再現するって
おもしろくもなんともないじゃないか? と。
テレビっていうのは、
なにが起こるかわからない、
おおきい意味では「報道」の形なんですよね。
テレビって、ぜんぶ報道なんです。
なのに、それがぜんぶつぶされちゃって、
魅力を感じなくなってたところに、
鶴瓶さんが「アンケートやめたい」って。
鶴瓶 いや、それはね、
ほんとあるやないですか。
トーク番組の前にアンケートもろて、
「これはどうですか、これはどうですか」って。
これ、おかしいやんと。
糸井 おかしい(笑)。

※『A-Studio』(エイ・スタジオ)

 TBSで2009年から放送されている、
 公開トーク番組。
 番組は毎回、鶴瓶さんが
 ゲストについての取材を重ねた上で、
 トークの収録が行われる。
 取材の対象は共演者やマネージャー、
 ときには家族や幼なじみにもおよぶ。
 鶴瓶さん自身が取材を行うため、
 ゲストも取材を受ける人も
 たいへん驚くことが多い。
 「事前アンケートを行わない番組」を
 実現するために鶴瓶さんは、
 どんなにたいへんでも
 自分が取材を行うことを約束したとか。

『A-Studio』の公式サイトはこちら

鶴瓶 「これをやるのがキャスターやろ?」と。
「それが司会じゃないの?」と。
糸井 だれの役目なんだっていうのは、
思いますよね。
鶴瓶 そうそうそう。
それをやるのがぼくらの役目でしょう。
おれがほんとうに、
「これを聞きたい、あれを聞きたい」
思いながらやるのが、本番でしょう。
糸井 うん、うん。
鶴瓶 あとね、取材がおもしろい。
その人の周りの人に会いに行くと、
活字にないものが、すごい出るんです。
だからまあ、
誰かが取材してどっかで読んでることでも、
その人に会って聞くと、
「あ、ほんまやったんや」と、
あらためて感じるわけですよ。
「そんなんウソや」と思てても。
例えばね、
松たか子さんなんかは、
染五郎さんがお兄さんで、
松本紀保さんがお姉さん。
染五郎はもう昔から芝居が好きで、
ずーっと松たか子に、
まあ言うたら、
もう端役をやらせてたんやね。
糸井 はあ~。
鶴瓶 自分はずっと主役をやってて。
それ、インタビューで見たことあんねんけど、
そんなんほんまかいな? と思いますでしょ。
でも、ほんとなんですよ。
染五郎さんは、ものすご芝居が好きなんです。
それで、
「動いたらあかん!」とか、
お父さんに言われたことをぜんぶ、
ずーっと、松たか子にやってたんです。
糸井 へええー。
鶴瓶 「違う!」
パンッて叩いて。
糸井 おもしろいねぇ、やっぱり。
鶴瓶 それはおもしろい。
やっぱりそこまで聞かないと。
糸井 ‥‥はあ~~~。
鶴瓶 だから、活字で読んで、
「ほんまかいな?」なことでも、
実際に取材して、人の言葉で聞くと、
「これは言ってあげたい」と思うんですよ。
糸井 うんうん。

‥‥おれはね、鶴瓶さん、
あの記事、
「アンケートをなくした番組を作りたい」と
鶴瓶さんが言ってる記事を読んだときにね、
うちの会社に、鶴瓶さんを入れたいと思った。
鶴瓶 ふははははは。
糸井 いや、むかしぼくね、
ある会社に呼ばれて
ゲームの審査員みたいなことを
してたことがあるんです。
そのとき、なんかその会社の中が
学校の部室みたいにみえたんですよ。
いいなぁ、と思って、
「この会社に入れてくんないかな」
って言ったんですよ。
月に3万円とかで、ちゃんと仕事するって。
仲間に入りたかったんです。
そしたら、
「いいですね、わっはっは」
で終わりになっちゃった。
鶴瓶 本気でそう思ったん?
糸井 思ったんです。
鶴瓶 おれもね、魚屋を1年くらいやりたいと
ほんまに思ったことがあるんですよ。
糸井 わかりますよ、ありますよね。
鶴瓶 若いときですけどね、
ほんまにそうしようかな思たんやけども、
いや、それよりもね、
そういう芸人になったらええんや思て。
いまぼくは、
「宅配便の笑い人(わらいびと)」
みたいなものですからね、町の。
糸井 そうですね、そうですね。
鶴瓶 有名じゃない、何もしない人に
スポットを当ててあげたいんです。
人間国宝とかじゃなくて、
町の近所にいたはる、なんでもない人。
でも、いい人。
その人にどう、スポットを当てるか
いろいろ考えるのが、
ぼくはいちばんおもしろいと思うからね。
糸井 ああー、よくわかる、それは。

‥‥うん、だからね、
こういう話を、
「会議」をしたかったんですよ。
対談で会うっていうのは、
お互い「鶴瓶として」「糸井として」
になるじゃないですか。
鶴瓶 まぁ、そやね。
糸井 そうではなくて、
ふたりが同じ会社の人のように、
「このプロジェクトをどうするか」って
話し合えるといいなあって思ったんですよ。
友だちとして飲んで語るだけじゃあ、
できないこともありますからね。
鶴瓶 うん。
それは、そうなんやろね。
糸井 で、
月にいっぺんとか、
ふた月にいっぺんとか、
鶴瓶さんに会うのってできないのかなと、
本気で打診しようと思ったんだけど‥‥
難しいですよ、そんなことは(笑)。
鶴瓶 ぅふっはっはっ。
ほんま、あなたは、
いろいろおもろいことを(笑)。
  (つづきます)
 
2011-01-07-FRI
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