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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第821回

ほぼ日編集部様

6月6日のニュースから

阪神が快勝してジャイアンツガ負けた。
プロ野球の再開。言い出だしだね。井川完封。
今や完全に阪神のエース。
いい気持ちながら疲れて寝てしまった。

久しぶりに駆け込み入稿だ。
ごめんなさいね、編集部の皆さん!!!
朝も頭が重くて今一つ。
こういうなんか体の調子が今一つというときは
年に何回かあるんですよねえ・・・
それでもこれを書かないと
調子はもっと悪くなるだろうと、
頭に活を入れるために書き始めました。

書きたいことは新聞を読めばいっぱいあるんです。
これは新しい現象だなあ、
とかこの書き方はないだろうとか、
面白がったり、怒ったり・・・
そのまま書けば結構な新聞時評になるんでしょうが、
時間がなくてねえ・・・

で、今日はこの記事を取り上げて
皆さんに考えてもらいましょう。

今日(6/6朝刊)の朝日新聞の7面にこの見出し。
(3段)

「伊下院、移民対策法案を可決」
「EU以外の外国人 指紋押捺を義務化」
「人権団体など反発」

EU(欧州連合)各国でこのところの選挙で
移民排斥を唱える極右・右翼政党が
勢力を伸ばしているが、
今度はイタリアで、下院がEU以外の国からの
外国人居住者に対し
指紋押捺を義務化とする移民対策法を可決したそうだ。
現在イタリアでは、中道右派といわれる
ベルルスコーニ政権なのだが、
この政権は不法就労者の締め出すことを狙って
今回の法案提出となった。
当然のことながら人権団体は猛反発を見せている。

法案によると、EU以外の国籍を持つ移民や労働者は、
滞在許可証の申請や更新の場合に
必要書類に指紋を押さなければならないという。
記事によると、
イタリアの総人口に占める外国人の割合は
2、2%だそうで、
ドイツやフランスなどに比べると遥かに低い数字だ。
しかし、ベルルスコーニ首相は
「犯罪容疑者に占める外国人の割合は平均でも25%、
 地域によっては60%だ。
 移民の流れを食い止めなければならない」
と主張しているという。
先日は移民排斥を唱える
オランダの極右政党の党首が射殺され、
その後に行なわれた選挙では極右政党が躍進した。
またフランスでは始めて極右政党「国民戦線」の
ルペン代表が大統領選の決選投票に進出した。
結果的には17%程度の支持率で、
フランス国民の右翼政権絶対反対という意思は
表明されたけど、
極右政党の存在感はたっぷりと示された。
そうした右翼政党がEU各国で進出している背景は
ほとんどと言っていいくらい、
外国人労働者、つまり移民または不法滞在者問題だ。

実は、昨日(5日)の朝日新聞夕刊2面に
関連のこんな記事があったのを思い出して、
ここに紹介しておこうと思う。
一つ一つの記事を読んでいるだけでは
現在進行している「今そこにある危機」は
なかなか一般読者では理解することが難しいんですね。
そういうばらばらに報道される
ニュースの断片をつなぎあわせて
読者に提示するのが
実は「ニュースの職人」を自称する
私のような仕事なんですね。

さて、夕刊の記事の見出しはこうです!

「ドイツ語できぬ 外国人締めだし」
「オーストリアが新法案 
 低賃金労働者の排除狙う」

オーストリアも政権をとっているのは
保守・国民党と極右・自由党の連合だ。
この連立政権が4日、
ドイツ語が出来ない外国人を
事実上の国外退去処分にすることを骨子にした
『外国人統合法案』を閣議決定したという。

先程のイタリアは指紋押捺というやり方だが、
ここオーストリアは「ドイツ語」だ。
こういう言葉を滞在の条件にする国は
あまり例がないと朝日の記事は伝えている。
この新法案の背景には排外主義を掲げてきた
ハイダー氏を党首に持つ自由党の意思が
強く反映されているという。

記事によると、当初は
日米など欧州以外の国から来る
企業の駐在員や家族なども対象になっていたというが、
さすがにそれは関係国との反発や
対外経済関係の悪化を考えて、
企業関係者に限り例外扱いするんだとう。
細かいことは省くが、
これでドイツ語を習得しない外国人労働者は、
基本的には締め出されてしまうことになりそうだ。

実はもう一つあるんだ。
毎日新聞の6日付の7面に下手記事でこういう見出しが。

「アラブ出身者の指紋押捺義務化提案へ 
 テロ対策で米司法省」

記事によれば米司法省はテロ対策として、
アラブ諸国など「指定国」からアメリカにやって来て、
滞在する外国人に
指紋押捺と住所の登録を義務づける制度を
導入するように新制度を提案するそうだ。
対象はアラブ諸国出身者や
イスラム教徒を中心に約10万人。
またこの「指定国」にはアメリカが
「テロ支援国家」としている
北朝鮮やイラクなど7カ国の他に、
テロとの戦いで「同盟国」視している
パキスタンやサウジアラビアも含まれるという。

これは欧州の移民労働者排除の論理と
基本的には異なるものだが、
背景にあるのは20世紀後半から
21世紀にかけてボーダレスになってきた反動として今、
地球上の先進国と言われるところでは、
今、外国人を自国人と区別、と言えば聞こえはいいけど、
まあ、有り体に言えば差別して中にいれない、
「排外主義」が燃え盛っているんだという事実ですね。
そういう流れから日本だけが
例外ということはないでしょう。
次第に高まる日本での不法滞在問題と
外国人労働者に頼る日本経済との矛盾。
これはやがて欧米のように
大きな問題になるでしょうね。

今日はここまで。
また明日・・・・

2002-06-07-FRI

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