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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第793回

ほぼ日編集部様

5月7日のニュースから

今日は新聞は休刊日だ。
朝がなんだか手持ちぶさただね。
テレビだけ見てるのってやはりつまらない。
活字で朝一番に頭の体操をやって
どうやら目覚めるんだからね。
そこで、実は昨日、一昨日と
この休刊日用にとっていた話題・記事があるんだ。
今日は5月4、5、6日の
朝日新聞の有る目立つ記事について言及しておきたい。
これは確実にこれから始まる
有事法制論議の中で取り上げられるだろうし、
防衛問題の根幹の問題なのだから。
一言でいうと「文民統制」・・・
シビリアンコントロール。
日本の自衛隊では案外
これだけは守られてきたという感じがしていたのだが、
ここへ来て、ということは例の「9・11」以後
ということですが、
自衛隊の内部である確かなうごめきが
始まっているらしい。
そういうことらしいんですよ。

具体的に見ていこう。
これは私の記者を経験したものの勘ですが、
連休中を狙ったように朝日の1面に
トップまたは準トップ記事で
防衛庁絡みの記事が出ている。
日付順に見ていくと
5月4日(土曜日)の1面トップ記事の見出し。

「防衛庁、民間人派遣を要請」
「テロ対策 インド洋周辺で装備修理 
 石播などで受け入れ」


5月5日(日曜日)1面準トップ
「『文民統制』巡り対立  制服組を内局警戒 
 防衛白書原案論議」

 
これには2面にかなり長文の
解説記事がついていて・・

「防衛白書原案 朝鮮半島情勢を注視 
 『省へ昇格』希望も盛る」


5月6日(月曜日)の1面トップ記事。

「海幕、米軍に裏工作 
 <イージス艦派遣>対日要請促す 
 4月に幹部『対イラク戦の前に』」

 
これも2面に佐々木芳隆記者の
相当突っ込んだ解説記事が掲載されている。

「文民統制揺るがす独走 海幕裏工作 
 日米関係損なう恐れも」



新聞記者も御休みモードに入る
この連休期間を狙ったように
朝日の防衛担当記者はハッスルしている。
これも連休明けから始まる
有事法制論議を念頭においての、
つまりはタイミングを考えての原稿出稿だろう。
こういうかなり深い内部の記事が出てくる
もう一つの背景は恐らく内部で亀裂が生じている。
つまり路線や派閥や理念と言ったもので
内部の対立が生じているからでしょう。
それは5日の記事に見られるように、
防衛庁内部で内局(文民側)と制服組の間で
「文民統制」という考えを巡って
かなり深刻な対立があるらしいこと、
それに「9・11」以後、
制服組の中でも、特に防衛庁海上幕僚監部(海幕)の
突出が激しいことなどがあり、
これに対し内局側から
懸念があるんではないかということだ。

まあ、はっきり言ってしまえば
海幕のアメリカの危機感に載った形での”暴走”に
内局側が危機感を募らせており、
これが朝日新聞の記事という形で
表に出ているんではないか。
私はそういうふうに読みましたが・・・

さあて、少し記事の内容に触れておきましょう。
3本の記事全部を紹介すると大量になるので、
ここは6日の

「海幕、米軍に裏工作」

という
かなりショッキングな記事に絞ります。

記事によれば、4月16日に
ワシントンで開かれた審議官級の
日米安保事務レベル協議(ミニSSC)の開始に先立つ
非公式協議で米側から、
イージス艦とP3C哨戒機のインド洋への
派遣打診があったそうだ。
また、4月29日にワシントンを訪れた
与党3党の幹事長に対しても
アメリカのウォルフォビッツ国防副長官が
同じく派遣要請をしたとされている。
この記事は私も記憶がある。
この欄で取り上げようかと思ったくらいだから、
その時はそれほど派手な記事ではなかったが、
確かベタ記事ながらちょっと気になるものだった。
このときは日本側は確か
アメリカの要請には
いい返事はしなかったと記憶している。

6日の記事でも
「いずれの場合も日本側は否定的に反応している」
と書いている。
こういう表の動きだけを知らされてきた私ら読者、
というか、国民はそうか、
アメリカはいよいよイラク攻撃に備えて、
日本を引きずり込んで後方支援への協力を取り付けようと
躍起になっているな。
そういうふうに漠然とだが、
感じていたんだと思う。

ところが、どっこい!!
この記事によると裏があったということらしいです。
まあ、はっきり言えばまたしても
国民は騙されかけていたということですばいね。
朝日の記事は日米双方からの取材で、
実はこのイージス艦や
P3C哨戒機のインド洋への派遣が
アメリカからの要請ではなく、
日本側からアメリカサイドに
「日本側に要請してくれ」という、
一種の外圧頼みの裏工作が存在したことを
明らかにしている。

記事によれば、海幕の幹部は、
4月10日、在日米海軍のチャプリン司令官を
横須賀基地に訪ね、面談の席上で
「米側から次の3項目を日本側に要請するよう、
 準備したメモ書きにそって促した」
という。
ここではこの「促した」という言葉がポイントですかね。
この「促す」には、すみませんが、
こっちから言えませんので、
そっちから要請という形で日本側にいってくれませんか。
そうしていただくと大変に助かるんですが・・・・・
というような意味が含まれているようだ。

で、その次の3項目とは何か?ということですが・・・

1。海事イージス駆逐艦は警戒監視能力に優れ、
  米海軍との情報交換分野で相互運用性
  (インターオペラビリティー)が
  強化できるので派遣を期待する

2。捜索救難の分野で高度の
  水上監視能力を持つ
  海自P3C哨戒機による支援を期待する。
  もしディエゴガルシア島近辺に来てもらえば
  大いに評価する

3。海自補給艦2隻のインド洋展開をできる限り
  永く維持してもらえれば非常に喜ばしい

朝日の記事は上記のように非常に具体的に日本側からの
「やらせ要請」の内容を記述しているので、
かなり真実をついているものだと思われる。

そして、じゃあなぜ日本側が
こんなやらせ要請をやったのかの答えとして、
次のような「米軍事筋」の言葉を引用している。

「仮に米軍が対イラク開戦に
 踏み切ってしまってからでは、
 イージス艦やP3Cの派遣は難しくなる。
 何もないうちに出しておけば、
 開戦になっても問題にならないだろう」

上記の理由について朝日は
米軍事筋から取材はしているが、
この理由を米軍側に説明したのは、
実は日本の海幕幹部だという。
アメリカ側の説明ではないんだねえ。
つまり、日本の海幕幹部は
アメリカのイラク攻撃が始まってからでは、
イージス艦やP3C 派遣は国内世論から許されない。
だから、そういう状況になる前に
アメリカ側からの要請で日本が
仕方なく出かけていくと形をとりたいので、
ひとつ宜しくおねげーしますだ・・・・
ま、こういう構図かしらね。

この辺が本当だとすると、何から何まで日本の海幕、
つまり日本の海軍ですね、ここが防衛庁の幹部、
つまり内局にも内緒でイージス艦やP3C哨戒機を
インド洋上に派遣する秘密工作をしていたことになる。
こういう制服組の、つまり武装部隊の、
勝手な判断による暴走が日中戦争でも太平洋戦争でも
日本を最後は悲劇にも
追い込んでいった事を考えるならば、
戦後初めて制服組の独自行動に繋がる
「裏工作」の実態について、
今国会できちんと明らかにして欲しい。
また、日本のシビリアンコントロールの
実態はどうなっているのか、
きちっとチェックしてほしかですばい。
この記事の与えるインパクトは
結構大きいんではないでしょうか。

連休明けというのは何だか体がだるいですねえ・・・・
ではまた明日・・・・・

2002-05-08-WED

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