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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第685回

ほぼ日編集部様

1月9日のニュースから

昨日書きたいと思いながら
時間切れになったニュース。
一日遅れで申し訳ないけど、いいよねえ。
問題は中身だから。
それはこういう見出しの記事です。

「79歳夫・介護の妻82歳、自宅で死亡」
「正月、自宅に引き取ったが 
 妻が発作、夫は衰弱死か」

 (1/8朝日新聞)

「正月越せずに衰弱死? 杉並の自宅で 
 元N響団員79歳夫と82歳妻」

 (1/8毎日新聞)

1月8日の朝日と毎日の朝刊、
社会面に朝日は3段、
毎日は4段の囲み記事で出ていましたので
気がついた人もいるでしょうが、
今の時代、というよりこれからの私達の姿を
暗示させる話で、
私にはとてもひと事ではないと言う気持ちでした。

両方の記事を読み比べると今日は
圧倒的に毎日の記事の方が内容で優れている。
朝日にないあるキーワードが毎日新聞の記事にはある。
昨日の北米国際自動車ショーの記事では
毎日は本当に情けない記事でしたが、
やはり国内で記者がちゃんと取材すれば
毎日だってまだまだ大丈夫ってことかな。

はい、はい、前書きはいいから
早く本記をお願いしますよ、
という声が聞こえてくるようなので、先に進みますばい。
まず、事の次第を朝日の記事から見ていきます。
元NHK交響楽団のバイオリン奏者の夫(79)と
妻(82)が自宅寝室で亡くなっているのが7日午後、
訪ねて来た友人によって発見されました。
夫はベッドの上で、妻はベッドの脇に倒れていて、
すぐそばに紙おむつがあったという。
朝日の記事はなぜかえらく
この紙おむつにこだわっていて、
亡くなった時の状況を荻窪署の見方として
「荻窪署は、寝たきりの状態が続いていた夫
 (新聞紙面では本名あり)の
 おむつを代えようとした妻が、
 なんらかの発作を起こして倒れたと見ている。
 夫は衰弱死したらしい」
と書いている。

朝日の記者はどうも高齢者の
こういう悲惨な死に方のキーワードとして
「紙おむつ」をシンボライズして
表現したかったらしい。
朝日の記事によると、
夫は1昨年から入退院をくり返していたが、
妻が「正月は家で迎えさせてあげたい」と
昨年12月中旬に自宅に引き取ったんだとう。
奥さんのこの優しさが、
逆目に出たと言うことかもしれないが、
それを言っちゃあおしめぇよということだよねえ。
奥さんもまさか自分が何か発作を起こすとは
思っていなかったでしょうしね。
でも、奥さんがきっと心臓マヒかなんかで倒れ、
その時点では夫はまだ亡くなっていなかったんでしょう。
意識もあったかも知れない。
でも妻が倒れてもどうすることもできないほど
夫は衰弱していたのかしら?
電話で誰かに知らせるとか出来なかったのかしらねえ。
そんなことをつらつら考えていると結構辛い記事だよ、
これは、うん。
自分の身に近い将来起こらないという
保証はないんだからと思う。
さて、じゃあ毎日新聞はどう書いてるか。
基本的な事実関係は朝日と同じだが、
この夫妻の病気の事が少し詳しく出ている。
これは読者にとって大事なファクターなんだと思う。
毎日の記事を少し引用しておこう。

「調べでは、Mさん(紙面では本名)方は2人暮らし。
 夫はがんで1昨年から入退院をくり返していたが、
 正月を自宅で迎えるため、
 妻が病院の許可を得て先月中旬に連れ帰ったという。
 夫はベッドで寝たきりで、
 ベッドの上であおむけで亡くなっていた。
 妻はベッド脇で倒れていた。
 妻も持病があった。
 (中略)
 同署は、妻が31日から元日にかけ死亡し、
 その後食事を取れなくなった夫が
 衰弱死したのではないかと見ている」

そうか・・・・・
みんなが紅白歌合戦を見ているころに
妻は何かの発作で倒れ、
夫はそれに対しどうすることも出来ないまま正月を迎え、
みんながあちこちで
「明けましておめでとう」
なんか言い合っているころに
この元N響のバイオリニストは
静かに息を引き取っていったんだろう。
夫は妻が亡くなった時どの程度意識があったんだろうか。
すでにもう意識も混濁状態だったんだろうか。
それとも意識は明瞭だったんだろうか。
意識があったとすれば何を思いながら
自らの死を受け入れて行ったのかしら。
そういう光景を記者達は少しは想像力を働かしながら
記事を書こうとしたのかしら。
いくつも疑問が残る。
ひょっとするとこのバイオリニストは凄く安らかに、
遠のいて行く意識の底で自らの死を
受け入れて行ったんじゃなあいだろうか。
これは私のそうあってほしいという、
願いもこもった推測に過ぎませんが・・・・・・
もう一つ最後に毎日は奥さんにも
「持病があった」と書いているが、
持病はどんな病気だったんだろう。
自分に引き付けてこの記事を読む人は
そこんところが知りたいんだよねえ。

皆さんはこのニュース、どう思うんだろうなあ??

ではまた明日・・・・・

2002-01-10-THU

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