TORIGOE
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最近のニュースを知る。

鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第654回

ほぼ日編集部様

12月1日のニュースから

実は今日のテレビ番組に
雅子さんの出産が重なるんじゃないかと案じていました。
と、いうのはそうなると、
例え番組進行中でもマスターカットといって、
マスターコントロール室でブツンと番組を切り、
強引に出産の臨時ニュースを入れることに
なっていたからです。
そうなるともう番組はグチャグチャ、
私ら番組を作ってる側からするととても悲しいわけです。
昨日夜入院、と聞いた時にはこれは危ないなあ、
と思いました。
結果的には2〜3時間のずれで、
まあかすったというところですかねえ。
お目出度いのはお目出度いんですけど、
まあ、どのチャンネル回しても祝福ムードで、
まあそりゃあいかんとは言いませんが、
なんだかもううんざり。
これがここ数日続くと思うとねえ・・・・
すこしやりすぎなんじゃない?
私が天の邪鬼なんでしょうかねえ?

さあ、ところで今日のニュースなんですけど、
例のアメリカの学者、
ドン・ワイリ−さんの行方不明事件ですが、
私のにらんだ通り、ほぼ日の読者でアメリカで
こういう事件の詳しい情報をお持ちの方が
かなりいらっしゃいました。
これって、すごいよねえ!
こういう情報のネットワークは新聞社も
テレビ局も持ってません。
改めてインターネットの力を感じてます。
というわけで、そのうち一つ二つ内容だけ
紹介しておきます。
ほぼ日のネットワークがどのくらい広がりがあるのかを
知っていただきたいからです。

まずはこの方はワイリ−博士の近くにおられた日本人です。
名前は伏せます。

_________________________

私は現在アメリカ、ハーバード大の
ドン・ワイリー (Don Wiley) の
隣の研究室に留学中の研究員です。
Don 自身とはさほど言葉を交わしたことはありませんが、
彼の研究室の研究員、学生とは親しくしていますし、
今回の失踪事件も近くで見聞きしてきました。
何かお役に立つならと思い、
こちらで分かっていることをお知らせしようと
書いております。

もうお知りのことと重複するかもしれませんが、
事件のあらましについてまずまとめてみます。
11月16日早朝、彼が借りていたレンタカーが
テネシー州の州境を少し越えたとこ
ろにある橋の上で乗り捨てられているのを警察が発見しました。
車にはイグニッションキーが差し込んだままになっており、
燃料も十分はいっていました。室内に争った形跡はなし。
彼はテネシー州メンフィスで開かれた会合に
参加していたところであり、前夜の夕食で
彼を見かけた人は“彼は元気であった”といっています。
彼の失踪について分かっていることは、
実にほとんどこれだけであり、
もういなくなって2週間が経ちますが、
事件直後から何ら情報は増えていないのが現状です。

事件の状況から自殺の可能性を考える人もはじめいました。
しかし彼は精神的、肉体的にもまた経済的にも
何ら問題は抱えていなかったようです。
研究においても、彼はもっとも成功している
研究者の一人に数えられるといってよいでしょうし、
行き詰まっていたとは考えにくいです。
彼の奥さんは“自殺はあり得ない”と
コメントしているようです。

ですので、彼の失踪はまったく訳が分からない、
不可解なものだとこちらでも受け止められています。
犯罪に巻き込まれたのか、とも思いたくなりますが、
しかし何らそれを示唆するような手がかりもない。
事態が進展しないまま時が過ぎるにしたがって、
ローカルなものから徐々に大きなマスコミが
この事件を取り上げるようになってきているようです。
数日前には CNN でニュースが流れました。
その頃から彼の失踪を“バイオテロ”の動きと関連づけて
考える報道を見聞きするようになったと感じています。
日本での報道もこういうメジャーな報道機関で扱われたこと、
内容がテロと関連があるかもしれないこと、
を受けてなのだと僕は理解しています。

テロとの関連については、
“そういう可能性もあり得なくはないが・・・、
 しかし別段証拠もないし、
 彼自身が何かテロの役に立つことができるとは
 ほとんど考えられない”
というのがこの界隈の研究者達の反応です。
参考にと思い、彼(と私)の属する分子細胞生物学科の
長が学科内の人にメールで流したコメントを付け加えてみます。

.... His research has focused on understanding
at the atomic level the action of cell surface proteins
that mediate binding and fusion of a few key viruses,
most notably influenza,
and the means by which cells present foreign peptides
to stimulate the appropriate immune responses.
With this in mind, the speculation
of a bio-terrorist link to
Don's disappearance is far-fetched to say the least. .....


訳:彼の研究は、インフルエンザなどの
いくつかの重要なウィルスが細胞へ付着・
融合する際に細胞表面タンパク質が
どのように働いているか、また適切な免疫反応を
引き起こすために細胞が(感染の証として;訳者注)
外界由来のタンパク質断片を細胞表面に
どのように提示するかについて、
原子レベルで理解することを主眼としてきた。
このことをよく考えるならば、
バイオテロリストを彼の失踪と結びつけて考えることは、
控えめにいっても、無理があろう。

というわけで、こちらでもこの事件は
本当に不可解なものです。
事件直後からまったく信じられないことが起きた、
というようにみんなに受け止められています。
彼が突然消えたあと、研究室に残された人たち、
同僚、研究員、学生達はまったく
打ちひしがれてしまっています。
見ていてとても辛いです。私も皆と同様、
何とか彼に生きていてほしい、
無事帰ってきてほしいと願っています。

彼の業績について少し補足を加えます。
上の訳でも少し伝わるかと思いますが、
彼はウィルスがどのように人の細胞に感染するか、
また身体が異物を排除する機構である免疫系が
どのようにして自分と他者(自身の細胞と感染した異物)
を見分けているかについて、
タンパク質構造解析という手法を用いて
著名な研究をした人です。
その業績は広く認められていて、
ゆくゆくはノーベル賞も取るであろう、
と多くの人が噂する程です。
日本国際賞というのがどういうものなのか、
実は寡聞にして知らなかったのですが、
彼を受賞者に選ぶところを見ると、
その選考はどうしてなかなか大したものではないか、
という気がしてきます。


私の英語能力はまだまださほどではありませんので、
近くにいても聞き漏らしていることはあるかもしれません。
しかしここに挙げたことは全て実際に見聞きして
理解できた事柄です。
何か他にお尋ねになりたいことがあり、
私で力になれそうなことであれば、
どうぞ遠慮なくおっしゃって下さい。
それでは、乱文で失礼しました。


_________________________

もう一つ紹介しておこう。
この方はカナダ在住の日本人研究者だ

_________________________

「あれくさ こればい!」を毎日楽しみに拝読しています。
第652回で紹介されたWeily博士の失踪について、
メールをさしあげました。
私は、現在カナダで分子生物学の研究に従事しています。
先週、博士と面識がある、
所属する研究室の教授から失踪のニュースを聞きました。
そのときもバイオテロ云々の話は出ましたが、
それは見当はずれだろうと話していたところです。
博士の研究分野は構造生物学とよばれる、
生体内のタンパク質の立体構造を解析するものです。
これまで、免疫を司る重要な分子である
主要組織適合分子群の構造や、
細胞表面でウイルスと結合する
受容体の構造を明らかにしています。
研究対象にウイルスが含まれているのはたしかですが、
これらの仕事が直接生物兵器の開発に
利用できるものではないと思われます。
私達の教授は、博士が失踪したメンフィスの病院で
講演した経験があり、
その話によればダウンタウンから空港にかけて、
治安のあまりよくないところが続いているそうで、
こうした失踪騒ぎはそれほど珍しくないようです。
博士の科学的な実力をねらった誘拐なら
身の安全は保証されるでしょうが、
単なる物盗りの犯行だとかえって安否が気づかわれます。
私自身の専攻が異なっているので、
あまり上手な説明ができませんが、
多少なりとも御参考になれば幸いです。
ますますの御健筆をおいのりしております。


_________________________

もう一つ、この方はあのテロ事件の前の日
にハーバード大学に行かれた方です。
これも参考までに紹介しておきます。

_________________________

いつも「あのくさ、こればい!」を面白く拝見しています。
私は9月10日、つまりあのテロの前日に、
留学のためにボストンへ参りました。
そしてHarvard Universityの付属機関で
研究活動を始めたばかりの者です。

鳥越さんが書いておられたDon Wiley教授について、
地元の反応を少しだけ報告します。
でも、何せこちらに来たばかりですし、
私自身はWiley教授について何も知らなかったので、
大した報告は出来ないのは御容赦下さい。

こちらの地元新聞で、約1週間前ほどに
「Harvardの教授、謎の失踪」のような
小さな記事が載ったのが私が読んだ最初の報道でした。
ただ、内容は、今回の朝日新聞の記事とほぼ同じで、
失踪の状況だけを述べ、
警察が捜査を始めたというものでした。
そして、29日付けのHarvard University Gazzete
という学内新聞でも、同様の報道に
Harvardが有益な情報に対して
10000ドルの懸賞金をかけたということが
付け加えられていたくらいです。

http://www.hno.harvard.edu/gazette/2001/11.29/02-wiley.html

どちらの記事も、バイオテロリズムとの
関連については述べられていません。

このWiley教授ですが、私の勤務する研究施設にも
実験室を持っていたということで、
うちのラボの古参のおばさまに
「日本でも失踪が報道されてるんだけど、
 どういう人か知ってる?」
とお聞きしましたら、
「個人的には知らないけれど、
 ウイルスをコートする蛋白の研究で有名だから、
 日本でも報道されるのはさもありなん」
という反応でした。
彼の紹介はHarvardのWWWの中にありましたが、
実際確かな経歴を持った人のようですね。

http://www.hhmi.org/research/investigators/wiley.html

ちなみに、Japan Prizeについても、
私も知りませんでしたが、ちゃんと彼の実績として
Biographyに載ってました。

ただし、現地の報道の扱いも比較的小さいので、
そのことを尋ねてみましたら、
「とにかく、記事として書くべき情報を、
  誰も、何も持っていないので、
  状況しか記事にしようがないんでしょう」
という話でした。
バイオテロとの関連についても、
あくまでも誰かの推測でしかなく、
それを示唆する情報も、否定する情報も
ないようだとのことです。
つまり、現地の情報も掴み所がないのは
日本と同様ということですね。

情報とも言えない情報ですが、
現地の話として御参考になればと思い、
僭越ながらメールさせていただきました。

アメリカはテレビにしても新聞にしても、
余りにも情報が多すぎるため
(そして偏っていることも多々あり・・・)、
情報のエッセンスを日本のニュースサイトから
得ることもしばしばです。
これからも、鳥越さんの発信を楽しみにしております。

この件に関しましても、
おそらく色々な人が情報を寄せられるでしょうから、
続報を拝見するのをお待ちしています。 


_________________________

メールの紹介が長くなりましたが、
こういう情報交換の実例だと思い敢て紹介した次第です。
今日はまだ書きたいことが山ほどあるんですが、
腹が減って死にそうなのでこの辺でいったん閉じます。
   
少し時間に余裕ができましたので追加の原稿を送ります。
朝日新聞の37面、第3社会面という、
どちらかと言うとあまり目立たないページに
それもベタ記事で、僅か12行のニュース。

「補助犬法案成立へ」

障害のある人を助ける犬を法的に位置付け、
その育成と利用を促進する「身体障害者補助犬法案」が
今国会で成立する見通しになったと言う。
現在、日本で障害者の補助犬として
法的な裏づけを持っているのは盲導犬だけだ。
盲導犬はある程度の歴史を持っているので
公共の乗り物にも乗ることができるが、
最近ようやくその存在が認められるようになった介助犬は
電車の路線ごとに何度もテストをしなければ
乗車の許可が出ないなどの不便さがある。
番組でも取り上げたが、介助犬は日本ではまだ少ない。
法的に認められていないために育成の施設も十分でない。
今回は国会で超党派で法案を提出・審議の見通しになった。
日本では障害者のこういう法律は
アメリカなどに比べ遅れているようだ。
去年同志社大学に入学した女子学生が
介助犬と共に歩き始めた話を去年、テレビで伝えた。
国会のこうした気運を作るのに
一役買うことが出来たのなら嬉しいことだ。

昨日(11月30日)の
毎日新聞夕刊の社会面に載っていたこの記事。
なんだか訳がわからんばってん、
面白いなあと思って読んでしまった。

「地方競馬の星 落ちちゃった  
 中央競馬試験に挑戦の安藤騎手」


記事に書き出しはこんな具合だ。
「中央競馬の騎手免許試験を受験していた
 安藤勝己騎手(41)=笠松競馬所属=について、
 日本中央競馬会(JRA)は30日、
 『不合格』と発表した」

私は最近は競馬はやらなくなったので
知らなかったのですが、安藤騎手は
「アンカツ」の愛称で知られる地方競馬の名騎手。
いわば公営のスターなんだろう。
公営競馬では通算3219勝もしているんだそうだ。
中央競馬と公営競馬では免許が違うので
中央のレースには原則として騎乗できないんだそうだ。
ばってん、中央との交流が1日だけ認められており、
臨時の騎手としてその日だけは
中央競馬所属の馬にも乗れる。
安藤騎手はこの制度を利用して
中央競馬のレースに何度も騎乗、
中央での通算勝利はなんと146勝だという。
今年も3重賞を含む42勝と、大活躍なんだと言う。
ああそれなのに、それなのに、
30日の第1次試験(筆記、口頭)で
落ちてしまったんだと。
競馬の騎手にも筆記試験に通らないとダメなようだ。
いくら騎乗の名手でも
それなりの基準を突破しないとダメ、ということらしい。
それとも、公営の騎手でそんなに活躍していると
中央側からは反対に
嫉妬に似たような反発があるんだろうか。
やっぱり競馬は勝ってなんぼだと思うんだけどなあ。
競馬好きの記者が書いた記事なんだろうな
と思いながら読んでいました。

では今日はここで本当にお休みなさい。
また明日・・・・
あ、考えてみたらもうすぐ、
このページ書き始めてから満2年だ!!!
よく続いたぞ!

2001-12-02-SUN

TORIGOOE
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