TORIGOE
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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第644回

ほぼ日編集部様

11月21日のニュースからから

イチローがアメリカン・リーグのMVPを取った。
2位とは8ポイントしか開いていない
僅差の投票結果だったらしい。
28人のメジャーリーグ担当記者の投票で
11人がイチローに1位の票を入れたらしい。
票が割れたんですね。
それでも堂々たるメジャーリーグのMVPですよ。
よーく考えてみるとこれって大変なことですよね。

国際的な場面での賞といえば、
まあ、取りあえずノーベル賞でしょうが、
ノーベル化学賞と言われて
正直な所あまりピンと来ませんよね。
どのくらい偉いのか、大変な大事なのか、判断しかねます。
昔日本の首相がノーベル平和賞を取った時などは、
なーにが平和賞だ、けっ!と思いましたが、
それくらいは分かります。
ばってん、、一般にノーベル賞と言われても
ははーん、何かえらか賞ばい、これは・・・・程度で
そう感心することもなかつですが、
今回のMVPは数字で一部始終がこの半年見えてきただけに、
正直心から感心しますね。
良くやった!!!イチロー!!!
心からおめでとうの言葉を送りたいと思う。

さて今日のニュースだけど、
新聞のつくりに従って見て行くと
またいつもと同じパターンになってしまう。
何か小泉でもない、タリバンでもない、真紀子でもない、と
ここまで書いて、おう、そうかタリバンて、
小泉・真紀子と並べて書かれるんだなあ、
ニュースの世界では・・・・・・と
バカなことに感心しつつ、誰もが注目していなそうな、
それでいて大事なニュースはないかしら・・・・・と
新聞を隅から見ていった。
一つ見つけた。

朝日新聞の35面、東京都心版というページの最下段に
ベタ記事でこんな見出しが・・・・

「中国産野菜シェア急増 セーフガード期限切れ」

この書き出しがいいねえ。
泣かせるぜ!
「なべ物の恋しい季節を前に、生シイタケやネギの
 中国産の シェアが再び増えている」
この「なべ物の恋しい季節を前に」というクサイ形容が
なんとも言えず懐かしい。
私達も若い記者のころこんな恥ずかしくなるような
前振りをつけて地味な記事に何とか味をつけようと
苦心していた時期があったなあ・・・
と。

この記事は中国産の野菜が
安い値段で日本に入ってくるので、
日本の農家が悲鳴を上げた結果、
「セーフガード」という名の輸入制限をしたんですが、
それも期限が切れ、またもや中国産野菜が
日本の市場で急増していることを書いたものだ。
そういう事実を淡々と書けばいいんだが、
この記事を書いた記者かデスクか、
誰の手になるのかは知りません。
ばってん、こういう無味乾燥な記事にも
何か引き付ける味を付けたいという思いでしょうね、
ああ、やっちゃった、「なべ物の恋しい季節を前に」という
この浮き上がった文章。
でもなんだか微笑ましいというのか、
その努力は買いたいですね。
というのが最初に記事を読んだ時の感想だ。
この一文の後には本当に無味乾燥な
統計の数字が並んでいる。
その中身を紹介しておこう。

記事によれば、中国産の生シイタケが
東京の中央卸売市場に入荷する量は
セーフガードが暫定発動されている期間は
全体の1%台にまで減っていたが、
8日にその効力が切れた後は先週、
シェアが52%まで復活したという。
これはなんとセーフガードを発動する前より
多くなっているんだという。
関係者は「何のための暫定発動だったのか」と
嘆いているそうだが、恐らく中国の産地では
止められていた反動で逆に多くなっているんだろう。
ネギもセーフガードの間は1%だったのが、
期限切れ後は平均で6%にまで戻っているんだそうだ。

この問題は実は日本と中国の間の悩ましい問題なんですね。
もともと生シイタケやネギを
中国で生産するようなシステムを作り、
日本に輸入するようにしたのは日本人でしょう。
人件費が中国の方が安いんで中国産の安い野菜が
日本のディスカウントショップで
大量に売られてきたんでしょう。
これは何も野菜だけの話ではなく、
例えば「ユニクロ」がなぜあんな低価格のフリースを
日本で売ることができ成功したかといえば、
中国のことを語らずしては理解はできないでしょう。
衣料品の製造と販売には政治家や行政は
何の関わりも持ちませんが、
つまりどれだけ安い物を売っても、それはそういう商法を
編み出したもんが勝ちということですが、
農業ということになれば、これは生産者保護ということで
政治も行政も口を出すわけですね。
確かに日本の豊かになった暮らしのレベルでは
中国とコストの競争をしたら、
そりゃあもう勝負にはなりまっせんばい。
人件費が全然違いますもんね。
政府・自民党にとっては票も絡んでくるんでしょうね。
それが「セーフガード」という戦術でした。

しかし、これは日本と中国の間の
貿易紛争になってしまいました。
その結果、暫定発動という期間限定に
せざるを得なかったわけでしょう。
その意味では関係者が嘆くように
何のことか分からない結果になっています。
かつてアメリカと日本の間で起きたことが
今日本と中国間で起きているんですね。
生活のレベルが違えば製品のコストは当然違ってくる。
自由な貿易というルールを守れば、
高いコストで商品を生産している方の負けです。
これはもうどうしようもないことなんですね。
記事は小さいが背景にある問題は大きい。
そういう視点でこの
「なべ物の恋しい季節」
という記事も読んでみて下さい。
今日はここで。
また明日・・・・・・

2001-11-22-THU

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