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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第593回

ほぼ日編集部樣

9月29日のニュースから

私は今回のテロ事件で日本政府が取ろうとした
1.イージス艦などの自衛艦を米軍空母の護衛として
 インド洋に派遣しようとしたこと
2.21日、米海軍の空母キティーホークが
 横須賀基地を出港時、空母がインド洋へ行くと思い込み
 海上自衛隊の護衛艦などでにぎにぎしく、
 「仰々しく」(毎日新聞26面)見送ったこと。
この2点について拘っています。
どういういきさつでこういうことが
アッサリと起こってしまうのか。
キッチリ検証したいと思っています。
これまでの憲法論議のコンセンサスからすると
明らかに枠を踏み外しています。
恐らく米国のテロ事件があまりにショッキングだったため、
何でもアリの状態になっているんだと思いますが、
こういうときこそちゃんと見極めることが大事
なんではないでしょうか。
順を追って今わかるだけのことをここで紹介しておきます。
と、言うのは今日の新聞には
その辺のことがちらちらと出ているからです。
ただ、こういうのは誰かが注意深く情報を整理しないと
なかなか見えません。
断片的な情報があちらこちらに散らばっているからです。

まず、インド洋への艦隊派遣の問題。
朝日新聞の2面にこういう記事が出ている。

「同時テロ 危機と日本 第1部3  
 『外相に電話つなぐな』 
 看板大臣、カヤの外  官邸と防衛庁長官も溝」


この記事は今回のテロ事件発生後、
日本政府が危機管理としてどう対応しようとしたのかを
検証する試みだ。
前半では田中真紀子外相がテロ事件発生から
4時間半たった時点で、
外務省北玄関で記者団に
「最新の情報です。先程ワシントンの柳井駐米大使から、
 直接、連絡がありました。
 大使がグロスマン米国務次官から直接得た情報です」
と前置きして、米国務省の避難先の場所を
具体的に言及したことが取り上げられている。
テロの第2波も予想された時点では、
「絶対に口外してはならない」外交常識だそうだ。
ところが真紀子さんは
「私だってこんなに直接に情報が入るのよ」と
言いたかったのかどうかは知らないが、
まあ、言っちゃいけないことを口走った訳ですたいね。
それで、外務省の地下1階オペレーションルームにいた
野上義二・事務次官は愕然として部下にこう伝えたそうだ。
「今後、大臣に大使からの電話を直接つなぐのは
 待った方がいい」
このエピソードは今小泉内閣の中で
田中外相が完全に浮き上がっているだけでなく、
外務省官僚とも相変わらず
信頼関係を作れていないことを物語っている。
さて、後半は中谷防衛庁長官が首相官邸との間に微妙ながら
確実に溝を作ってしまった舞台裏を説明している。
中谷さんと真紀子さんは仲がいいと言われており、
この記事をみると、田中・中谷コンビがともに
小泉さんの信頼、というか、
首相官邸の信頼感を失っていることが分かる。
朝日新聞のこの記事の後半にこういうくだりが出て来る。

「『そこまで固まっているのか』
 17日、情報収集のため自衛艦を派遣するという構想を
 初めて耳にした中谷長官は驚きを隠さなかった。
 小泉首相が艦船派遣を含む7項目の対テロ対応措置を
 発表する2日前。
 官邸を中心にメニューがそろえられていた」

これを見ると、例のインド洋まで日本のイージス艦などを
「情報収集」の名目で派遣する構想が、
肝心の防衛庁長官を抜きにして進められたという
実に驚くべきことが述べられているのだけど、
その意味やさらに踏み込んで
じゃあ、そんな軍事の問題を誰が考えたのか、などという
疑問については触れられていない。
首相官邸だけで
そんな重大なことを決める能力はないだろうから、
外部の専門家がいずれにしろ関与しているのは
間違いないだろう。
この時点では、私は
誰だろうなあ?軍事専門家が
小泉さんに入れ知恵したのかなあ、と思っていました。
ところが、朝日新聞をさらにめくっていくうちに
こういう記事に出会いました。
それで、私の疑問もははーん、なるほどと
少し解消しましたので、皆さんにも紹介しておきますばい。

朝日4面に「発言録 28日」という
ベタ記事のコーナーがある。
政治家の発言をそのまま載せている。
私たちニュースウオッチャーには便利なコーナーだ。
問題の発言はこの人のものです。

「自民党 野中広務元幹事長」
「京都市での講演で」
「法律が出来ていないのに出発させる、
 空母の護衛のために硫黄島に4隻の軍艦をあてる。
 法制化も出来ていないのにそんなことを
 本当にやっていいのか。
 このテロに対して『行け、行け』と引っ張っているのは
 外務省だ。
 イージス艦が何の根拠もなく出かけるのは許しがたい。
 突っ走る外務省の姿に怖さを覚える。
 それに便乗しているのが防衛庁制服組。
 何とかブレーキをかけようとするのが内局だ」

この野中さんの発言は
彼がそれなりに情報を集めて喋っているんだろうね。
すると、今回、突出して
何とか米国にいいところを見せようとしているのは
外務省で、これに防衛庁の制服組が
チャンスとばかりに張り切っている、
そういう構図が見えてきますばい。
その根底には
「湾岸戦争症候群(シンドローム)」と呼ばれる
日本の外務省を中心に一部政治家などにも存在する
ある種の「後ろめたさ」があるようだ。
つまり、10年前の湾岸戦争のとき
日本は軍隊を動かさないかわりに
1兆3千億円の資金を拠出したのに、
国際的には全然評価されなかった。そこから来ています。
今度はああいうふうにはなりたくない。
その一念で、小泉さんは米国に行って
張り切って英語で喋っていたし、
この自衛艦派遣も出て来たんでしょう。
私の意見では日本は1兆円を越えるカネを出して
軍事行動に参加しなかったことを
卑下する必要は全くないと思うんです。
威張ることはないけど、
国の憲法にしたがって行動したことで
堂々としていればいいと思うんですね。

さて、2番目の空母キティーホークの見送り問題。
朝日の検証記事はそのあたりについてはこう書いている。

「28日朝。首相官邸での閣議後、
 中谷長官は福田官房長官を執務室まで追いかけ、
 こう言った。
 『防衛庁は2日前に官邸に報告していました』
 福田長官が前日の記者会見で、
 21日の米空母キティーホークの出港時に
 海上自衛艦が付き添った行動に
 『私の耳には入っていなかった』と
 不快感を示したことへの反論だった」

こちらは中谷長官が先に知っていて、
官邸側が知らなかったと言う構図だ。
インド洋行きが官邸主導で決まったあと、
防衛庁の制服組のリードで
21日、キティホークが横須賀を出ていくとき、
さあ、出番だぞと張り切ったんでしょう。
その事前報告があったか、なかったかで、
2人の長官がさや当てしているのは
どうってことはないんですが、
問題は野中自民党元幹事長が指摘するように、
外務省と防衛庁の現場が組んで(事実関係は分からないが)
国会や国民の知らない間に
一種の軍事行動を先走ってやっていたことでしょう。
それについては、毎日新聞の社会面に
こんな記事が出ている。
「『インド洋行き』思い過ごし? 
 キティもう帰還 あす横須賀に」

この記事を読むと何だか情けなくなりますよ。
米国のアーミテージ国務次官に
日本の柳井大使が
「ショー・ザ・フラッグ」(show the flag)・・・
「日の丸を見せろ」
と言われて始まった今回のドタバタ劇も
ここに極まれり、と言う感じですばい。
キティちゃんはインド洋なんか行かずに
硫黄島で夜間発着訓練をやって
平然とまた横須賀に戻ってくるんだそうです。
今日30日にですよ。
21日に出港して30日に戻る。
いくら軍事訓練と言っても
そんな簡単なことも分からなかったのか。
唖然というか、バカバカしい話だ。
こちらも湾岸戦争シンドロームに振り回されているようだ。

先程イチロー選手がついに安打数233本に到達。
「シューレス・ジョー・ジャクソン」が1911年に作った
新人の最高安打数記録に並んだ。
後8試合残っているので、新記録は間違いないだろう。
日本のプロ野球では長嶋、星野、仰木監督らが辞任した。
イチローの活躍を見ていると、
これで20世紀のプロ野球は終ったなあ
という感を深くする。
21世紀は
イチローのメジャーリーグでの大記録で始まったのだ。

今日はここまで
また明日・・・・・

2001-09-30-SUN

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