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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第590回

ほぼ日編集部樣
9月26日のニュースから

あのテロ事件を契機に
とんでもないことが日本でも起きてますね。
海上自衛艦をアメリ軍空母の護衛として
インド洋まで派遣しようという防衛庁の方針も
これまでの日本の憲法との整合性からすると
一挙に何段か飛び越してしまう議論だが、
次のような話も実は大変なことなのだ。
朝日新聞の4面に3段見出しで

「官邸警備『自衛隊なぜダメ』
 町村自民党幹事長代理  歴代首相らを批判」

 
という記事が載っている。
あのニューヨークの同時多発テロ事件以後、
自民党の中で日本のいくつかの重要な施設の警備に
自衛隊をあてられるように
自衛隊法を改定しようという動きが
急速に盛り上がっている。
この記事はその自衛隊法改定に関する
ひとつのエピソードですが、
これは私にはちょっと見過ごせんですばい。
実は21日、小泉首相は米国行きの前に
歴代首相・自民党総裁ら4人にテロ対策について
意見を聞いた。
その時、米軍基地、自衛隊、皇居、首相官邸、
原子力発電所などの重要施設の警備を
自衛隊が出来るようにする
自衛隊法の改定問題が話題になったそうだ。
意見を聞かれた首相・総裁経験者のうち
中曽根さんを除き、宮沢、河野、橋本さんらは
「宮中も自衛隊が警備するのか」(橋本さん)
と慎重な意見を述べたという。
つまり、皇居を自衛隊が警備するのか?!
という橋本さんなりの驚きの言葉でしょうか。
中曽根さんは自衛隊でやるべきだと言ったんでしょうね。
この話を受けて25日、
自民党の町村信孝・幹事長代理が
東京都内の講演で慎重派の元首相らを
痛烈に批判したという。
「この方々は本当に安全のことを考えておられるのか。
 極めてエモーショナル(感情的)な議論だ」
朝日の記事によると、町村氏はさらに
「なぜ総理経験者が首相官邸の警備に
 自衛隊を配備することに反対なのか。
 率直に言ってよくわからない。不満だ」
「(今後の)調整事項なので、
 新しい自衛隊の任務として
 付加していくことも考えるべきだ」
と自衛隊法改定
(因に朝日新聞は記事の中で
 何度も『改正』と書いているが、
 私はここは断じて改正ではないので
 『改定』にこだわります)
に意欲をみせたそうだ。
私にはこの町村さんの方が
よほどエモーショナルに思えますけど・・・・

さて、自衛隊は一応建前は
軍隊ではないという言い方もあるようですが、
これは立派な軍隊であることは
誰もが知っていることでしょう。
さて、軍隊というのは
どちらを向いて立っているかというと、
基本的には外敵の侵入、武力攻撃に対処するためにある。
つまり外に向けて銃を向けているんですね。
国内の安全確保はあくまで警察の仕事です。
自衛隊の治安出動という考え方はありますが、
それはこれまで1960年安保闘争
(と私らのような世代はいいますが)のときに
自民党内部で密かに考慮されただけで、
そういう事態はありませんでした。
世界の中でも軍隊が
国内の警備を担当している国というのは
一部の独裁政権国家など政権が
国民を信用していない国に限ります。
先進国は軍隊が自分の施設を
自ら守るというのはありでしょうが、
シビリアンの施設まで
軍に警備させているというのは
基本的にはないと思います。
私も専門家ではないので
100%そうだと言いきる自信はないのですが、
民主主義国家を標榜している国は
国防と国内の治安確保は分けているものだと
思っています。
それなのにニューヨークのテロ事件で驚いた
一部の政治家達がそうした
原理原則まで一気にかなぐり捨て
軍隊で皇居とか首相官邸を警備させようというんですね。
そんなことになれば日本は
いっぺんに軍事国家みたいになってしまいます。
呆れましたねえ。
彼らは、もちろんこれはニューヨークの事件のように、
非常事態のテロ活動に対処するんだと
言い張るんでしょうが、
日本の近代の歴史はこうして最初は
別の口実で軍隊が手足を伸ばし、
気がつくと国の全身が軍隊の
コントロール下にあるという教訓でいっぱいです。
だから近代国家はシビリアンコントロールという
軍隊とのつきあい方を学んできたわけです。
それだけ重要な問題にもかかわらず、
衝撃的な出来事があったという、
ただそれだけでこの町村さんのように
急変するというのは困ったモンですね。
で、朝日新聞をめくっていったら、
社会面にあの後藤田正晴さんが
ズバッとこの問題を衝いた発言をしていた。
見出しは

「元副総理・法相 後藤田正晴氏
 『自衛隊を安易に使うな』」

 
後藤田さんは
今回のテロは許されないことだとしながらも、
「日本は場当たりや無原則になってはならない。
 冷静さが必要だ」
と言う。
さらに自衛隊法の改定問題に関してこういう。
「独立国家には、
 外からの侵略に抵抗することが
 自然権として認められている。
 それを背景に自衛隊が設置され、
 専守防衛の武力行使が認められた。
 その基本に立ち返れば、
 できることに限界があるのは当然のこと。
 米軍施設ばかりか、
 国会など重要施設を自衛隊が
 警備するという話も出て来た。
 治安は基本的に警察の仕事。
 両者はまるっきり役割が違う。
 警察の手に負えなくなったとき、
 初めて治安出動で自衛隊の力を借りればいい。
 そうでない限り、国民に直接、
 銃口を向ける立場に自衛隊員を立たせてはならない」
こう言ったあと
「自衛隊や軍隊に対する考え方は、
 最近、おかしくはないか」
と昨今の風潮に鋭い一言を突きつけている。

後藤田さんは元警察庁長官も務め、
中曽根内閣では官房長官だったが、
戦時中に自らが
旧内務省の官僚だったという反省を込めて
こうした戦争や軍事に関しては
最近の民主党の若手などより
よっぽど冷静な判断をする人だ。
この議論はどうなるのか、見守ろうか・・・・

というところで今日はグッドナイト
また明日・・・・・

2001-09-27-THU

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