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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第578回

ほぼ日編集部樣

9月14日のニュースから

今日は多くの読者からメールを頂きました。
一つの共通意見はこの1両日アメリカ政府が、
ブッシュ大統領が、そしてアメリカのメディアが連発する
「報復」「戦争」「宣戦布告」「勝利」
という言葉から想像される事態ヘの不安感です。

テロリストを割り出して
彼らを圧倒的な軍事力で殲滅しても、
それで果たして総ては解決するのか、という疑問を
多くの皆さんが抱いておられます。
私も同様の疑問を持ちます。

私の「直感」をもう一回使わせて下さい。
もしアメリカ軍が軍事力を行使したとすると、
それは第二のベトナムになるだろうということです。
アメリカはベトナム戦争では最初もっと簡単に
ベトナム農民と北ベトナム軍の混成部隊など
近代兵器でもってすれば一蹴できると思っていたはずです。
ところが、ベトナム戦争の現実は
もっとアメリカには厳しかったんです。
近代的装備で世界一の軍事力を持っているはずの
アメリカ軍はベトナムのジャングルという
泥沼に足を取られて身動きできない状態になりました。
ベトナムでは緑のジャングルでしたが、今度は
イスラムというジャングルに足を取られかねないんですね。

もちろんのことですが、イスラム教を信仰に持つ人の
ほとんどは私たちと同じ人間です。
優しい人もいれば変な人もいるでしょう。
何処の国とも変りはありません。
しかし、イスラム教は極めて生活に密接した宗教です。
だから、指導者や社会の空気によっては
殉教という価値観を持って走り出す可能性を持っています。
同じエルサレムで生まれた宗教でありながら、
キリスト教とイスラム教、それにユダヤ教は
全く異なる価値観を持っています。
イスラムの世界ではたとえ今はオサマ・ビン・ラディン氏が
孤立したように見えていても西欧文明に叩かれた場合
彼はヒーローになってしまう可能性さえあります。

それに国際イスラム戦線という連合体を作っている
世界的なイスラム原理主義のネットワークが
黙っていないでしょう。
ラディンという芽を摘んだつもりでもまた新しい
第二のラディンの芽がふいてくるに違いありません。
そうなるともう泥沼ですよね。

私がかねがねここで
21世紀のキーワードはイスラムだと言い続けていますが、
今日はもう少し違った観点から説明したいと思います。

20世紀は社会主義の実験の世紀でした。
社会主義はソ連などの実態は別としても
理想としては平等な社会を目指し、世界の中で富めるもの、
または権力を持つものに抑圧された
「被抑圧者」の代弁者として存在の意味があったわけです。
第2時大戦後アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどで
かつての、被植民地から脱して独立を獲得していく過程では
不十分ではあってもソ連など社会主義国は
一定の役割を果たしました。

しかし、1989年のマルタで開かれた米ソ首脳会談で
「冷戦の終焉」が謳われ、91年にはソ連が崩壊して、
事実上世界の冷戦構造は終わりを告げました。
まだ中国やベトナムなど一部社会主義の旗を掲げる国は
残っていますが、彼らはもはや自国のことは考えても
貧しい国や抑圧されしもののために
身体を張って行動するということはなくなりました。
それが、この10年間、アメリカ一人勝ちの世界なのです。

かつてはアメリカが何かをしようとしても
必ずソ連がいちゃもんをつけ、
国際社会はアメリカの言いなりにはならなかったんですね。
21世紀になって見えてきたのは、
これまでソ連が果たしていた役割を
イスラムの世界が引き受けるという構図です。

イスラム教という宗教を国教とする国が、またはグループが
世界の被抑圧者の側で発言し、行動するということですね。
今起きていることはそうしたアメリカ的な文明ヘの
激しい拒絶現象なのではないでしょうか。

その意味で日本は何をすべきなのか?
考える必要があります。
アメリカと一緒になってイスラム社会を敵に回すことは
避けるべきでしょう。
イスラムとの共存を私たちは選択すべきなんです。
そのためには「被抑圧」のモデルとなっている
パレスティナ問題の解決を一日も早く達成すべきでしょう。
そのためにイスラムでもない、キリスト教国でもない、
日本が政治的な解決の労を取るべきなんですが、
日本の政治家にそれだけの大きな世界観や哲学を持った人は
これまでのところ見当たりませんね。

さて、明日(日曜日)で、「スクープ21」は終ります。
16日は最終回です。
もちろんこのニューヨークの事件を取り上げます。
そして、10月6日から
関東地区と石川県(北陸朝日放送)、
香川県と岡山県(瀬戸内海放送)の地域で
「ザ・スクープ」の放送を始めます。
土曜日朝10時50分〜11時45分。
この番組を開始したときの原点に返ってやります。
全国の皆さんには来年4月まで
待っていただくことになりますが、10月からは番組を
インターネットの動画配信で全国に流しますので、
ほぼ日の読者の皆さんは
是非「ザ・スクープ」のホームページでご覧下さい。
日本で初めての本格的な番組配信となるはずです。
宜しくお願いします。

ではまた明日・・・・・

2001-09-15-SAT

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