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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第577回

ほぼ日編集部樣

9月13日のニュースから

あのニューヨークの事件が起きたとき、
追加で送った原稿について
いくつかそれはちょっと違うんじゃないの、
というメールを頂きました。
普通は言い訳はしないんですが、
急いで書いたため
一部に舌足らずなところがあったと思いますので、
少し注釈を入れておきます。

鋭敏なる読者の批判を呼んだのは
私があの事件の一報を聞いて、
イスラム過激派の犯行だと直感的に思った、
というくだりです。
確かにまだ何も証拠もない時点での決めつけ方は
おかしいかもしれません。
ただ、私たちの職業には
「職人的な」直感というのがついて回ります。
私はそれを大事にしたいと思っています。
ここで言う直感というのは
単なる「山勘」のことではありません。
36年間、報道現場の仕事に携わってきた中で
少しづつ形作られたものです。

イスラムについては単に
人の話とか本で読んだだけで言ってるんではないんです。
イスラム原理主義の本場たる
イランの首都、テヘランの特派員として
様々な経験をしてきたうえで発言しているんだ
ということをどうぞ分かって下さい。
イランのほかにパレスティナもレバノンも、
そしてこれはイスラムじゃないけれど、
イスラエルも取材で危険なところを走り回りました。
イランでは女性が外出するときは、
つまり公衆の面前ではということですが、
頭の髪の毛はスカーフ状のもの
(ペルシャ語ではヘジャブと言いますが・・・)を被って、
また身体の線を(つまり曲線ですね)被うために
マントのようなもの
(頭からすっぽり被るものをチャドルと言います)を
必ず着ていなければなりません。
これはイスラムの戒律でそうなっているんです。
違反していると逮捕されます。

で、私はテヘランにいた1年半の間に
5回も革命防衛隊に逮捕されました。
なぜかって?・・・・
それは当時私は異国で床屋に行くのがいやで
自分で髪を切っていたんですが、
それには長髪がいいんで、髪を長く伸ばしていたんですね。
それでタクシーの後ろから見た革命防衛隊員に
女性と見誤られ、
自動小銃を突きつけられたこともあります。
と言うように、私は私なりに身をもって
イスラム体験しているんです。

これはイラン・イラク戦争の前線に戦場取材に行ったとき、
イラン軍の幹部に実際聞いた話ですが、
イランにはバシージと呼ばれる
志願義勇兵の制度があります。
正規の軍ではないんですが、
正規軍とともに戦場に向かいます。
その幹部が言うには、
明朝早くに
敵の(イラク軍の)陣地へ向け突撃をすると決めると、
何処からその話が漏れ、
正規軍より早く13,4歳の子供たちで構成される
バシージの群れが敵陣の前方に敷設されてある
地雷原を一斉に走るんだそうです。
子供たちは裸足で地雷原突っ走り
地雷をドカン、ドカンと爆発させていきます。
子供たちがそうやって地雷を爆発させた後を
正規軍の歩兵部隊と戦車が敵陣へ向かうんだそうです。
子供たちは地雷除去機みたいなもんですね。
この子供たちの首からは、
それをかけていれば必ず天国へ行けるという
メダルがかかっているそうです。
彼らはそれをイスラム教徒として
最高の人生、殉教者になるというふうに教え込まれ、
また彼らはそう信じているんだそうです。

この話を聞いたとき、
もちろん日本の特攻隊のことも思いだしましたが、
やはりそこにあるのは
イスラム教という信仰の中での命についての考え方ですね。
私たちからすると、
生と死の考えが基本的に違ってるんだなあ、
と改めて感じたのでした。
今回のテロを遂行した連中も
単なるならず者ではないわけです。
「ならず者国家」とアメリカ政府は言いますが、
本当に彼らが単なるならず者ならことは簡単なんです。
彼らは主観的には殉教者を目指しているんです。
だから異なる価値観の国からすれば厄介なんです。
そういう私なりの経験を通じて、
今回の事件を聞いたとき、
ああ、これはイスラム過激派と呼ばれている集団が
やったんだなあ、と直感的に思ったんです。
少しお分かり頂けたでしょうか?

今日はここで・・・
また明日・・・・

2001-09-14-FRI

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