TORIGOE
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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第560回

ほぼ日編集部樣

8月21日のニュースから

台風が近づいている。
窓の外が白くなってきた。
細かい、しつこい感じの雨が降りしきって
いるからだろう。
久しぶり濡れている東京もいいもんだ。
それに先程友人が電話で言ってたけど
利根川など上流でしっかり降ってほしいよね、
という気持ちも分かる。
仕事から今日は解放されて
先程「ほぼ日」を開こうとしたらなかなか開かない。
あれれれ・・・・
また、マックのヤツいかれっちゃったのかと
思ってたら、違うんですね。
アクセスが殺到単に重くなっていただけでした。
ビックリしたけど嬉しいねえ。
これほど渋滞を引き起すほどのアクセスがあるというのは。

さて、今日のニュースを見ていきますか・・・・・
あ、昨日の(20日の)朝日の夕刊に
こういう記事が出ていたので
これは書き留めておかねばと思い紹介しておきます。

「ホーム転落、今度は救えた
 新大久保駅 検知器作動」
「事故で設置  女性軽傷」


この見出しだけで思い出すでしょう。
今年1月、JR山手線の新大久保駅で、
酒に酔った男性がホームから線路内に転落、
助けようとした韓国人留学生と
日本人のカメラマン合わせて3人が死亡した事故。
助けようとした2人のうち1人が
韓国人ということもあって大きなニュースになりました。
私もここで取り上げたと思います。
その事故を教訓にJR東日本は
いくつかの対策を取ったというのも
当時ニュースになったりしていました。
しかし、もうこれだけの犠牲が出てから
色々やっても遅かあー、ち思うとりましたばってん、
この小さな記事を夕刊に見つけたとき、
ああ、やっぱり効果あったんだ、
やってよかったんだなあ、と改めて思いました。
記事によると、20日午前7時25分ごろ、
記事には年齢は書いてないので
いくつぐらいの人か分かりませんが、
一人の女性が電車の中で気分が悪くなり、
新大久保駅で下車、ホームで目まいがして
線路上に落ちたんだそうだ。
あそこのホームって狭いからねえ、
女性はとにかく線路上に落ちた、
当時電車は2分半間隔で発着しており、
次の電車が迫っていた。
以前ならここでもまた犠牲者が出るところだったが、
今回は避けられた。
なぜか?
それはホームの横というか前というか、
要するに線路上に
「転落検知マット」
が敷かれていたからだ。
女性が転落すると同時に検知器が反応、
作動して周辺の線路は一斉に赤信号になったんだそうだ。
同時にホームにいた乗客も非常停止ボタンを押し、
接近する電車は約50メートル手前で
緊急停止したと記事はいう。
もちろん女性は転落の際の軽傷だけですんだ。
ただこの記事でよく分からないのは、
電車が緊急停止したのは
この新設の転落検知マットのおかげなのか、そ
れとも記事の最後にちょこっと出て来る
「非常停止ボタン」のおかげなのか、
どちらが彼女を救ったのかはっきりせんことです。
記事ではどっちにもとれる書き方です。
どうも取材した記者が
ちゃんとそこら辺を詰めて聞いてないようですね。
非常停止ボタンで助かったのなら、
その前にこの記事の主役として登場の
「転落検知マット」の話は何や?
ということになる。
それなら「非常停止ボタン」君を
主役にしてあげないとかわいそうだ。
で、わき役で実はこういう事故を教訓にした
新兵器もあったんですが、
今回は主役の座を譲りました。
次には恐らく今回作動したことから分かるように
転落者の人命を救うことになるでしょうと書けばいい。
でも、記事のスタイルはあくまで転落検知器で
女性の命が救われたような印象を与える。
どっちなんだろうね?
ということで、
これは毎日はどう書いているかチェック、チェック。
探しました。
ありました。
でも毎日新聞20日夕刊社会面にはもろベタ記事。

「ホーム転落検知 マットで助かる
 JR新大久保駅」


毎日の記事には女性のことがこう書いてある。
「専門学校生の女性(18)」
ただ朝日に書いてあったような電車から降りて
ホーム上でめまいがしたからというような
「転落事情」は書いてない。
それに非常停止ボタンの話は一言も出てこない。
毎日の方は女性が助かったのは
「転落検知マット」があったからだ、と断定している。
女性が
「転落検知マットの上に落ち、
 緊急停止装置が作動し、
 山手線の電車は50メートル手前で停止した」
という。
朝日は記事の分量も多いし扱いも大きい。
取材の開始が早くて、毎日は遅かったのかもしれない。
それにしても同じように取材をしても
こんなふうに記事は違ってくる。
こういうことは新聞を読む以上は
知っていたほうがいいでしょう。
新聞もテレビも一緒ですが、
ニュースの第一報はこういうふうに情報は
かなり錯綜しているし、混乱もあるということです。
場合によっては
間違っていることもあるということですね。
だから私はニュースが
「拙速主義」で作られていることをニュースを出す方も、
受け取る側も弁えておいたほうがいいんだと思うんです。
ニュース、つまり活字になったり、
映像になったりすると、もうそれだけで
その情報が真実のように思えてしまうんですが、
現実はそういう時間との競争で
危うい橋を渡っているんだということですね。

というところで、今日は・・・・
また明日・・・・・・

2001-08-22-WED

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