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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第433回

ほぼ日編集部様

4月2日のニュースから

今日の記事検証のネタはこれです。

「ジャンパー、マフラー、帽子
 世田谷事件で新たな遺留品」

  (スポニチ 社会面3段)
「世田谷一家殺害 犯人、着替え逃走か
 現場にジャンパーなど残す」

  (毎日新聞 社会面3段)
「世田谷一家殺害 汗付いたジャンパー
 居間に残る帽子やマフラーも」

  (朝日新聞 社会面3段)
  
昨年末に起きた世田谷一家殺害事件から3ヶ月が経過した。

記事によると、現場の被害者宅にジャンパーとマフラー、
帽子が残されていたという。
ジャンパーに染みついた汗を分析したところ、
犯人と同じA型の血液型だったそうだ。
これでこの事件の遺留品はトレーナーや靴、
手袋、包丁などに加えてさらに多いことが分った。
で、私が問題にしたいのは
今回の遺留品のニュースが
どの記事でもこういう書き方をしていることだ。
先ずスポニチ・・・・
「現場の宮沢みきおさん宅にジャンパーとマフラー、
 帽子が残され、
 ジャンパーに染みついた汗を分析した結果、
 犯人と同じA型ぼ血液型だったことが
 1日までの警視庁成城署捜査本部の調べで分った」
要するに新しい遺留品の事が
1日に分ったかのように書いてあるんですね。
この文章では「1日までに」と書いてありますが、
「1日まで」とはいつのことなのか。
31日のことなのか、30日のことか、
それとも事件直後に警察はわかっていたけれど、
ただ単に隠していて
1日にそれが表に出てきただけなのか。
読者にはよく分らない記事になっている。
毎日も
「・・・・犯人が脱ぎ捨てたと見られるジャンパーが
 現場に残されていたことが1日、
 警視庁成城署捜査本部の調べで分った」
これだと、捜査本部はこれだけの
遺留品があったにも関わらず、3ヶ月もそれに気づかず、
4月1日になってようやく分ったかのようになっている。
これはどう見ても不自然ですよねえ。
じゃあ、朝日はというと・・・・
「2階居間に犯人の血液型と同じ
 A型の汗がついた黒いジャンパーが残されていたことが
 1日、警視庁の調べで分った」
あ、やっぱり毎日と同じだ。
実は、こういう書き方は新聞社ではよくあることなのです。

私はそれを知っていながら
わざと意地悪を言っているところがありますね。
私自身も現役記者時代は何遍も
こういう記事の書き方をしました
からどうしてこういうことになるのか、分ります。
事件報道は基本的には警察の情報に頼ることになります。
事件現場を記者など外部のものには絶対見せず、
独占的に捜査・鑑識活動をしますから、
現場に遺留品として何があったかなどは
警察からしか出ようがないんです。
警察組織が公式に会見で言うか、
非公式に記者が夜討ち朝駆けをして
一線の刑事から情報を入手するか、どちらかになります。
こういう構造の中で松本サリン事件のような
マスコミ大誤報が生まれるんですが、
今回の新たな遺留品というのは
警視庁捜査一課の課長の懇談あたりで出たものでしょう。
「懇談」というのは正式の会見ではありません。
「レク」(レクチャー)とも言いますが、
要するに毎日課長を囲んで禅問答をするわけですけど、
ここで出た話でしょう。
2日付で警視庁捜査一課長が替りました。
つまり今日から新しく菅原忠雄さんという56歳、
慶応大学卒の人が一課長にになったそうです。
大学を出て一度はホテルに2年間だけ勤めたという
変りダネだが、この交代にからんで
前の課長が最後にとっておきの情報を漏らしたか、
新課長がご祝儀というのも変だが、
挨拶代わりに実は現場にこんなものも
残ってましてね・・・・
等ということも考えられるんですばい。
各紙一斉に同じ情報が出るのは
そういう事情があるからでしょう。
そういうとき、新聞は警察が
これまで隠してきた情報ですけど、
1日にようやく公開されました
などと正直には書かないんですね。
いかにも今日警察が発見したことのように書くわけです。
「1日、警視庁の調べで分った」
これですね。
この文章は素直に読めば
「警視庁が調べていて、これまで分らなかったんだけど、
 1日になって調べの結果新事実が判明した」
というふうに読めるんです。
ただ新聞社側の気持ちとしては
「警視庁の調べで1日、分った」
と書いていないところがミソといえばミソなんですね。
「1日、警視庁の調べで分った」
というのは、私達新聞がわかったのは1日で、
それは警視庁の調べの結果なんです、
というまあ、一種のごまかしですかね。
そろそろ新聞の記事の書き方もその辺
正直に書くようになってもいいんじゃないだろうか。
そういう時代のような気がする。
スポニチの記事には
「生前の一家の写真などから
 家族の持ち物かどうか調べたが、確認できず、
 鑑定の結果ジャンパーのそで口に汗が染み込んでおり、
 A型の血液型と分った」
ちょっと読んだ限りでは、
確認作業に時間をとられていたので、
今日(1日)までかかってしまったが、
ようやく今日これらが犯人遺留品だと分ったんです、
みたいな記事に読めてしまうのだが、
そんなことはありません。
遺留品の見分けに
3ヶ月もかかるような捜査なんかあるわけない。
遺留品のリストは捜査が始まって1週間ぐらい、
いや数日中に分っていたはずです。
警察が隠していたのにはそれなりの理由があり、
そして昨日公表したのにはそれなりの理由があるはずです。
そういうことも正直に書くのが
これからの警察報道のあり方だと私は思うんですね。

あーあ、また座り続けで腰が痛くなった。
この辺で終わりにしようか・・・・
と自分を納得させながら
また明日・・・・・を書く私・・・・・・

2001-04-03-TUE

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