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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第408回

ほぼ日編集部様
 
3月8日のニュースから
  
毎日新聞の夕刊社会面にこういう記事が出ていた。

「副艦長 家族に謝罪
 実習船沈没軍査問会議『アイム・ソーリー』」


これは今ハワイのホノルルで開かれている
米海軍の査問会議(予備審問)でのあるエピソード。
米原潜「グリーンビル」の副艦長、
ジェラルド・ファイファー氏(38)が、
査問会議の休憩時間に行方不明の家族に対し
謝罪したというのだ。

記事によれば副艦長は
「アイム・ソーリー・フォア・ユア・ロス」と
「えひめ丸」の指導教官だった中田淳さんの両親の前に
直立不動で立ち、そう言ったそうだ。
毎日新聞の記事の日本語訳は
「行方不明になられた方のご家族に申し訳ない」
としてある。
で、記事では副艦長はこの言葉とともに頭を下げて
「謝罪した」と表現している。
また、記事の最後には中田さんの両親の言葉として
「当事者から言葉にして謝られるのはうれしい」
とも書いている。
直立不動の姿勢や頭を下げた点から、
この副艦長が謝罪の意を表そうとしていたのかもしれない。
だから、記事では「副艦長 家族に謝罪」となっていても
仕方がないのかもしれない。

ばってん、私にはどうしてもこの記事のように
すぱっと「謝罪」という訳にはできかねるものがあるのだ。
つまり、「ソーリー」という言葉の本当の意味は
謝罪とは少し違うという気がするからだ。
「ソーリー」というのは敢えて日本語に訳すると
「気の毒で」とか「遺憾だ」「かわいそう」「残念で」
という、どちらかというと
第三者的な感情のような気がする。
もっというと「ソーリー」と言う人は
直接の加害者でなくても、
「あなたがそういう目に遭われてお気の毒ですね」
という感じだ。
「I'm sorry to hear that」
こういう表現はよく使うが、
「それは大変でしたね。お気の毒に」
ぐらいの言い方だ。
あなたの窮状にこころから同情の気持ちは持っているが、
私は直接の責任はありませんよ、というところかな。
どちらかというと軽く使う言葉だ。

この場面で本当に副艦長が謝罪の気持ちを表したいのなら、
ちゃんと
「アポロジャイズ」( apologize )
という言葉を使うべきなんじゃないか。
それを使わなかったということはやっぱり
この副艦長には心からの陳謝の念というより
まあせいぜい「遺憾」の意を表するぐらいの
気持ちだったんではないだろうか。
これは英語を普段使っている方々の
意見を聞かないと分りませんが、
少なくとも行方不明の家族達が「ソーリー」で
「謝ってもらって嬉しい」と誤解をするようなことは
避けなければならないと思う。

その点、朝日新聞は

「副艦長 家族に言葉かける」


という見出しで、記事中にはどこにも
「謝罪」という表現は使っていない。
朝日の記事はこうなっている。
「査問にかけられているファイファー副艦長は、
 傍聴席にいたえひめ丸の家族に対し
 『あなたのご家族が亡くなり、残念に思う』と
 言葉をかけた」
毎日は副艦長が謝罪したと取った。
朝日は単に気の毒だと言葉をかけただけだ、と受け止めた。
どちらが事実に近いのだろうか。
私はその場にいたわけではないので、正確には分らない。
ただ、英語のニュアンスからすると、
どうも朝日の方がより事実に近いような気がする。

ということで、今日はこれで・・・
また明日・・・・・

2001-03-09-FRI

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