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第353回
ほぼ日編集部様
1月8日のニュースから
6日のニュースで取り上げたインドネシアの
味の素「豚酵素」事件の続報を紹介しておきたい。
最初は小さな記事だったが、
だんだん各紙とも大きなスペースを
割くようになってきたのが興味深い。
インドネシアで、味の素・・・・
この組み合わせで何が出てくるのか
日本人には分らなかったと思うが、
ことは私がこの欄で度々指摘したように
21世紀はやはりイスラム教と言う宗教が
大きな要素になる事実をはっきりと示唆している。
朝日は今日の朝刊の1面左肩に4段の凸版見出しで
「味の素現地社長を聴取
インドネシア『豚酵素』事件で」
と大きく取り上げている。
私が6日の時点で疑問を出していたことについて
かなり分ってきたので、朝日の記事がそれらについて
どう報道しているかを紹介しながら説明しておこう。
先ずは何が問題になっているのかということです。
記事によれば、インドネシアは人口の9割が
イスラム教徒で、
食品についてはイスラムの教えに反しないものに
「ハラル」という認証が与えられるんだそうです。
この食品は「ハラル」を取ってますよ、
という具合でしょうか。
これに似たものとしてはイスラエルでは
ユダヤ教の教えに則り食品には
「コーシャー」または「コシェル」
と呼ばれる厳しい戒律が課せられている。
私が17年ほど前にイスラエルに取材で行ったとき、
エルサレムの鉄板焼き屋さんで食事をしました。
この時出てきた焼き肉は完全に牛肉から血を抜いた
パサパサしたものでした。
うわー、不味いなあ、と思いましたが、
これが「コーシャー」なるものであるのを
後に地元にいる日本人から聞きました。
肉類から完全に血抜きをしたものでないと
ユダヤ教徒は食べてはいけないんだそうです。
イスラム教徒が豚肉を一切食べないというのも
宗教上の戒律です。
これは一般に言われている俗説かもしれませんが、
イスラム教もユダヤ教も
同じ中東の土漠地帯で生まれた宗教なわけですが、
例えばイスラム教が誕生した7世紀当時、
豚肉は食べれば
死者を多く出すようなことがあったんでしょう。
私達も最近まで
「豚肉はちゃんと焼いてからじゃないとダメよ」
なんて言われていたでしょう。
豚肉は病原菌が繁殖しやすいという
事情があったんでしょう。
この辺は私なりの素人考えなんで、
間違っていたらまた専門家の
方々に教えてもらいたいと思います。
ま、要するにイスラムの国では
今でも豚肉については一切食べないというのが
宗教上というより国の法律になっているわけです。
日本人の宗教、仏教にも戒律があったんですが、
そんなものは一部の宗教家は別として
一般には有名無実になってしまっています。
だから日本人にはイスラムや
ユダヤ教のような戒律への
厳しい考え方が存在していません。
今回のインドネシアの事件の背景にはこうした
宗教観の違いが横たわっているような気がします。
さて、事件に戻りますと、
「インドネシア味の素」社は昨年9月、
化学調味料の認証を更新する際に、
「ハラル委員会」から味の素には
豚から抽出した酵素を触媒として使っている、
との指摘を受けたという。」
味の素社はどうやら、
指摘されて初めてそういう事実を知ったらしい。
で、今年になってインドネシア社会保健省の命令で
全製品の回収を始めた矢先、
今度は製造工場担当の日本人役員ら6人が
消費者保護法違反容疑で逮捕されてしまった。
味の素の本社では
「味の素の最終製品には豚の要素は全く入っていない」
と言っている。
つまり、製品自体には豚は関係ないというわけです。
じゃあ何が問題になっているかというと、
この辺については朝日が3面で
かなり詳しく解説を載せている。
事実関係についてこういう解説をちゃんと
掲載するところは朝日らしいところですね。
「『予想外』味の素、当惑」
「原料切り換え 『より安全』が裏目」
この記事を理解するためには1面に出ている
「味の素東京本社」
の談話が重要なのでそのまま紹介しておきます。
「『最終製品には含まれていない』
味の素東京本社の話」
「発酵過程で使う菌の栄養源として
大豆分解物を使っているが、
この大豆分解物の製造過程で
豚に由来する酵素が使われていた。
大豆分解物は米国からの輸入品で気がつかなかった。
インドネシア食品医薬局も最終製品には
豚由来の物質は含まれていない、
との声明を発表している」
3面の解説によれば、味の素の主成分は
グルタミン酸ソーダだ。
この辺は私達も知っている。
じゃあそれはどうやって作るのかというと、
糖蜜やでんぷんを主原料にしてそれらを
発酵させるのだそうだ。
この発酵過程で発酵菌の栄養源、
これを「培地」と呼ぶんだそうですが、
培地として使われるのが大豆の分解物です。
さあ、ここで問題は大豆分解物を作る際に触媒作用を持つ
豚から抽出した酵素が使われていたんだそうです。
記事によれば、というより味の素東京本社によれば、
1998年9月までは、
この「培地」には牛のたんぱく質を
原料にしたものを使用していたという。
記事には書いてないが恐らく
「Oー157」問題などで「より安全に」
ということで、大豆たんぱく質に切り替えたら、
結果的にはそこに分解酵素として
豚由来のものが入ってきたんだそうだ。
そして、そうした工程上の変化について
味の素本社の人たちも
インドネシアの「ハラル委員会」に指摘されるまで
誰も知らなかったという事実だ。
これは毎日新聞の社会面にかなり詳しく出ているが、
当初、この問題を担当する保健省や宗教省などは
製品の回収で収めるつもりだったという。
それが、一転して役員ら
6人の逮捕に発展したのは何故か?
毎日は記事の最後にこういう
現地関係者の談話を載せている。
「社会の世俗化の風潮に対するイ
スラム保守派の反発が予想以上に強かったんでは」
毎日の記事によれば、地元では住民による
工場襲撃の恐れもある
そうで、警察が工場周辺の警備を強化しているという。
また消費者連盟が
「味の素はイスラムの基準を満たした食品と
偽って商品を販売し、消費者を欺いた」
と警察に訴えたし、
ジャカルタの弁護士団体が
イスラムの戒律に反したとして
告発の準備を進めているそうだ。
さらに味の素のテレビコマーシャルに出演している
人気俳優が降板を示唆するなど
騒ぎは社会的な広がりを見せているようだ。
中にはこうした騒ぎへの便乗組もいるんでしょうが、
私達がここで見るべきは21世紀、
私達日本人からすると思いもかけない、
宗教上の考え方の違いから来る誤解や
トラブルが今後も続発するだろうということです。
これまでの日本の教育の中であまりにも
イスラムについて私達は学んでこなかった、
私にはそう思えるんです。
今日はイスラムについて書いて疲れちゃった。
ではまた明日・・・・・
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