TORIGOE
3分間で、
最近のニュースを知る。

鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第329回

ほぼ日編集部様

12月10日のニュースから

今日の新聞を見ていて
明日の朝刊は休刊だということが分った。
で、思い出してしまったよ。  
去年は13日が休刊日だった。
その日、ほぼ日のために駅まで売店の
スポーツ紙を買いに行こうとして骨折したんだった。
そうか、骨折一周年だ。
まだ左足の甲の部分がうずくばい。
寒さとともに骨折記念日がやってくる。
まあ、これも生きてきたことの思い出だなあ、
と思いつつ、さあ、今日のニュースは・・・・・

「次期防、今週大詰め 空中空輸機導入など
 与党内にも火種も」

 
朝日新聞の2面に3段の見出しで載っている記事。
毎日には載っていないので
朝日の記者の独自の観測記事だろう。
こういうのはスクープとは言わないが、
タイミングを狙って書く記事だ。
記者の普段の勉強ぶりが出るので書いた本人としては、
ある程度満足だろう。
ただ、防衛問題などは一般読者には馴染みがないので、
大抵の人はこの記事は飛ばしてしまう。
その意味では割と自己満足的な
記事の部類に入るかもしれない。
で、今日は私なりにこの記事に挑戦してみよう。

まず言葉の意味を説明しないと先へ進めない。

「次期防」
これは2001年から
5年間の防衛力をどの程度にするかの
指針のことを指す言葉で、
正式には「中期防衛力整備計画」のことを
「次期防」と呼ぶ。
朝日の記事によれば、
この計画は15日の政府の安全保障会議と閣議で
最終決定となりそうだが、
その中味にチョイと問題ありで、与党内部で
もめそうだというのだ。
何事ももめ事の好きな私めとしては、
何々と首を突っ込まない手はない訳で、
その一端を皆さんにもお裾分けしたいということなんです。

そのもめそうなもの、
つまり記事の見出しで言うところの
「火種」とは何かというと、
ズバリ言えば「空中給油機」です。
これは飛行中の戦闘機などに給油管を使って
燃料を給油するもの。
そんなもんがどうして問題になるんだろう?
と思うでしょう。
朝日の記事にはこう書いてある。引用する。
「空中給油機の導入について
 『周辺国に脅威を与える』などの理由で
 公明党を中心に慎重論がくすぶっている。
 空中給油機は防衛庁が昨年も導入を求めたが、
 自民党執行部が認めず、先送りにされた」
そうか、公明党かと思いますたいね。
確かに公明党は
最近こそ少し怪しくなってきてはいるものの、
平和主義の旗を掲げてきた経緯はありますたいね。
ばってん、それだけじゃなかごたる。
その後の「自民党執行部が認めず」というのが
気になるなあ、公明党が空中給油機の導入に反対なので
自民・公明・保守の与党3党の
結束を重視する立場から自民党の執行部、
つまり野中広務幹事長が「ウン」と
言わなかったんだろうんなあ、と推測していました。
ところが、この話は
もっと奥が深いことが後で分ったのです。

今日はたまたま、いつもと新聞の読み順が変って毎日、
朝日そしてスポニチ の順で読みました。
ところが、なんとスポニチにこの空中給油機の話が
もっと詳しく出ているではないですか。
その記事を読んで
私もようやくそうかと納得するところがあって
これを書き始めたわけです。
スポニチの24面に毎週日曜日、
私の毎日新聞時代の先輩、岩見隆夫さんが
「永田町曼陀羅」というコラムを連載しています。
岩見さん独自の視点で政治の世界が描かれていて
面白いので必ず読むことにしていますが、
今日は朝日で触発された私の職人の勘に
岩見さんのコラムがバッチリヒットしました。
見出しはこうです。

「空中給油機導入をめぐり
 護憲の双頭 が火花」

 
で、見出しの「双頭」の後には実は
野中前自民党幹事長と宮沢大蔵大臣の顔写真が入っていて、
「護憲の双頭」とは野中、
宮沢の両氏であることが分るようになっている。
この見出しを見て、へえ、野中、宮沢の両氏は
自民党の中では「護憲派」なんだ、
と一般読者は思うに違いない。
ところがもっと驚く話がこのコラムには出ている。
防衛関係者の談話としてこういうくだりがある。
「なにしろ、自民党の平和主義者四天王といえば、
 後藤田正晴(元副総理引退、86歳)、
 宮沢(81歳)、
 梶山静六(元幹事長・死去・健在なら74歳)と
 野中(75歳)なんだから。
 みなさん、戦争を体で知っている世代で筋金入りです。
 特に自衛隊が攻撃力を強めることには
 異常なほどの拒否反応を示してきた」
これで行くと現役で自民党の中で
影響力を行使しているのは野中、
宮沢の両氏だけということになる。
つまり「護憲の双頭」というのはその意味である。
ところが岩見さんのコラムによれば、宮沢さんは
「戦闘機が空中で油がなくなっては困るでしょう。
 脅威とか、そんな話ではない」
とあっさり空中給油機導入を認めてしまった。
しかし、いまや自民党きっての実力者になった
野中さんが一貫してこの問題では「ノー」の
立場を変えていないので
防衛庁関係者がヤキモキしても導入論は
暗礁に乗り上げているんだそうだ。
「戦闘機の足が長くなるのは、
 周辺国に脅威を与えることになるので、
 専守防衛の立場からこれは保持しない」
これが野中さんだけでなく
自民党・政府が維持してきた立場だそうだ。
記事によれば、中国は昨年10月の建国50周年の
軍事パレードで空中給油機を初公開して
世界では5番目の空中給油技術を
保有する国であることを世界に示した。
狙いは
「南シナ海の制空権を中国が確保したことを
 世界に知らせるためだった」
(香港の親中国系雑誌)
当然、この導入はベトナム、
マレーシア、フィリピン、
台湾など周辺国を刺激することになったでしょうたい。
岩見さんはこう結んでいる。
「さて、日本は。新世紀直前の一つの選択として、
 注視される」
確かに防衛問題は難しいのだが、
こういう具体的なものから考えていくと
少しは分るようになるのかもしれない。

さてこれから今日の放送のことも考えなきゃあ・・・・・

また明日・・・・・

2000-12-11-MON

TORIGOOE
戻る