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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第324回

ほぼ日編集部様

12月5日のニュースから

今日はこれだ!と思ってキーボードに向かっています。
毎日新聞の15面、家庭面だ。
毎日には「女の気持ち」という女性読者の投稿欄があるが、

11月17日付けの投稿が反響を呼び、
それに対する読者の手紙などを合わせ特集をしている。
男性読者は普通こういう欄は飛ばしてしまうでしょうから、

今日は敢えてここで取り上げておきます。
まず見出しから。

「女の気持ち ーー読者から反響続々」
「失語症になった栗原美智子さんが
 ワープロでつづった」
「『一人じゃないこと忘れないで』児童たちからも」


記事によると、
脳腫瘍で言葉を失った栗原美智子さん(60)が
ワープロで書いた文章が
11月17日の「女の気持ち」の欄に
「希望」というタイトルで掲載された。
これには読者から大きな反響があったという。
そこで毎日新聞の生活家庭部の小島明日奈記者が、
直接この投稿の主、栗原さん方を訪問して、
栗原さんとご主人の栗原道夫さん(65)
二人から話を聞き、
投稿だけでは分らなかった
もっと詳しい栗原さんの病気と
それとの戦いの様子が書かれている。
こういう読者投稿欄からヒントを得て取材を進め、
記事を書くには記者の感性が必要とされる。
読者の反響の大きさに促されたのも大きいんだろうが、
やはりここは小島記者の感性だったと思う。
この特集記事の書き出しが、
そうした小島記者の感性を良く表している。
こう始まる。
「美智子さんを東京足立区の自宅に訪ねた。
ピンクの口紅が愛らしい。
夫、道夫さん(65)がさしたものだ」
男の記者ではこういう観察は出来ないでしょうね。
この書き出しでこの栗原さんの
夫婦の関係がすべて言い尽くされている、
そんな実にみずみずしい感じ方だと思う。

さて、小島記者の記事と
11月17日の「希望」と題する文章によると、
栗原さんは7年前、脳腫瘍で、右半身不随になり、
車イスの生活になった。
失語症のため声は出ても言葉を出せない。
栗原さんの文章だと、
「半身不随で、車いすの生活です。失語症です。
 人と話ができないのです。
 その人のやっている事は分りますが、
 自分のことが言えないのです」
ところが、幸いなことに読み書きはできるため、
左手の中指でワープロのキーを
一つひとつ打って友達や知人に
はがきを出しているんだそうだ。
夫、道夫さんの言葉。
「長い文章は書けません。何か訴えようと声を出しても、
 僕がとんちんかんなことを聞き返し、
 二人で大笑いになることもある。
 漫才やっているようなものですよ」
小島記者は「・・と、道夫さんはほほえんだ」と
書いている。
二人を取り巻く空気が伝わって来るようだ。
美智子さんは介護保険では
要介護度「5」と認定されたが、
食事から排せつまで道夫さんが
一人で世話をしているという。
そうした生活を7年続けてきて道夫さんは
結婚の意味を考えるようになったという。
「この人の面倒を見る宿命にあったんだな、
 自分でよかったって」
この後は私の文章より小島記者の文章の方が
ちゃんと伝えられるので少し長めですが、引用します。

「二人の仲の良さにふれると、
 美智子さんがおもむろにワープロをゆっくり打ち始めた。
 『やまがすきなのです』
 道夫さんが顔をワープロに近づけて、読み上げる。
 『そうそう、元気なころは休みに二人で
  山に行ったんです。
  首都圏の山はほとんど登ったかなあ』
 美智子さんは歌は歌えるんだという。
 早速、『ふるさと』を歌ってくれた。
 『夜、この人のトイレのために4回起きるのですが、
 そのときに二人で大声で童謡を歌うんです。
 楽しいですよ」

毎日新聞をとっている人は是非このページを読んで下さい。

結婚、夫婦、高齢化、老後、病気、
介護など誰もが直面することについて
いろいろと考えさせてくれる記事です。

これから早稲田の学生に桶川の事件のいきさつについて
話をしてきます。
ということで今日はここまで
また明日・・・・

2000-12-06-WED

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