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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第304回

ほぼ日編集部様

11月14日のニュースから

同じ話でも新聞によって取り上げ方がこんなに違うという
見本みたいなケースを発見。
今日はこの話から行きますよ。

私の毎朝の新聞を読む順番は
スポニチ、毎日、朝日の順です。
これはほとんど変りません。
別にこれといって意味はないのですが、
朝まだ起きてばかりで頭がボンヤリ状態の時に
いきなり朝日はきついかな、
じゃあ、軽いジョギング風にスポニチから行こうと。
やっぱり朝日は最後だな、と。
それぐらいの感じです。

まず今日もスポニチの1面から見てきて
社会面の右ページに福田官房長官(福田元首相の
息子さんですね)の顔がどーんと大きく出ていて、
漫画のセリフの吹き出しような形で

「加藤総理」

とバカでかい活字。見出しは

「福田官房長官 ウッカリ 会見で2度」
「政局緊迫する中、シャレにならない!!」
「釈明の言葉も意味深 『いつかそう呼ぶかも』」


森首相の及び政府のスポークスマンの福田官房長官が
13日の記者会見で加藤紘一氏を2度にわたって
「加藤総理」と呼び間違えたという記事。
福田氏本人は「口が滑った」と釈明したが、
補足する中で「いつかはそう呼ぶかもしれない」と言って
これまた大変。
政界では目下加藤さんが
「森内閣不信任案に同調する」と発言して、
さあ、いよいよ加藤さんが
政権取りに立ち上がったと見られているときに、
首相とは一心同体のはずの官房長官から
たとえウッカリでもここまでの言葉が飛び出して来て、
ええっ!と驚きの声だ。

つまり、ほらあるでしょう、
絶対言ってはいけないと思う言葉ほど
緊張のあまり出てしまう、というヤツ。
会見後福田さんは
「口が滑った。“森幹事長”と言わなくてよかった」と
冗談交じりにして釈明したそうだが、
この「口が滑る」と言う言葉の真意が分ってこの人、
使っているのかしら、と私は思う。
「口が滑る」というのは「言い間違える」とは
意味が違うんです。
例えば三省堂の「新明解国語辞典」によれば、
「口が滑る」は次のように説明されている。

「黙っているべき事を、うっかりして言ってしまう」

福田さんの心の中で「黙っておくべきこと」
つまり、森さんが首相退陣に追い込まれたら
次の首相は加藤さんだな、という気持ち。
あるいは予測、推測。
これをうっかりもらしてしまったのなら、
ここは「口が滑った」が最も妥当な表現でしょう。
ばってん、森さんの右腕がそんなことを
考えていてはいけないわけで、たとえそうであっても
ここは口が裂けても「口が滑った」と
言ってはいけないんでしょうね。

スポニチはこのように派手に扱っていましたが、
さて、毎日新聞はというと、2面下にベタ記事扱いで

「官房長官ミス!? 2度『加藤総理』」

毎日も口が滑ったと言う表現を使っているが、
その真意について言葉の面から追及してはいない。
「いずれ将来そう(加藤総理と)呼ぶことが
 あるかもしれないね」と
福田さんが記者団に話したと書いている。
記者はもっと日本語に敏感に反応して欲しいですばい。

ところで、朝日新聞はどうか?
これがどこを探してもないんだなあ。
この話ボツになったらしい。
まあ、このくらい新聞の扱いは実は違っているんです。
マスコミはどこもおんなじとよく言われますが、
細かく見ていくとこういう違いもあるんですね。

スポニチは「これは面白い」と飛びついたけど、
毎日はそれ程じゃないな、と思って地味に扱った。
朝日はこれはニュースじゃない。
福田さんの単なる言い間違えだから、
ニュースとして取り上げるほどのバリューはない、という
判断なんでしょう。

どれが正しいかは分りません。
それぞれの判断がここにはあるということです。

今週もハードな取材が続く。
今日もここまで、すんまっせん。
また明日・・・・

2000-11-15-WED

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