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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第294回

ほぼ日編集部様

11月5日のニュースから

私はベタ記事主義でここの欄を書いているんですが、
今日は毎日新聞の大スクープに触れざるを得ません。
毎日新聞は1面に

「旧石器発掘ねつ造
 宮城・上高森遺跡 調査団長の藤村氏」
「自ら埋める 『魔がさした』認める
 70万年前と発表」
「北海道の遺跡でも」


と、紙面の9割を使って大々的に報じている。
3枚のカラー写真が目につく。
当の藤村調査団長が午前6時半に発掘現場に
しゃがみ込み石器を埋め込んでいる姿だ。
最後の1枚は埋めた跡を足でならしているところで、
これは文句の言い様がない証拠写真だ。
毎日は1面のほかに2面、3面、
26面(第二社会面)27面(社会面)と展開し、
社会面は本人の首うなだれて
インタビューに応じる写真まで使う念のいれよう。
さらに25面は全1面をフルに使って

「早朝、たった一人で 上高森遺跡
 これが石器を埋める現場だ」

 
という見出しで14枚の写真による映像の証言集だ。
「掘り返し」「袋から出し」「埋め戻す」
と連続写真には小見出しがついている。
毎日の記事によると北海道の遺跡でも
同じことが行われていることが判明しているという。
このねつ造をやった藤村さんという人は高校出ながら、
独学で考古学の道に入った人らしい。
しかし、彼が行くところ次々に石器が出土し、
今回の上高森遺跡は日本にも
70万年以上前に前期旧石器時代が
存在したことを証明するものとして、
世界的に注目を集めていた。
この遺跡のことはすでに教科書にも載っており
今後は教科書の訂正なども課題になってきそうだ。
この町の学者は次々と記録を塗り替える発見をするため
「石器の神様」「ゴッドハンド」などと呼ばれていた。
「彼が来ると砂ぼこりが舞い、石器が顔を出す」
「彼だけが石器を出す」
などと、一種神格化されていたようだ。
また、この藤村さんと
10数年前から遺跡発掘に携わってきた宮城県の
学芸員はこう言っている。
「学問的に重要な石器は彼が発見した。
 みんなが疲れて休すんでいるような時に彼が出す。
 われわれは彼のおぜん立て役みたいだった」

毎日が現場にビデオカメラをセットして
完全に撮影しているので分るように、
藤村さんの発見に疑問を抱いた
内部の人物がいたんでしょう。
「あれはどう見ても怪しい」
などという具体的な内部告発があって
初めてこの手のスクープは成立するものでしょう。
恐らく小さな疑問はかなり以前からあったんでしょう。
しかし、彼が次第に神格化されていくに従い、
そうした疑問は言い出しにくくなって、
最後はこういう悲喜劇を迎えることになったんでしょうね。

人間の哀れさや浅はかさを感じてしまいますが、
彼をここまでモンスターにしてしまった周囲にも
問題があるんじゃないんでしょうか。

あ、そろそろ放送に向かって準備を始める時間です。
また明日・・・・・

2000-11-06-MON

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