フランスではね、人と会ったら
「ビズ〜♪」（bise）っていう
ほっぺたとほっぺたを合わせる挨拶をするんだ。

ほっぺたとほっぺたを合わせながら
口で「チュッチュッ」っと、
音を発するのが基本だよ。

いきなり初めての人との肌と肌のふれあい。
初対面の人とはせいぜい握手くらいという
日本からすると、衝撃的なスキンシップだけど
フランスではおなじみのご挨拶、「ビズ」。

必ず出会う相手全員と、というわけではなく、
仕事の関係などで出会った初対面の人とは
握手でご挨拶という感じだったりも。
が、相当な範囲で、スキンシップありの
「ビズ」のご挨拶が基本です。

例えば友人の家でのパーティーに招待されて
そこで出会う初対面の人たち、
（＝友人の友人はみんな友人）
友人のファミリーや親戚たちと出会う時、
（＝友人の親戚はみんなお知り合い）
仕事で出会った人でも、話が盛り上がって
別れる頃にはけっこういい感じになった人たち、
（＝ちょっと親しくなった人はみんな友人）
ご近所の行きつけのビストロや商店主と
まあまあ仲良く言葉をかわす仲になったとき
（＝感じがよくて「この人いい人だわ〜」
　ってなったらみんな顔見知りの友人）
‥‥etc.

ちょっとでも親しくなった間柄では
ほっぺとほっぺを合わせる「ビズ」という
スキンシップありありのご挨拶をするのが
フランス流です。

つまり相手との関係や距離の近さによって、
「ビズ」をするかしないかが決まります。
逆に言えば、「ビズ」をするかしないかで、
相手との距離がわかったりするのです。

女性同士、そして女性と男性の間では
「ちょっとでも親しくなればビズ〜」
というのが通常だけど、
男性同士の間では、
「握手」もしくは「握手＋ハグ」で
済ませる挨拶も多いんだ。

でもね、けっこう親しくなると同じように
ほっぺとほっぺでチューの「ビズ」を
するようになるのが、フランス流だよ。

この「ビズ」、
パリで暮らしていると「２回」が普通だけど、
地方によって回数も違うのが面白い。
１回という地方もあるようだし
（ちなみに私は今まで一度も
　１回だけというバージョンには
　出くわしていません）
３回、４回とほっぺとほっぺを
何往復かさせるパターンの地域は
けっこう多くて、
「もうちょっとかな？？」
「あっ、３回で終わりなんだ‥‥。」
「えっ、まだか。４回か‥‥。」
と様子を見ながら回数を確認して、
ぎこちない一瞬が生まれるということも
わりとしょっちゅう起こります。

ネットで調べたら、フランス全土の
「ビズ何回するのか」mapというのも出てきたので
参考のためにリンクを貼っておきます♪
（une seule bise＝１回
　deux bises＝２回
　trois bises＝３回
　quarte bises＝４回）

ハグしながらほっぺにチューチューなんて、
いかにも外国っぽくて、
ちょっとかっこいい感じがするでしょ？！

でもね、ちょっと想像してみてね。
友人やそのまた友人たち10人で
ビストロでご飯を食べることになるとするでしょ。

そしたら誰かが到着するたびに、
どんなに狭い席と席の間を通ってでも
ほっぺたにチューとチューの「ビズ」を
全員としてご挨拶。

会が終わった帰りには、
またまた全員とほっぺのチューをして
帰りのご挨拶‥‥。

ってわけで、けっこう面倒だわ、
チューをしながら会話もはずんじゃったりして
時間はかかるわで、
ちょっと面倒くさかったりもするんだよね。
「こんにちは〜みなさん。
　はじめまして〜♪　ボク、バブーです。
　ど〜もど〜もども〜♪」
って手をふってすますわけには
いかないんだよね。

たまにちょぴっと面倒くささを感じつつ、
相手との距離感を知れる、
相手との距離感を自分から縮められる
（もしくは縮まっていることをアピールできる）
ある程度親しい人との間では必須の
フランスの挨拶「ビズ」。

最近は、日本人は肌と肌をふれあいながら、
スキンシップをしながら
「ビズ」をする文化はない、
とわかってくれるフランス人も増えてきたんだ。

でも、フランスでは
「このスキンシップ挨拶が普通なんだ。」
「むしろビズをする間柄こそ
　お近づきの印だ。」
ってわかっておくと、
関係性がスムーズになったりするんだよ！

※この連載を再編集し、
　書き下ろしも入れて新潮文庫になりました。
　こちらをぜひご覧ください！