第3回

大江戸線はジェットコースター。

井上
次は何を話そうかな。

そうだ、路線の名前について話しましょうか。

ーー
はい、ぜひお願いいたします。
井上
さきほど、東京には地下鉄が
全部で13本あると言いましたよね。

それぞれの路線は、当初、
数字がついた名前だったんです。

たとえば、浅草線は、
前は「東京鉄道1号線」

というのが正式な名前でした。

ちなみに、浅草線が1番、
日比谷線が2番、銀座線が3番、
丸ノ内線が4番なんですけど、
これ、どうしてこういう順になっているか、
わかりますか?
ーー
計画された順‥‥でしょうか。
井上
違うんです。

品川が起点で、
時計回りに順番に数字をつけているんです。

日比谷線は目黒、銀座線は渋谷、丸ノ内線は新宿、
と考えると、品川駅を拠点に
時計回りになっているのがわかるでしょう?
ーー
え、品川が起点なんですか?
井上
はい。品川は昔から起点なんです。

なぜなら、品川のあたりは
昔は東京駅よりも栄えていたんです。

首都高の環状線だって、
1号羽田線、2号目黒線、3号渋谷線、
4号新宿線というふうに、
やっぱり品川が基準になってるんですよ。
ーー
へぇー、品川、すごいですね。
井上
うちは路線を番号で呼んでいたんですが、
メトロさんは、銀座線、
丸ノ内線というふうに呼ぶようになりました。

それで、うちも名称を付けることにしたんです。

でも、「浅草線」というだけじゃ、
どっちが運営している線だか分からない。

そこで、「都営○○線と付けてください」

という内容で公募したんです。
ーー
公募を。
井上
はい。それで多かった名前が
「浅草線」と「三田線」と「新宿線」で、
それを正式名称にしました。

大江戸線も開通前は
「東京鉄道12号線」と呼んでいたんですけど、
開通にあたって親しみやすい
名前を付けましょうということで、これも公募しました。

いろいろあった末に、
大江戸線という、オールドな名前になりまして(笑)。
大塚
「ゆめもぐら」という愛称も
ありましたよね。

井上
そう。
ーー
「ゆめもぐら」!
井上
今では誰も呼ばなくなったんですけどね。

たぶん、当時の知事が
そういうノスタルジックな名前が
好きだったんだろうと思います。
ーー
(笑)
井上
大江戸線に決定した理由は、
「江戸」と呼ばれていた地域を
ほぼ包み込む線形だったこと、
蔵前や本郷といった江戸時代に形成された
歴史ある地域を通過する線だったこと、
「江戸」という歴史的な言葉がむしろ新鮮だったこと、
「大」を冠することで広がりを感じられたこと、
そういう理由で大江戸線と付けました。

このときから、さきほどの「都営○○線」の
「都営」を全て取りました。
大塚
自分たちでいうのもあれですけど、
大江戸線、っていい名称ですよね。
ーー
いいと思います。

親しみやすくて、かっこよくて。
井上
そうですね。
ーー
あと、大江戸線といえば、
ホームがとても深いですよね。

長いエスカレーターを下って、
ようやくホームに着くというような印象があります。
大塚
そうですねぇ。
井上
六本木駅のホームは、
最大で42.3メートルですからね。

地上のビルに換算すると10階です。
ーー
10階!

世界的に見ても深いんですか?
井上
いや、モスクワの地下鉄とかはもっと深いです。
ーー
あ、そうなんですね。
井上
ソウルも深いですし。

外国だと地下鉄がシェルターみたいな
役割をしているところもあるので、
あんまり浅いと困るみたいですね。
ーー
シェルター。

東京都は、そういうことは
想定はされてるんですか?
井上
してないです。

でも、新しい地下鉄は、構造上は深いです。

最初に作る地下鉄は浅いところを通れるんですけど、
後から作る地下鉄はその下を
通って行かなきゃいけないので、
だんだん深くなっていきます。
ーー
東京メトロさんの副都心線も
新しい路線ですけど、
副都心線よりも大江戸線のほうが深いんですか?
井上
大江戸線のほうが深いです。

副都心線は、地下に何にもないところを
通ってるんです。だからそこまで深くない。

明治通りって、地下に何にもなかったんですよ。
ーー
じゃあ、東京で一番深いのは大江戸線。
井上
大江戸線です。

平均22.2メートルです。

それだけお金もかかっているんですけどね。

大江戸線って、環状部に限っていえば、
1キロ掘るのに、約323億円かかるんですよ。
ーー
1キロ掘るのに323億円!
井上
簡単にいうと、1メートル3千万円です。

高額な費用がかかるんですよ。
ーー
はぁぁ‥‥。

そういえば、前回の取材で、
大江戸線は高低差があるから、
ジェットコースターみたいな気分が味わえるって
おっしゃってましたね。
井上
そうなんです。

ほとんどの駅では、
駅より線路がさらに深いんです。

駅が深かったら、
お客さまが乗る時間もかかりますよね、
だから、全体的に深い大江戸線でも、
これでも駅だけは
地上から浅いところにしているんですよ。
ーー
そうなんですか?
井上
はい。

しかも、駅が上のほうにあると、
停まるときにブレーキを強くかけなくてすみますよね。

出発するときも下り坂だから、
エネルギーをたくさん使わずにすみます。

効率的な運転ができるんです。

ーー
へぇー。考えられてますね。
井上
しかも大江戸線はリニアモーター駆動なんで、
一般の地下鉄は勾配が、
1000分の35パーミル、つまり
1キロで35メートルあがるようになっているんですが、
大江戸線は、それが55メートルなんです。

高低差がすごいので、
まるでジェットコースターですよ。
大塚
うちのPR活動の一貫で、
大江戸線の運転台から観られる景色を
撮った動画がありますよ。
井上
ラッパーのSALU(サル)さんと
コラボしてて、カッコいいです。

結構前からYouTubeにも
アップしているんですけど、
え、知らない? 観たことない?

‥‥残念だなぁ(笑)。
ーー
すみません!

今、拝見します。

▲というわけで、その場で観ます。

▲これが大江戸線のPR動画。

たしかに、かっこいい

大塚
大江戸ね、
人がたくさん乗ってくれるんですけど、
建設費の節減で、小型車両を採用しているんです。

今思うと、
もっと大きな車両を作っておけば
良かったと思います。

メトロさんとくらべて、
儲かる路線が小さいんです、うちは(笑)。

ーー
(笑)
井上
気を取り直して、
ラインカラーのことを言いましょうか。
ーー
はい。ぜひお願いします。
井上
昭和45年までは、
メトロさんもうちも、
独自に路線の色を決めていたんです。

でも、将来路線が増えたら
名称だけで区別するのは難しい、
という話になりました。

そこで、メトロさんと一緒に
統一したラインカラーを
付けることにしたんです。
ーー
話し合われたんですね。
井上
はい。そのときに、
うちの三田線はもともと赤だったんですけど、
メトロさんの丸ノ内線に
赤を取られてしまって(笑)、
三田線は青になったんです。
ーー
(笑)

※この取材は、2017年4月に行われました。

(つづきます)

2017-07-21-FRI