撮影:小川拓洋
「ほぼ日手帳」のたのしさを
ギュッと凝縮した3分間のプロモーションビデオ。
もう、ご覧になりましたか?
ビデオをつくってくださったのは中村勇吾さん。
じつは「手帳に書く」ことが苦手なんですって。
ビデオの中でボーカルを担当してくださった
グラフィックデザイナーの佐藤卓さんを交え、
「書く」という行為について、話します。
三者三様の「手帳のつかいかた」についても。

もくじ

「ほぼ日手帳」のプロモーションビデオをみる

第1回 手帳に対する思いはまっさら。

糸井 今回、「ほぼ日手帳」のプロモーションビデオ
つくることになって、
ぜひ中村勇吾さんに頼みたいと思って
お声がけさせていただきました。
中村 ありがとうございます。
でも、僕は
スケジュールは100%デジタルで管理していて、
手帳というものはまったくつかっていないんです。
佐藤 中村さんはデジタル人間だもんね。
中村 そうなんです。
だから、はじめにお会いしたとき、
まずそれを言っておかないと‥‥と思って
ドキドキしながら、言いました。
糸井 「手帳をつかわない僕ですが、いいですか」ってね。
僕はもう中村さんにやってもらおうと
決めてましたから、
ご本人が手帳をつかっているかどうかなんて
まったく問題ではなかったんですよ。
中村 そうそう、「へぇー」と言われて、
手帳をつかわないことについてはスルーでした。
糸井 中村さんは動きそのものを
とらえられる人だと思ってましたからね。
犬が嫌いだからって、
犬の動きを撮影できないわけではない。
それに、僕が手帳というものはとてもいいものだ、
ということを中村さんに熱弁したところで、
きっと意味がありませんよね。
第一、僕自身、手帳がいいことばかりだとは
思っていません。
ものというのは、やっぱり
いいところも悪いところも
すべて含まれていますから。
佐藤 あぁー、おもしろいですね。
糸井 実際、僕はお酒が飲めないけど、
お酒のコマーシャルのコピーを考えましたし。
で、嫌いなものって、
逆にやってみるとよかったりするんですよね。
苦手だと思って意識しているものって、
常によく見ているものだから。
佐藤 うんうん、
それだけ引っ掛かっているものですもんね。
糸井 もし、中村さんが
手帳にうるさいんですよって言う人だったら、
その手帳論の世界の色のプロモーションビデオに
なっちゃってたかもしれない。
なので、最初に手帳をつかわないと聞いたとき、
スルーどころか、ある意味、
「やった!」という感じでしたね。
中村 手帳に対する思いは
まっさらですから(笑)。
糸井 それが、すごくありがたかった(笑)。
佐藤 糸井さんは、
なぜそこまで中村さんにお願いしたい、と?
糸井 ひと言でいえば、
中村さんがつくった映像を見てピンときたんです。
あ、この人にやってもらいたいって。
僕は文章を書く人間なので、
人が書いているものを読むと
苦しんで書いているなとか、
一回手がとまっちゃって
もう行きがかり上こう表現しているだけだなとか、
なんとなくわかっちゃうわけですよ。
佐藤 うんうん。
糸井 同じように、音楽とか絵とか映像でも、
ときどき、わかるものがあるんですね。
そういう意味で、僕は、ひとりの鑑賞者として
中村さんがつくりだすものが
「わかった」ように思えたんです。
佐藤 同じものを誰かがつくっても、
きっと、そう思えないんですよね。
糸井 そうそうそうそう。
とくにデジタルの世界は、
それまでの軌跡が全部プログラムで
見えるわけですよね。
真似しようと思ったら、すぐにできちゃう。
中村 そうですね。
糸井 でも、同時に人には癖があるでしょう?
どうしても、この人がつくると
こうなっちゃうっていうものが。
中村 手癖みたいなものは、
プログラムにもありますね。
糸井 やっぱり、本人じゃないと‥‥。
中村 ええ、バランスが悪くなると思います。
糸井 あと、中村さんのお仕事を追った
ドキュメンタリーを見たことも大きいですね。
その番組のなかで、中村さんは
できることとできないことの分け方が
ものすごくうまかったんですよ。
「これは僕にはできないから、いかない」とか
「これはやればできることだから、
 もうちょっと粘る」とか。
‥‥卓さんも、そうだけどね。
佐藤 え、そうですか(笑)。
糸井 うん(笑)。
それが上手に分けられるということは、
安請け合いしないということだし、
いったん引き受けてくれたからには
きちんと結果を出してくれるということでもある。
やっぱり、仕事仲間として一緒に組むときには、
自分ができることの寸法がわかっている人と
やりたいと思いますね。
佐藤 ああ、それは、わかるなぁー。
中村 なんか、ハードルが、
どんどんあがっているような‥‥。
(※この鼎談は動画が完成する直前に行われました)
一同 (笑)

(つづきます)
2013-10-17-THU

※このコンテンツは、
 『日経ビジネスアソシエ 2013年11月号』に掲載されたものと同じ鼎談を
 「ほぼ日刊イトイ新聞」用に編集し直したものです。

中村勇吾さんにつくっていただいた動画はこちら。

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