10月の新作プリントカバー
「世界の伝統柄シリーズ」
手塩にかけたカバーです。
2009.09.30
ほぼにちわ。です。

10月の新作、「世界の伝統柄シリーズ」
3種類のプリントカバーの販売が
いよいよ明日、10月1日(木)より
ほぼ日ストアと全国のロフトではじまります。

すでにたくさんの方々から、
「決めてます」「気になっています」「待ってます」と、
いずれもうれしい声をお寄せいただいている、
「パペルピカド」「ヒンメリ」「ガーナ」
この「世界の伝統柄シリーズ」は、
グラフィックデザイナーの佐藤卓さんの
アートディレクションのもと、
デザイナーの日下部昌子さん(佐藤卓デザイン事務所)
いちからパターンをおこしたオリジナル柄です。
販売開始前日の今日は、
デザインを担当した日下部さんにうかがった
「世界の伝統柄シリーズ」が
生まれるまでのお話をお届けします。

ーー 2009年のスプリング限定カバーとして、
佐藤卓さんにオリジナルの
アロハ柄をつくっていただいた
「TSアロハ」は、とてもたくさんの方々に
喜ばれた人気のカバーでした。
2010年はその第2弾に加えて、
新たに「世界の伝統柄」をテーマにした
オリジナルパターンのプリントカバーを
つくりたいとご相談したのでした。
「世界の」伝統柄というと、数々あると思いますが
今回、メキシコ、フィンランド、ガーナという
3つの国の伝統柄を選んだのは
どういういったところから?
日下部 「世界の伝統柄」というテーマをうかがって
まず最初に佐藤(卓)と考えたのが、
メキシコの街並みのカラフルな色のイメージで
なにかできないかな、ということでした。
それで、メキシコの写真集や資料を集めてみたんです。
ーー まず色から、メキシコへ。
日下部 そうです。そうしていろいろ資料を見ているうちに
「パペルピカド」を知ったんです。


ーー パペルピカドというのは、
メキシコのお祭りに飾られる切り絵、ですね。
フィエスタ(祭り)のときには
万国旗のように街のあちこちに飾られるものだとか。
日下部 そうですね。名前もかわいらしくて。
ーー 「パペルピカド」。
口に出して言いたくなりますね(笑)。
で、今日はそのパペルピカドの実物も
お持ちいただいて。


日下部 これは、たまたま入った
横浜の中華街の雑貨やさんに、
それこそ万国旗のように
ディスプレイされていたんです。
もうデザインができあがった後で
まったくの偶然の出会いだったんですが。
ーー ほんとにカラフルですね。
絵柄もなんだかユーモラスで。
花とか鳥とか、どくろまで。
日下部 そうですね。カバーにするモチーフは、
多くの方に受け入れられるものとして、
鳥と花と、文字などで作ってみたんですが、
最終的には鳥になりました。
ーー もともとパペルピカドには
鳥のモチーフも多いとか。
日下部 そう、これにもありますね。


ーー ほんと。カバーの鳥は、
日下部さんが描かれたものなんですか?
日下部 はい、パペルピカドを参考にしながら
まず絵を描いて、
ただ、描いただけだと切り絵らしさが出ないので
その絵を実際に切り抜いたものを原画にしました。


ーー わぁ、これまたきれい、見事ですね。
これはわたしたちもはじめて拝見しました。
最終的に、淡いエメラルドグリーンの地になって、
内側とバタフライストッパーのピンクが映えています。
日下部 メキシコの街並みの写真を見ていると、
この色の組合わせが多いんです。
内側の色は、手帳を開くと
ちょっと元気がでるような感じに
なるといいなと思って(笑)、
全体的に明るい色を選んでます。
ーー (笑)元気がでます。
全体的に、気持ちが浮きたつというか、
たのしいカバーになりました。
日下部 はじめは、いかにも伝統柄というようなものも
いろいろ考えてみていたんですけと、
そうすると、民芸調になりすぎてしまって。
ーー 以前、卓さんにお話をうかがったときにも、
「伝統的な模様といったものに興味のない人でも、
ふつうに持てるようにチューニングしていくのが大切」
とおっしゃっていましたね。
日下部 常にそれを意識して考えていますね。
このパペルピカドというモチーフが見つかったことで、
北欧でもなにかこういったものはないかな、と
工芸品まわりを探してみたんです。
ーー なるほど。
そうして、フィンランドの「ヒンメリ」に
つながっていったんですね。

日下部 こちらも、最初はもっと北欧らしいデザインとか
範囲を広げて考えた時期もあるんですが
ストーリー性のあるものがいいと佐藤も言っていて。
北欧の工芸品まわりを調べているうちに
「ヒンメリ」にたどりついたんです。
ーー ヒンメリは、フィンランドの
伝統的なクリスマスの飾りだそうですね。
ライ麦の藁(わら)を糸でつなげて
作られていると聞きました。
日下部 直線をつなげてできる幾何学的な形が
おもしろいですよね。
こちらは実物を手に入れることは
できなかったんですが。
ーー いちど、ヒンメリの実物を見たことがあるんです。
桐島かれんさんのお店「House of Lotus」
クリスマスの時期に
ディスプレイされていたものなんですが、
大きなヒンメリが天井から吊られていて。
カバーになるとは想像もしていなかったころですが
すごく印象的でした。
かすかな風にゆっくりとまわって、
壁に映る影もきれいで。
もともとは新年の豊作を祈るというような
意味もあるとか。
風を感じるところは、ちょっと風鈴みたいですよね。

画像提供:おおくぼともこ
左は「House of Lotus」での展示風景(2008年12月)。
どちらもおおくぼともこさんの手作りのヒンメリ。
ヒンメリの作りかたを紹介したおおくぼさんの著書
『ヒンメリーフィンランドの伝統装飾』
おおくぼさんのホームページでも販売中です。
ーー そのヒンメリをイメージして
パターンを起こしていただいたわけです。
日下部 そうですね。ふだん使いのカバーに
ヒンメリの模様をおとしこむときに、
どういう模様がいいのかなと、
いろいろ試して検討しました。
どうパターン化するのか、
パーツのつなげ方とか、ですね。
ちょっと実際のヒンメリのつなげ方とは
ちがっていると思うんですが(笑)。
ーー これも手描きでドローイングしたものでしたね。
日下部 はい、模様の配列は
パソコン上で試していたんですが、
データのままだとフラットになるというか
無機質な線になってしまうので、
もっとゆらぎを出すために
最後はペンで描いて、ムラを出したり、
あえてインクのたまりを作ったりしました。
そのペン描きしたものをスキャンして
またパソコンで線の太さを調整して、
という作業を何度か繰り返してます。


ーー 生地へのプリントの段階でも
いっしょにプリント工場に行っていただいて
濃淡の調整をしました。
日下部 雪の結晶を思わせるような繊細なイメージに
なるといいなと思っていたんですが、
微妙な調子で印象が変わってくるんですね。
最終的には、プリントのムラもうまくいきて
奥行きがでたのも、よかったと思います。
ーー 「ヒンメリ」という名前の語源は、
ドイツ語やスウェーデン語で
「天」とか「空」という意味の
「Himmel」という言葉だそうです。
今年のナイロンカバーとプリントカバーは
例年よりも、ほんのちょっと光沢のある糸を
使っているんですが、
地色のアイボリーに糸の艶感が加わって
すごく雰囲気がでましたね。

ーー メキシコの紙細工、フィンランドの藁細工、
いずれも工芸品をモチーフにしていますが
「ガーナ」の場合はそうではないんですよね。
日下部 こちらは、伝統的なテキスタイルの
資料を集めて。


ーー 民族衣裳とか、フォークアートとか、
とてもカラフルですね。
日下部 ええ、最初はそういうカラフルなもので
考えはじめたんですが、
やってみるとくせが強くなって、
ちょっとカバーには合わない感じがしたんです。
もうすこしシンプルな方向で行こうと
いろいろ見ているうちに、
あるテキスタイルの
赤と黒とベージュの色づかいが
イメージに近いな、と。
それがガーナのテキスタイルだったんです。
ーー なるほど、「ガーナ」は色から
インスピレーションがわいたんですね。
赤い地に並ぶ小さな模様もリズミカルで、
音楽が聞こえてきそうな気がします。
日下部 パーカッションとか(笑)。
ーー そうそう。音楽的な感じがするのも
このカバーの魅力のひとつだと思います。
ちょっと和のテイストもあるのが
おもしろいですよね。
日下部 そうですね。
ーー 外側のポケットがダークブラウンで
ツートンになっているのも
このカバーの特徴です。
日下部 表のパターンを全面にひくと、
すこしくどい感じがしたので
ポイントに、ダークブラウンの無地を
組合わせました。
ーー 3つのカバーそれぞれ、ちがう魅力があって
読者のみなさんからも、早くから
「パペルピカドがかわいい」
「ヒンメリ、すてきです」
「ガーナにくぎづけです」
というメールをいただいているんですよ。
日下部 うれしいです。
ーー ちなみに日下部さんは、
2010年にどのカバーを使うか決めましたか?
日下部 この3つのうちのどれかなんですけど、
まだ迷っています(笑)。


世界の伝統柄シリーズは、
明日、10月1日(木)より、
ほぼ日ストアと全国のロフトで販売を開始します。
各商品のくわしい紹介は、こちらをご覧くださいね。
「パペルピカド from MEXICO」
「ヒンメリ from FINLAND」
「ガーナ from AFRICA」

ほぼ日ストアでのご注文は、
10月1日(木)11:00より、お申し込みいただけます。
どうぞ、よろしくお願いします!