手帳を中心に、
おそろいの色の小物を
楽しんでいます。
2008.11.23
ほぼにちわ、です。


「江戸が知りたい。東京ってなんだ?!」の連載で、
「ほぼ日」をご覧のみなさんにも
おなじみの「江戸東京博物館」。
その最新コンテンツ「浅草今昔展」編の
取材がすすめられていたある日のこと、
連載担当の乗組員が教えてくれたんです。

「学芸員の小山さんが、とっても素敵に
手帳をつかってくれてるよ」

そうと聞けば、じっとしていられない手帳チームです。
江戸東京博物館学芸員の小山周子さんに
お話をうかがってきました。


●手帳をきっかけに、新しい自分を発見?!

小山 そうなんです。
名刺入れとIDカードのストラップ、ノート。
それから、これはエプロン。



小山 はじまったのは、そうですね。
そもそも、この手帳はいただいたものなんです。
「むかしの暦で、いまを楽しむ。」の連載がご縁で。
小山 それで、じつはこのカバー、
私が選ぶ色じゃなかったんです、正直に言うと(笑)。
ふだんは、黒とか紺とかベージュとか、
そういう色を選びがちだったもので。
小山 そうなんです。
なので箱を開けて、まず「おっ」って思って。
「派手な色の手帳」というのが
はじめの印象だったんですね。
でも、手帳そのものは
去年も使って気にいっていたのと、
こういう色のものも、
試しに使ってみようかなと思ったんです。
そうやって使ってるうちに、
この色がだんだん好きになっていったみたいで。
小山 そのことに気づいたのは、最近なんですよ。
夏に「最近この色ばっかり集めてない?」って
同僚に言われて、はじめて自覚したんです。

これはもう、わたしにとっては革新的なことです。



小山 名刺入れだけは、もともと持っていたものです。
ほかは順々に。手帳の次がエプロンですね。
小山 そうです。学芸員にとって、
手は、大切な作品、資料を取り扱うためのもの、
という考えが基本にありまして。
ほかの物を持ちながら、たとえば名刺入れとか、
そういう物を手に持ったまま、
作品を扱うことは絶対にしないんです。
それで、細々したものを入れるために
ポケットがたくさんあるエプロンを
つけることが多いんですね。
このエプロンは今年の2月に買ったんですが、
意識したつもりはないのに、
いろんな色のエプロンのなかから、
ふだんは選ばない、この色を選んでいたんですよ。
ほかのものも、無意識のうちに集まっていた、
という感じです。

夏には緑色のTシャツとかも着てて(笑)。
「最近、どうしたの?」「この色、多いよね」
とまわりから言われだしたのが、その頃です。
それで自分でも、あれ? って。
手帳のおかげで、新しい色の世界が開けたというか、
緑色という、今年のテーマカラーができました。
小山 以前は広報と展覧会の企画をやってましたが、
今はコレクション管理をしています。
資料がなくならないように、整えたり棚に整理したり、
傷んでないかをチェックしたりといったことですね。
それから、他館に資料を貸し出すときに立ち会ったり。
外国で言うと、コンサバターという役割なんですが、
そういった保存管理に関わる仕事をしてます。
小山 うちの資料がいま、34万点あるんです。
すべて大切な文化財ですし、ここは東京都の施設なので、
資料は都民のみなさんのものですから、
館から外に出すときは、やっぱり緊張しますね。
重要な仕事だと思っています。


●仕事とライフワーク。
 スケジュール管理に活躍してます。


小山 予定をとにかく書いていってます。
メインに使っているのは、月間カレンダーですね。
他館からの「何日に来て調査をしたい」とか、
江戸博のコレクションのなかから
「この資料を次の展覧会に借りたい」とか、
研究者の方からの
「論文を書くために、この資料を閲覧させてほしい」
といったご要望に応えるときに、
それが重ならないように、この手帳で管理してます。



ただ、1日ページは、あまり使い切れてないんですよ。
もっと楽しい使い方もしてみたいんですけど。
忙しいとほんとに書かなくなるし‥‥。
あ、ここは絵が描いてあります。



茶道をやっているんですが、
この日、「茶箱の手前」というのを習って、
帰りの電車のなかで描いたものですね。
それから、プライベートというか、
ライフワークで版画の研究をしてまして、
その関係のことは、よく書いてます。
原稿を依頼されて書くことも多いので、
その締切とかの予定を、
年間インデックスのページに書いてます。
小山 ここでの仕事ともつながっているんですが、
浮世絵と、それより少し後の時代、
大正、昭和の版画を研究しています。
以前「ほぼ日」の「美しき日本篇」の連載でも
取り上げていただいた、あの時代の版画ですね。
1日の仕事を終えて、帰りの電車に乗ると、
仕事のことはひとまず忘れて(笑)、
こういう締切とか、いま自分が背負ってるもの、
みたいなことが気になってくるんです。
年間インデックスのページでその締切を見つつ、
1日ページでテーマや内容を考えて、
それをいつ書こうかと考えると、
結局、月間カレンダーにつながるわけです。
小山 あぁ、「えどはくカルチャー」ですね。
この館で、一般のかたを対象にした講座をやってまして、
その講師もしているんです。
この日はその講座の内容を考えてたんですね。
私がもし、うちの館長のように物知り博士だったら、
もう何もしなくてもできるんしょうけど、
自分でも勉強しながらやっているので、
電車のなかでも考えたりしてますね。
こう、かまえず書けるというか、
スケジュール管理にとどまらないで、
この1冊で考えごとができる。
そういうところがこの手帳のいいところですね。
小山 そうです、そうです。
学芸員って、だいたい専門を持っているんです。
歴史とか、民俗学とか、考古学が専門とかですね。
で、私は浮世絵が専門です。
34万点の資料のなかでも
とくに浮世絵のことを重点的に見るのが
ひとつの仕事、という意識がありますね。
小山 してますね。
その連載の取材を受けた近松の話を聞いていて、
私自身もすごく感動したんです。
日本の四季の大切さをあらためて考えたのと、
日付と気候と自分の感覚が合わないなって、
なんとなく感じていたので。そういうときに、
「日本にはもともと和暦があって」という話を聞いて、
「あぁ、なるほど」と思ったんですよ。
七夕の日が晴れないわけとか、ほんとに納得しました。
それから「満年齢早見表」、これもよく見てますよ。
小山 明治、大正から年号が載っている手帳なんて、
ほかにないですから、これは、ありがたいです。
資料には、必ず年号をつけるんですね。
西暦を年号でいうと、あるいはその逆とか、
そういうときに、
昭和と大正はだいたい覚えてるんですけど、
明治時代になるとちょっと厳しいんですよ、私。
小山 でね、私たちの取り扱っている資料って、
さらに遡った時代のものが多いんです。
だから、そう、
江戸時代まで載ってるともっとうれしいですね。
小山 ぜひ、江戸を(笑)。





*************************

手帳をきっかけに、
それまでにない色が好きになったという小山さん。
馴染んだ色の手帳もいいけれど、そういう挑戦も、
新しい自分に出会うきっかけになるかも、ですね。

さて、版画をご専門とする小山さんが
とくにおすすめの展覧会が、江戸東京博物館で開催中です。
「ボストン美術館 浮世絵名品展」

これ以上ないほど保存状態のいい名品が揃うこの展覧会、
11月30日(日)までと、会期が残り少なくなっておりますが、
お近くのかたは、どうぞこの機会をお見逃しなく。
「江戸時代のひとたちが、
色を楽しんでいたことが実感できます」
と、小山さんも絶賛です。