黄昏 た そ が れ  日光・東北編       南伸坊さんと、糸井重里。昔なじみのふたりが、始終しゃべりながら小旅行。前回は鎌倉の名所をめぐりましたが、今回は日光、松島、花巻あたりを回ります。ゆっくと変わる風景と、めくるめく無駄話。いったいいつまで続くのかな‥‥? そしてこの不思議な企画は、なんとすべてをまとめて本になるのです。いえ、ほんとの話です。
第37回 それは1976年のことだった。
糸井 そもそも、どうしてぼくが
ガロに関わるようになったかというと、
ええと、どこが最初になるのかな‥‥。
もともとはね、ぼくが、湯村輝彦さんに
マンガを描いてもらいたかったの。
で、あるときに、安西(水丸)さんを通じて
湯村さんにお願いをしてみたら、
「自分はマンガのアイデアはないから、
 糸井くんといっしょだったらやるよ」
っていうような返事をいただいたんだ。
でも、そのときまだぼくは、
糸井さんのことをぜんぜん知らなかった。
それで、どこかで会ったんだよね。
糸井 新宿で会ったんだよ。新宿の喫茶店で。
ああ、そうだっけ?
糸井 湯村さんとオレがいて、
そこに伸坊がやって来たんだよ。
おにぎりの顔をして。
30年以上前だね。
糸井 これがドラマなら、
その新宿の喫茶店の場面から
第1話がはじまるところだよ。
お、いいね。
誰が誰の役をやるんだろう。
糸井 まぁ、伸坊の役は、
伸坊以外できないだろうから、
伸坊が「本人」として。
え、そこも「本人」なの?
糸井 うん。
南伸坊は「本人」にならなくても
そもそも本人だよ。
糸井 だから、「南伸坊=南伸坊(本人)」って
クレジットされるわけだよ。
せっかくだから、誰かにやってほしいね。
糸井 じゃあ、おにぎりにしよう。
おにぎりはセリフをしゃべれないだろ。
糸井 「南伸坊=おにぎり(本人)」。
おにぎりは本人じゃない。
糸井 あのとき、オレとおにぎりは、いくつ?
ええと、たしか、1976年だから、
33年前か。ってことは‥‥28歳。
糸井 オレが27歳か。はー。
あの当時、糸井さんと湯村さんは
ふたりで絵本とか出してたけど、
オレは湯村さんにも糸井さんにも
初対面だったんだよね。
糸井 あの、新宿の喫茶店で会ったときが。
うん。
糸井 湯村さんはもう、最初からやる気だったんだよ。
当時のガロはノーギャラで、
単行本になったり、儲かったりしたら
ギャラが出るっていう感じだったじゃない?
そう、そう。
糸井 その、ノーギャラだって
わかっててやる仕事っていうのが
当時は妙に気持ちよかったんだよね。
とくに湯村さんはそういうのを
おもしろく受け取る人でさ。
湯村さんから「やる?」って誘われたから、
「もちろんやりますよ」って答えて。
で、新宿で伸坊に会うっていうから
湯村さんといっしょに待ってたんだ。
そしたら伸坊がやってきて、
打ち合わせしたんだけど、まぁ、要するに、
「なんでもいい」って話でさ。
あはははは。
糸井 最初にオレが考えたのは、
『スケベの国のアリス』っていうマンガでね。
どういうお話かっていうと、
自分のお尻に手を入れていくと、
こう、自分が、
まったく裏返っちゃうという設定なんだ。
はっはっはっはっ。
糸井 人間が、ペロンっとまったく裏返っちゃう。
そこから、話がはじまるっていうのを
考えてたんだけど、まぁ、絵も難しいし。
難しいね、それは(笑)。
糸井 ぼくにとっては絵に描けないようなことを
考えるのがおもしろかったんだよ。
で、けっきょくそれが、
のちの『ペンギンごはん』シリーズになる。
糸井 うん。
(ふつうに興味深い対談に。つづきます)

2009-11-11-WED

前へ 最新のページへ 次へ

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN