黄昏 た そ が れ  日光・東北編       南伸坊さんと、糸井重里。昔なじみのふたりが、始終しゃべりながら小旅行。前回は鎌倉の名所をめぐりましたが、今回は日光、松島、花巻あたりを回ります。ゆっくと変わる風景と、めくるめく無駄話。いったいいつまで続くのかな‥‥? そしてこの不思議な企画は、なんとすべてをまとめて本になるのです。いえ、ほんとの話です。
第10回 眠り猫の冒険。
日光といえば、
オレは、眠り猫だったときもあるんだよ。
糸井 あ、眠り猫にもなったんだ! 
それはすごい。あの、『本人の人々』で?
いや、『歴史上の本人』。
糸井 あー、『歴史上の本人』か。
『本人の人々』は、オレ、30冊は買ってるよ。
で、元気のない人にどんどんあげてた。
ははははは。
糸井 しかし、眠り猫になるのは‥‥たいへんだろ?
最初はね、左甚五郎になるはずだったんだ。
糸井 あ、なるほどね。
ところが、左甚五郎には、なりようがないんだ。
わかんねーから。
糸井 そうか、写真も肖像画も残ってないんだ。
うん。で、まぁ、
「じゃあいいや、眠り猫になっちゃえ」
ってことで、こう、ぬいぐるみを。全身の。
うちの嫁がつくってね。
糸井 猫の着ぐるみを(笑)。
ここんちの嫁はすぐつくっちゃうからね。
うん。で、その着ぐるみを着てね、
日光のあちこちで、
こっくりこっくり眠ってみたりして。
糸井 眠り猫だから。
うん。眠り猫だから。
糸井 こんな雨の日だったらたいへんだったね。
雨は降らなかったけど、雪がちょっと残ってたね。
もっとずっと寒いころだったんだろうね。
糸井 冬だったんだ。
うん。
でも、猫だから、暖かかったよ。
糸井 あー、なるほどね(笑)。
猫でよかったね。
猫でよかったよ。
左甚五郎だったら寒くてしょうがないよ。
糸井 そういうのは、怒られたりしないの?
東照宮の人たちに? いや、怒られなかったね。
ただ、外国人の観光客に囲まれちゃってさ。
糸井 催し物かなんかだと思われたんだ。
そうなんだよ。
横に並んで写真撮ったりしててさ。
糸井 ま、日光がディズニーランドだとすると、
眠り猫はミッキーマウスに当たるわけだからね。
しかたないね、それは。
参拝券を奥さんが買いに行って、
こっちで待ってるとね、
あの紅白の格好をした巫女さんがね、
「ダメじゃない、ちゃんとあっちにいなきゃ」
って、中を指さすんだ。
冗談のわかる巫女さんなの。
糸井 いいねぇ(笑)。
うん。いい巫女さんだった。
(大丈夫。もっともっと、つづきます)

2009-10-11-SUN

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