岡本太郎記念館・館長の、平野暁臣さん。 TARO MONEYに、何を願う? 2
前々回よりつづいて、
岡本太郎記念館の平野暁臣さんに
TARO MONEYについて、お話をうかがっています。


岡本敏子さんが出した、大きな宿題。

『明日の神話』の修復作業は順調に進んでいて、
予定どおり7月上旬から汐留の日テレプラザで
約2ヶ月間、公開します。
そのあとの行き先は、いまはまだ未定。
これからあの絵にふさわしい場所を見つけて、
「嫁入り」させる予定です。
まだどこからも、正式にはお話はありません。

「嫁入り」先の条件は3つあるんです。
まず1つめは、
物理的に『明日の神話』を
きちんと観ることができる場所、ということです。
屋内じゃないといけないし、
そもそも建物にあの壁画が入らなきゃいけないし、
ある程度の「引き」がないと観えないでしょうし。

2つめは、
物語があるかどうか、です。
壁画がそこにあることを
「ああ、なるほど」と誰もが直感的に
了解できるところに行ってほしいな、と思っています。
でも、その物語というのは、
住んでいるみなさんが力を合わせて
盛り上げてくださることだっていい。
つまり、これからだってつくれるんです。

もっとも大事な3つめの条件は、
「お嬢さんを未来永劫大切にします」
という気持ちをもった人が
その場所にどれだけいてくださるか、ということです。
どんなに条件がよくても
その場所に「この作品をずっと支えていきます」
という人たちがいなければ、終わってしまう。
あの作品は、何百年も生き残ってほしいから。
いくら収入があって、家柄がよくても、
「お嬢さんを大切にします」「愛しています」
というのがなきゃ、幸せになれないのと同じですね。

以上の3つの条件がそろったところに
『明日の神話』をさしあげようと思っています。
我々は、作品は、売りませんから。

この作品が発見されてから
ここまできた過程で、
ほんとうにいろんな人たちに
助けていただきました。
無償で協力してくれる人たちも、たくさんいます。
そうじゃなきゃ、できなかったですよ。
そういう思いがいっぱい
この『明日の神話』には詰まっています。
それを引き受けるわけだから、
もらうほうも、けっこう重たいんじゃないかな。
徹夜で編んだマフラーくらい、重いよ(笑)。

それに、巨大だし、あれだけの作品だから
「欲しいな」と思っても
なかなか手を挙げられないですよね。
よっぽどの覚悟と決意がないと
あんなもん、引き取れないから(笑)。
そんなにかんたんには決まらないと思います。

夏に、汐留で約2ヶ月間公開されますが、
そのあとは、嫁入り先が決まるまでは、
おそらく一旦は眠ってしまうことになるでしょう。
それがどのくらいの期間になってしまうかは、
いまはわかりません。

「『明日の神話』再生プロジェクト」は、
修復と公開で終わりなのではなく、
嫁入りさせたところで終わります。
汐留での公開は、そういう意味では、まだ半分。
TARO MONEYも、夏でその役目を終えるのではなくて、
あれを核にしたコミュニケーションの波紋を
継続して広げていってほしいし、
この先何年も、TARO MONEYは
あの壁画を支えていくことになるんだろうと思います。

この岡本太郎記念館の姿勢も
変わらなきゃいけないと思っているんです。
いままでこの記念館は、
100パーセント岡本敏子のものでした。
ここは“岡本敏子がいる場所”で、
それでよかったし、そうすべきだったし、
いまでもそうしていたいけれども、
もう泣いても笑っても敏子はいない。
ですからこれから、ここは、
みんなで太郎と遊ぶ場所にしたいんです。

ここで太郎について語りたい人や
太郎とけんかしたい人がいたらそれでもいい。
太郎と向き合って、あるいはぶつかって
生きる人たちの遊び場にしたいんです。
「自分だったら何ができるか」
「こういうふうにしたらどうだろう」という意見も
みなさんからいただきたいし、
いつか、「ほぼ日」キュレーションの日だって
つくったらおもしろいと思いますよ。
そういうところでも、みなさんといっしょに
いろんなことができるといいなと思っています。


以上で、今回うかがった
平野さんのお話はおしまいです。
ご感想などをどうぞ
postman@1101.comまでお送りくださいね。。



※できるだけたくさんのメールをご紹介したいため、
 抜粋して掲載させていただきます。


私は税金を払う方法がいいと思います。
PRという名目にすることで
「ほぼ日」がしっくりこない場所になってしまっては
ここの意味が無くなっちゃいますし。
だったら、国の規定に則って
税金を納めたほうがいいんじゃないかな?
そりゃ、全部が岡本太郎さん、
敏子さんの思いに答える為に
使われるのがベストだけど、
(しかし、40%って大きいですね。)
(妙)


「利益が薄くても価値のあることを」という
仕事をする人、素敵だと思います。
すくなくともそういう視点を
持ち続けている企業は素敵です。
信じたことを貫いた結果受けるであろう風を
しっかり受けて立って怯まない人も企業も素敵です。
どちらの結論をだしたとしても、
悩んで、検討して、出した結論だということは、
十分伝わって、理解してもらえると思いますよ。 
(うちだ)


今現在の状況を考えると
「税金を気にしなくても…」とは言えません。
「絡ませたくない」という気持ちの方が、
強くあります。
便宜上の名目なんかより、
本当に大切にして頂きたいのは"本来の目的"。
そこに賛同してくださる人々の、
目的に対する"心意気"。
(にや)


今回のTARO MONEYのような場合、
「岡本太郎が好きで、手助けしたい」という
まっさらな気持ちで
どこまでも取り組んでほしいと思います。
PRでなくてもそう掲げなくてはいけない、
という仕事も世の中あると思いますが、
TARO MONEYは、そんな考えを入れないで
大勢を巻き込んでやってもらえたら、と思います。
この『明日の神話』を応援するには、
私は税金払っても、
岡本太郎大好き!もう絶対応援したい、という気持ちで
コインを買いたいと思います。
『明日の神話』の迫力に勝るくらい気持ちが
支援するほうにも必要だと思うので。
(あろは)


「ほぼ日」のみなさんが岡本太郎さんを好きで
出発したことであり、これはPRのためではないと
購入する人は理解していると思います。
それでも、「PRであるということに決めること。」に
「ほぼ日」のみなさんが
しっくりこないようであれば、
税金に使われてもかまいません。
お財布にコインを入れて壁画を見に行ける日を
楽しみにしています。
(***blue***))


たくさんのメールをありがとうございます。
みなさんからのメッセージを読ませていただき、
いろんな方々のご意見を聞きながら、
結論を出そうと思っております。
TARO MONEYへのご意見や、ページのご感想をどうぞ
postman@1101.comまでお寄せください。

2006-04-07 FRI

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