■11月14日■
Tシャツ鼎談第3回
やりたいことが、わかっているということ。



糸井 伊賀くんは、
雑誌でのスタイリングだけじゃなくて、
舞台の構成とか、
そういうことにも興味ありません?
伊賀 この前、舞台のスタイリングをしました。
ラーメンズの小林(賢太郎)さんと、
たまたまお仕事で知りあいになって。
「今度、舞台をやるんだけど、
 それは、ラーメンズだけの公演じゃなくて、
 他の役者さんもいっぱい出てくるヤツ。
 お前、やってよ」
って、酒の席で、頼まれたんです。
「俺、絶対、ほんとやりますよ!」
って返事して。
1週間、本多劇場で公演して、
そのあと5日間ぐらい大阪でやったんですけど、
すごいおもしろかったです。
糸井 ラーメンズも、そういえば、
「出る人」というよりも、
頭ん中は「スタッフ」ですよね。
伊賀 そうですね。はい。
糸井 そういう、
「入れ替えしてもいいような子たち」
ばっかりが集まってる。
伊賀 まさに、そんなかんじですね。
糸井 スタッフ側のことをできない子が
「表現」するっていうのは、
難しい時代なのかもしれないね。
伊賀 そのとおりですね。
例えば、モデルも写真のことを
わかっていたりします。
それは、写真の技術というよりは、
「写真として何がかっこいいか」が
わかっている

ということなんです。
「俺は写真のことは詳しくないけど、
 なんかこれはかっこいいと思うよ」
とか。そうすると、
フォトグラファーの人だって、
仕事のしかたが違ってきたりする。
糸井 昔はそういうのって、
はっきり分業してたもんね。
秋山 伊賀くんは、
自分で写真を撮ったりしないんですか?
伊賀 僕は、スナップ的に撮ったりはしますけど、
まじめに撮ろうとは思いませんね。
秋山 けっこういますもんね、最近、
スタイリストやヘアメイクで
「写真も撮るんですよ」っていう人。
伊賀 それは、自分のいる現場の
完成形なり作品について、
「わかってる」「わかってない」
「考えてる」「考えてない」
というのとは、別のことですね。
基本的に僕は
餅は餅屋だと思ってるんで、
スタイリストはほんとに
スタイリングだけやってればいいのにな、って
思ったりするんですけど。
秋山 そういう気持ち、わかる(笑)。
伊賀 才能がほんとにあって
両方できる人っていうのは、います。
それはいいと思うんですけど、
片手間にやるのは‥‥。
スタイリストが洋服をつくったりするのも、
僕は、どうかなぁ?って思ってますよ。
糸井 へぇ。つくりたくはならない?
ぜんぜん?
伊賀 たとえば、「こういうのが欲しいな」って
思うことはあるんですけど、
まずは、それを「見つけてくる」のが
楽しいと思ってます。
でも、どうしても
イメージしているものがなかったら、
1点だけ、洋服屋さんの友だちに
「つくってよ」と、頼む。
でも、それを量産することになったとしたら、
また話は別で。
その場合にはまず、「お金」の問題が
発生するでしょう。
その時点で、もうぜんぜん、
自分の「好きなもの」からかけ離れちゃう。
秋山 商業ベースになると、
いろんなことがぶら下がってくるもんね。
伊賀 そうなんです。
「これつくろうよ」って言って、
「じゃあ雑誌で出して、
 若い男の子たちに買わせて」
みたいに進んでいく。
そこは、ぜんぜん、ぜんぜん、
自分の出発点からずれてるなって思う。
秋山 なんか、スタイリストっていうところから、
社長みたいになっちゃう人が、
最近けっこういるよね。
それこそ、ほんとに雑誌とかで
「はやってるから」って言い聞かせて
若い人に買わせて、という、
うまいサイクルをつくっている人たちが、
何人かいる(笑)。
糸井 いやいや、それはいますよ。
メディア持っててタレント持ってるんだから、
やり放題だよ。
伊賀 それは、みんなが
ほんとにかっこいいものに飢えてて熱狂する、
というかんじではないですよね。
「これがはやってるから」っていうことだけ。
たとえば、ビートルズが昔来たときに、
「これはすっげー!」みたいに
みんなが思った感覚とは、やっぱ違うと思う。
糸井 違いますね。うーん。
伊賀 だから、ちょっとそれは、
どうかな?と思って。

(つづきます!)

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