オリジナル・ラヴの田島貴男といえば、
泣く子も黙る、サウンドのクオリティと歌唱力。
そんな「こわいものなし」にみえる田島さんが、
TAROの文庫本をボロボロになるまで
読み込んでいるという噂を聞きました。
以前ケーキづくりが趣味だったという田島さんに、
岡本太郎記念館の庭にあるカフェ
a Piece of Cake
お話をうかがうことにしましたよ。


第6回
いつになったら、まともなものを書けるんだ?


田島 僕らの上の世代は、黙っていても
岡本太郎さんとか、三島由紀夫さんとか
寺山修司さんがいらっしゃったので、
すごくうらやましいなと思うところがあります。
同じ世代で岡本太郎さんとか
寺山修司さんみたいな奴らがいたら
俺、もう、どうしよう(笑)?
もしいまそんな奴がいたら、
自分はもっとテンション上がるのになぁ。
── 時代のせいだとも言われるんですが、
60年代70年代以降の生まれで
オピニオンリーダーと呼ばれる人たちが、
若者に至るまでなかなか出てこない
現状があります。
やっぱり、TAROの時代の、
いま老人になっている人たちの言葉でしか
人びとを引っ張っていけなく
なっているのでしょうか。
田島 うーん。だから、きっと
バカがいないんですよ。
ふつうのバカじゃダメだよ、
「とことんバカ」でないと!
僕もそこまで、
理想であれば行きたいけどね。
もうね〜、
レスラーみたいなミュージシャンとか(笑)。
── でも、そうとうな決意がないと
「すばらしいバカ」を続けていけないような
気がするんですけど。
田島 岡本太郎さんは、
特殊な子ども時代を送られているし、
精神的にサバイバルな状態だったんでしょう、
そうしないと生きていけないというところが
あったと思うんです。
決意というより、そういうことの連続で
できあがっていったものなんじゃないかな。
でもね、せっかく生きてるんだから、
せいいっぱい生きないと
もったいないじゃないですか。
── 「“犬生き”ということはある。
 でも“犬死に”ということはないんだ。」
田島 そうそう。
── そううかがうと、
田島さんのこれからの活動、ワクワクします。
田島 いやー、どうでしょう(笑)。
自分のことについてはまったくわからないですよ。
── 田島さんは、曲を
驚くほどたくさん
つくってらっしゃいますよね。
田島 多作なんですよ、けっこう。
作曲家という肩書きでたくさん書く人は
けっこういますけど、
シンガーソングライターとして多作だということは
わりと自慢できるんです。
12年間で11枚アルバムをつくってますからね。
── はー!
アレンジからぜんぶなさって、ですよね。
田島 そこは、ちょっとね。
なんにも取り柄がないんですけれども、
「たくさんつくったな」ってとこだけ。
── TAROも出し惜しみをしなかったし
頼まれ仕事みたいなことも
どんどんやっちゃいましたね。
田島 そうですよね。じつは、
頼まれ仕事ほどクリエイティブなことって、
ないんですよ。
── でも、枠があったり
決めごとがあったりするから。
田島 いや、そっちのほうが、
やりやすいんですよね。
自分のアルバムつくるのが
いちばんむずかしいもん。
どこが自分の枠なんだがわかんないですからね。
アルバムのはじめの3、4枚目くらいまでは
自分の書きたいことがあるんですけれども
5枚目くらいからだんだんきつくなっていくんです。
さあて、俺はやることやりつくしたぞ、
みたいなかんじになってくる(笑)。
── このあとどうする(笑)?
田島 もう〜、まったくね、
ひーやひやしてんですからね。
どーぉすんだよ
みたいなかんじですからね、いつも。
でもね、『自分の中に毒を持て』のなかに
書いてあるんですよ、
未熟だというのは甘えだ、というようなことが。
── しかし、そのほうが、
はるかにふくれあがる可能性があるとも
書いてありますね。
田島 そうそう!
ほんと、そのとおりなんだよ。
やっぱり、腕っぷしが最初から
ただ強い人というのは、
そんなに強くなれない気がします。
そこは結局スタートラインでしかなくて。
そのうえで何かを得ていく。
音楽もそうなんですよ。
僕も音楽を職業に選んだくらいですから、
子どものときはクラスで
いちばんぐらいでしたけれども、
なにも考えずにただ「好き」でやっただけ。
そこから先は
才能だなんだかんだじゃないんだよね。
── 田島さんは、才能を武器に
先頭を走ってこられたような方だと
思っていたんですが。
田島 ぜんぜん!
俺は、「あいつ、あいつを抜きたい」って、
いっつもそんなかんじでしたよ。
自分ではずっと低空飛行のイメージです。
自分に才能がないのが、コンプレックスですね。
── えぇ〜?! そうなんですか!
田島 「やっと飛んでるんだ、俺、ここまで」
ってかんじ。ほんとですよ。
── あんまりほかを気にしないくらい、
疾走しているイメージでした。
田島 すっごい誤解です。
でも、うれしいな、
誤解されてるんだ、俺も(笑)。
ほんとはね、たとえば、
「民生、このやろう。売れてるな、あいつ」
とか、思ってた(笑)。
去年、(奥田)民生くんと
ステージでいっしょになって、
10年ぶりくらいに会ったんですけれども、
終わったあと、ちょっと飲んで話をしたんです。
そしたら、民生くんのほうから、
「俺、おまえのこと、消えてほしいと思ってた」
って言ってくれてね。
すっげーうれしかった。
── おお、それはすごい!
田島 すごく驚いたんですけど、
ほんとに感動しちゃって。
「ああやっぱ、すげえな、こいつ」
って思いました。
ありがとうって、気持ちのなかでそう思った。
だからね、俺は才能なんてなくて、いつも
「やばい、曲つくんなきゃ!」
って思ってるかんじです。
いつになったら
まともなものを書けるのかなって思ってる。
── そんなこと、これまではあまり
お話しになったことないですよね?
田島 う〜ん、そうかな?
いま、そういう話になったから、たまたま。
せっかくですから、載せてくださいね。
── はい、ぜひ。
田島 CDも、がんばってつくったんで、
聴いてほしいけど
「いまの俺ではここまでだったな」って
毎回感じるんです。
「まーた、できなかったよ」
「一枚ぐらい名盤と言われるものを
 つくりたいな」と。
だからこそ、
それを糧にして曲を書こうとするわけです。

(1月6日火曜日に、つづきます!)

a Piece of Cake
おすすめののみもの

ティー・オ・レhot
600円

a Piece of Cake

岡本太郎記念館の庭に面したカフェです。
庭にあるTARO作品を眺めながら
おいしいお茶やケーキをたのしめます。
※記念館に入館しなくても、カフェに入れますよ。
 お散歩がてら、気軽に入ってくださいね。

2003-12-26-FRI

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