第3回
岡本さんはビビッビビッと、発信してる。

── そんな「だささ」が
TAROとつながっていくんですね。
みうら 「とんまつり」とか、
誰も買わないような
「いやげ物」とか集めてたら、
やっぱ、岡本太郎に行くんだよね。
なんか「ださくてもいいじゃないか!」
って言っているようなかんじなんだよ。
── むしろ、「ださい」ほうがいいって
言っていますね、きっと。
みうら 東京ってさ、「ださい」ものを
排除してるんだよ。
それから、東京はね、
発表はしているけど、
発信はしていないかんじがする。

でも田舎って、行くと、
やたら発信してんだよぉ。
鹿児島駅降りて、ちょっと歩くと
ものっっすごい巨大な
西郷どんの像がたってるんだけど。
── (笑)はい。
みうら いや、でかい人なのは知ってるけど、
そこまででかくする必要は、ないんだ。
── (笑)等身大以上なんですか?
みうら うん、もう何十メートルだよ(笑)。
西郷どんが腕組んでるんだけど、
下行くと、もう西郷どんの顔が見えないわけ。
だから、意味がないんだ(笑)。
ものすごっい発信してんだけど、
誰もキャッチしてないんですよ、
地方のものって。
── せっかく発信しているのに、
受け取る側がキャッチできない力のなさ。
どうしてなんでしょうか。
みうら あ、それはださくないからだよ。
ださい人は、発信がわかるんですよ。
東京に来て「ださいのはもてない」と思って、
俺は、一所懸命に垢を落としたんだけど、
やっぱりさあ、宿便みたいについてんだよね、
「だっさーい垢」が。
だから地方に行って、西郷どんとかに会うと、
ピピっと来るものがあって、
キャッチできるんだよね。
── 「ださい」を知っている者同士が。
みうら よくわかるんだ。
岡本さんもパリに行って
最先端なものに触れた人だけれども、
沖縄のような、土着の、
あんまり手が加えられていないものに
グッとこられたんだね。
それは、岡本さんが、
沖縄の発信しているものを
キャッチできる力をもっていたからだと
思うんですけれどもね。
ところで最近は、
キティちゃんのおみやげものが
全国にあるでしょう。
── キティちゃんに限らず、
その土地の有名な観光地や産物に
キャラクターがくっついて
グッズになっているものが
よく売られていますね。
みうら 最近は、そのせいで、
貝細工とかヤシの実人形とかが
裏にやられちゃってねぇ、
ほこりかぶって隅に並んでたりするんだけど、
ビビッビビッ!!って
音がするときがあって(笑)、
行くとね、いるんだ、そいつらが。
── ‥‥ヤシの実人形って、どんなのですか?
みうら ヤシの実でできてて、
手がガラモンみたいになってて
ポパイとか、バックスバニー、
ミッキー、グーフィと、
5体くらいあるんだよ。
── それ、買ったんですか。
5体全部?
みうら うん。
そういうのを
ワンルームマンションとかに置いてごらんよ。
もんのすごい「発信」してるから
違和感があんだよね。
女の子の部屋に呼ばれて、
そんなもんが5体勢ぞろいしてたら
男は引いて帰ると思う。
それくらい
インパクトがあるってことだから、
太郎さんの作品と似てる、って
ことなんだ、きっと。
── 「なんだ、これは!」ってことですね。
みうら うん。それはたぶん、
「ださい」っていう言葉で
つながってるような気がするんだ。
── TAROはそういう意味で「ださい」からこそ
近づきにくい作家だと
思われてきたのかもしれませんね。
きれいでうまい人じゃないから。
発表ではなく、発信の人だったんですね。
みうら そうだね。
地方に行ってゆるーいみやげもんとか
ゆるーい祭りとかをみていると、
岡本さんと同じものを感じるんだよね。
俺、「ゆるキャラ」ってのもやってるんだけど、
地方のゆるーいキャラクターは、
似てるもん、すごく、岡本さんのに。
いろんなものくっついてるんだ、
キャラクターに、特産物とかが。
── ははははは。
みうら ものっすご、似てるんだよね。
「太陽の塔」だって、
太陽がついて、月がついて、
いろんなものが合体しているかんじがするよね。


「太陽の塔って、動くとしたらこうやって、
 手を前後に振って歩くよね」
── なるほど。
みうら 「芸術」って言われるとわかんなかったけど、
「ださいもの」って思うと、
ものすごくよくわかるんだ。
「ださい」ってことを、
悪い意味で取る人もいるかもしんないけど、
いいとか悪いとかじゃないんだよ。
── TAROが子どもに大ウケするのにも、
そのあたりに秘密があるような気がしますね。
みうら そうだよね。
子どもって、やっぱ、
だっさいもの、大好きなんだよ。
── 社会的にどういう価値があるかを
ぜんぜん考えずに、
好きだの嫌いだのを言えるからでしょうか。
みうら そのヤシの実人形も、
けっして「みやげ」にはならないんだ、
人が喜ばないからね。
でも、インパクトはあるんだ。ものすごく。
── あるんでしょうね(笑)。
みうら でも、青山だの原宿だのにあるものって、
どこにもインパクトがないじゃない?
それはやっぱりださくないからだよね。
だけど、地方から出てきたとき、
自分がださいの、嫌だからさ。
方言も使わないようにして、
おしゃれな服を着て、
みんなのなかに溶け込もうとするんだけど、
それは嫌だったんですよ、岡本さんは。
── パリにまで行って、沖縄に戻ってきた。
嫌だったんですね。
みうら だって、『日本再発見』でしょ?
「再」って言ってるところに、岡本さんの
なにかが込められてるような気がするな。
俺も、結局「再発見」だったんだ。
やっぱり一回は
「ださい」ものを落としたいからさ。
でも、いくら落としても、
残っちゃってたんだよね。
── 芸術は「ださい」。
みうら そう。考えてみると、芸術家って、
みんなすごく「ださい」よ。
けど、いまのアーティストってださくないから、
街歩いててもわかんないんだよね。
前はね、「あ、芸術家が歩いてる」って。
── わかったんですか?
みうら 前は、いたよ(笑)!
クマさんみたいな人さ!
── ああ!
みうら あんな和服着て、マフラー巻いたりしてたら
「あ、芸術家だ!」と思うでしょ。
「なんだろうなー?」
と思うしかないような人が、
阿佐ヶ谷とかに、よくいたもん。
そういう人がたまに原宿とかに出てきて
もーのすごい違和感放って、
また中央線に乗って帰っていく(笑)。

(来週の水曜日に、つづきます!)

2003-11-12-WED

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