野球の人。  〜田口壮、21年目の選択〜
 


糸井 田口さんの肩は、手術をして、
治るんですよね、おそらく。
田口 治るとは思います。
でも、100パーセントに戻るかどうかは
ちょっとわからないです。
糸井 あ、そうなんですか。
田口 はい。
いま、野球のケガのなかで、
いちばん治りづらいのが
肩だといわれてるんですよ。
逆に、肘は、100パーセントに近いくらい
治るだろうといわれてて。
糸井 へぇーー。
田口 肩は、なかなか、
100パーセントは戻らないっていう。
糸井 でも、その状態で、現役を続けて、
球団からのオファーを待っている。
田口 はい。
糸井 それについては、なんていうんだろう、
うれしいだの悲しいだのじゃなくて、
もう、どういうものなのか‥‥
似た気持ちはありますか、
いままで味わったことのなかで。
田口 うーん‥‥似た気持ちは、ないですね。
糸井 はじめてですか。
田口 はじめてですねぇ。
だから、どうなるかわかんないんですけど、
完璧に仕上げようとは、思ってます。
糸井 あぁー、いいなぁ。
それは田口さんの美意識ですよね。
田口 はい。治します。
糸井 それは、すごいことだなぁ。
田口 結果がどうなるかまったくわかんないですし、
まぁ、いってみれば、
ここまま引退することになるかもしれない。
糸井 それは当然、頭の中には‥‥。
田口 あります。
糸井 ありますよね。
馬鹿じゃないんだからね(笑)。
田口 (笑)
糸井 いや、そう思うんですよ。
つまり、ただただ無邪気に、
いまの道を選んでいるわけではない。
田口 いや、そういうわけにはいかないです。
このまま50歳になっても60歳になっても
生涯現役、みたいなことを言うつもりはない。
糸井 そうですよね。
たぶん、威勢のいい野球ファンは、
田口さんにそういうことを
求めちゃうのかもしれませんけど。
田口 (笑)
糸井 なんていうか、治したからこそ
あきらめられることだってあるだろうし、
治したからこそ、違う場所に生まれる
仕事なんかも想像できますもんねぇ。
田口 そうですね、はい。
だから、まずは、どうしても治したい。
完璧に仕上げました、というところまで行って、
そこからまたちょっとずつ積み上げていこうと。
糸井 リハビリを終えて、
完全に動けるようになったら、
どこかのテスト受ける
みたいなことになるんでしょうか。
それともなにか別の方法があるんですか。
田口 うーん、方法としては、まぁ、
テストを受ける方法もありますし
どこかから声が掛かる可能性もありますし。
糸井 それは、今シーズンのことですよね。
田口 そうです。
だから、早くてもシーズン途中
という感じになってくると思います。
糸井 ああ、そうか、そうか。
つまり、また失礼な言い方をしてしまいますけど、
レギュラーとしてではない、はじまり方を。
田口 はい、たぶんそうなるでしょうね。
シーズンに入ってから
選手を必要とするっていうのは、
チームになにか欠点があって、
なんらかの補強をしなくてはいけない、
というようなケースになってくると思います。
糸井 つまり、なんでもいいから
すごい選手がほしい、っていうよりも
「いま、田口っぽいものがほしい」
っていうようなチームですよね。
田口 はい。
糸井 そういう位置にいる田口さんというのは、
たいへんですけれど、おもしろいですね。
田口 そうですね(笑)。
糸井 打つ、走る、守るの機能だけじゃなくて
「おまえがほしいんだよ」
って言われるような場所を、
田口さんはいままで少しずつ
積み重ねてつくってきたわけで。
それは、すてきなことだと思いますよ。
田口 ありがとうございます。
糸井 そういう人でありたいですね、やっぱりね。
田口 かたちはどうであれ、やっぱり、
「必要だ」って言われる選手でありたいですよね。
糸井 そうですね。
前に聞いた、バントの話でもねぇ。
やっぱり「おまえだからな」って
言われるよろこびですよね。
田口 そうですね、はい(笑)。
フィリーズにいたときも、
いつも「ベンチに座っとけ」って
言われてましたからね。
糸井 はい、はい(笑)。
田口 レギュラーじゃないんだけど、
「いるだけでいい」っていう、
そういう状態でしたし。
糸井 それは誇りですよね、田口さんの。

(つづきます)

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2012-04-17-TUE

 
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