王シフトに対するときの王さん

わぁ、古い話ですね、これは。
ええとですね、いまソフトバンクの監督で
868本というホームランの世界記録を持っている
王貞治さんは、全盛期には
めちゃめちゃ打ったんです。
もう、どこに投げても打たれるぞというくらい。
それで、相手チームは工夫しまして、
ある日、守ってる野手を、
ライト方向に極端に寄せて守らせたんです。
当時、王さんはライト方向に
引っ張ることが多かったので、
それに対応したわけですね。
ところが、そうすると、レフト方向を
守る人の数が少なくなってしまいます。
だから、レフト側にチョコンと打てば、
全部ヒットになっちゃいます。
でも、「それでいい!」と
相手チームは思ったんです。
だって、王さんにホームランを打たれるより、
「ヒットで済む」ほうがうれしい、と。
これが、有名な「王シフト」です。
で、この「王シフト」を前にしたとき、
王さんがどうしたかといいますと、
「レフト側にチョコンと打つ」なんていうことは
ま〜ったく考えなかったんですね。
そのときの王さんの心構えとしては
「ライトスタンドに放り込めば
 王シフトもなにも関係ないぞ」と。
つまり、自分の野球を貫いたというわけです。
いや、すごいんですよ、王さんは。