テレビファン ぼくら、テレビが大好きだから。   鈴木おさむ─────糸井重里
放送作家の鈴木おさむさんと、 こころゆくまで話したかったのは、やっぱり テレビのなかのいろんなこと。 放送作家って、どんな仕事? どんな人と出会う? ターニングポイントになった出来事は? あの人のこと、いつもどう思ってた? 「テレビ大好き」のふたりがくり広げる、 いまのテレビと、これからと、 テレビの世界のたくましい人びとについて!
鈴木おさむさんプロフィール
第1回 ずっと納得いかないけれど。
糸井
ふんんーふふーん、ふんふーん(鼻歌)。
鈴木
(笑)
糸井
鈴木さん、今日は
おいでくださって
ありがとうございます。
鈴木
よろしくお願いします。
いま、歌ってらっしゃいましたよね。
糸井
すみません。いま「ほぼ日」で
歌をテーマにコンテンツ
はじめたところなんです。
ラジオのトークコーナーにも毎週出てまして。
鈴木
そうなんですか。
糸井
恋の歌って、たくさんあるんだけど、
どういう感じで作ってるのかな、って
考えてたんです。
むかし、武田鉄矢さんが、
シンガーソングライターが
恋をしてるかどうかはすぐわかります、
というようなことを
おっしゃってたんですけど、
歌って、そういうことが
やっぱり出ちゃうんですね。
 
鈴木
あ、ぼくもそれは聞いたことがあります。
ある女性アーティストが
芸人さんとつきあってまして、
そのアーティストは、
気持ちを歌詞に書いちゃうんですって。
芸人さんのほうは、
やめてほしいと思ってたそうです。

だけど、やっぱりそのアーティストは
書いちゃうらしいんですよ。
あきらかに、恋をしてるときだけ、
作風が変わる。
そういうもんみたいですね。
糸井
そうか‥‥、やっぱりね、
「作る動機」って
あんまりいっぱいはない、って
ことだよね。
鈴木
いやぁ、もう
わかりやすいですね(笑)。
糸井
ですよねぇ?
鈴木
松山千春さんが、むかし、
抱いた女の数だけ歌ができるって
おっしゃってたんですが。
糸井
ああ、うん、うん。
鈴木
ただ、いい女がいい歌に
なるわけじゃないって
おっしゃってました(笑)。
すごいなと思いました。
 
糸井
なるほどねぇ(笑)。
そういう意味では
抱き「そう」になったのもふくめて、
全部が、歌になりますよね。
鈴木
そうですね。
ほんと、そうですね。
糸井
そういうのって、物語にもなっちゃうからね。
不倫なんていうのもそうです。
‥‥不倫といえば、いま、テレビ番組は
どんどん規制が厳しくなってるでしょう?
話が急にテレビに行って
申しわけないんですけど(笑)、
つまり、街なかの撮影で、
「もしこのなかに、不倫してる人が
 まぎれてたらどうするんだ」
ということで、一般の方の顔を
映らないようにしたり‥‥。
鈴木
はい。
糸井
ほとんどの人は不倫してないんだけど、
してる人がいたら、ということで
消さなきゃならないんですよね。
鈴木
そうですね。
どうして消さなきゃいけないのかと言えば、
そういった、不倫をはじめとする
「事故」のためです。
べつに、テレビに映っても
みんなはそんなにいやじゃないです、
ほんとは。
糸井
いやじゃないと思います。
少なくとも、映っても、
たいしたことじゃないです。
鈴木
そのあたりのことについては、
ぼくもずっと納得いかなかったんですが、
「事故」のことを言われると、
カットせざるを得ません。

ちょっと別のことで言うと、
ぼくらが子どもの頃、
「志村」という名前の子が
みんなから「志村、志村」と
いじられたりしてました。
ぼくも名前が「おさむ」なんで、
友だちから「ぼんちおさむ」と言われてました。
ですから、ぼくらが考えるコントキャラの名前で
いじめられた子どもがいる、
なんてことを聞くと、
どうすりゃいいんだ、
ということになります。
糸井
うん、うん。
鈴木
その子の親から、手紙や電話が来ます。
そんなこと言ってたら
キリがないな、と思ってたので、
ぼくらはちっともやめなかったわけですよ。

でも、あまりにも何度も電話が来るので、
ある日、局のスタッフが
その子の親と電話で話したそうです。

そして、こっちの理論を
堂々と言おうとしたんです。
「テレビはあなただけのために
 作ってるんじゃないです」
って。
糸井
うん、うん。
鈴木
でも、その父親から直接
「うちの娘がいじめられてるんです」
という話を電話口で2時間聞いたあと、
会議に出てきて、
そのスタッフは
「その名前を使うのはやめよう」って
言ったんです。
糸井
ああ、そうなんだ。
鈴木
直接聞いちゃうと、そうなるんです。
それから、こう言ってました。
「オレはもう決めた」
「今後、こういう電話や意見は、
 一切聞かない」
ひとりの人に直接言われてしまうと、
何百万人に向けて作っているものを、
必ずやめなきゃいけなくなるから。
 
糸井
うん、うん。
一対一になってしまうんですね。
鈴木
そうなんです。
人と人、という考えに
なってしまうということに気づいた。
だから、やめるって言ってました。
糸井
そういう意味では、ぼくは
一対一と大勢とを、
毎日両方見てるようなところがあります。
メールだって読みますし。
鈴木
そうですよね。
糸井
そこのところは、
ずーっと、治らない虫歯みたいに
シミシミしてる部分です。
 
(続きます)
2010-07-27-TUE

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更新のもくじ
第1回
ずっと納得
いかないけれど。
2010-07-27-TUE
第2回
最初の男で
運命が決まる
2010-07-28-WED
第3回
クイズ書いては
雑用、の毎日。
2010-07-29-THU
第4回
そいつらが頭を
下げるくらいに。

2010-07-30-FRI
第5回
カメラを見るのが
怖いだろ?
2010-08-02-MON
第6回
無限の広がりを
表現する人。
2010-08-03-TUE
第7回
人が無責任に
求めるもの。
2010-08-04-WED
第8回
巻かれずに
生きていく。
2010-08-05-THU
第9回
誰が決定した
人生だ?
2010-08-06-FRI
第10回
尊敬しても、
感謝せず。
2010-08-09-MON
第11回
誰からも
同情されない傷。
2010-08-10-TUE
第12回
テレビが大好き。

2010-08-12-WED