かっこいい、 草刈さんと周防さん。
第11回 敬意を見せる。
糸井 いまは、バレエの話をしていますけど、
これはバレエのことだけじゃないですよね。
周防 ええ、バレエだけじゃないです。
ほかにもあてはまることで。
糸井 いろんな話をするといろいろにならなくて、
ひとつだけの話をすると
いろいろになりますね。おもしろいなぁ。

周防さんのやってることに
共感できる理由が
今日はずいぶんありました。
断られることを必ず覚悟していることや、
意図した表現をしようとしないで
相手を立てていこうとすること、
そのあたりもずいぶん腑に落ちました。

草刈さんからバレエについて
聞いたことも同じでした。
自我で競争していくことで描けないものが、
これからどんどん描きたくなる時代です。
そのときの材料に
今日の話が、ものすごくなると思ったなぁ。

『ダンシング・チャップリン』という作品は
「すげぇだろう」と言うのには
むずかしい映画です。
「さぁ、すげぇだろう」って、
鳴り物入りで持っていっても
「どこが?」という人がいるのが
いまの文化です。
どこが、って言われたら
なんだって困っちゃいますよ。
「気に入った人は絶対おもしろいよ」
そういうものこそが尊ばれるべきだと思う。

ところで草刈さん、
やめるしかないものなんですか、バレエって?
草刈 ないですね。
糸井 あぁ、それはそのひと言でいいですよ。
草刈 (笑)
糸井 それは「いまだ!」と
自分で決められるんでしょうか。
草刈 外国の劇場には定年というものがあって、
パリのオペラ座なんかは、
男性が45歳、女性が40歳と聞きます。
エトワールという、スターの人たちは
オペラ座で踊れなくなっても、
ゲストとしてどこかで仕事をしつつ
時期が来たら引退することが多いようですが。
糸井 あの主役のチャップリンをやったルイジさん、
「年は言うな」とおっしゃるところから
映画がはじまってましたけど。
周防 そうなんです、あそこだけちょっと
嫌がられるだろうなぁと思って、
ぼくはルイジさんに手紙を書きました。
つまり、なぜ年齢を言うシーンを
映画に使ったかという説明の手紙です。

『ライムライト』は、
チャップリンが62歳で作った映画でした。
チャップリンがあの映画に
自分を投影しているのは明らかで、
あの映画の「去りゆく老芸人」は
チャップリン自身なんですよ。

ルイジは60歳。
あの『ライムライト』の老芸人に
ルイジが重なります。
だからこそ、いま、
この映画を撮る意味があると思いました。
最後のシーンで、一本道を歩いていくルイジは、
ぼくの中では
『ライムライト』の老芸人そのものです。
「だから、60歳って言うところは
 どうしても使いたかった」
という手紙を書きました。
糸井 それで、しぶしぶオッケー?
周防 いや、しぶしぶじゃなくて、
「わかった」って。
草刈 ルイジさんは、
あれだけの表現をする人だし、
美意識がものすごく高い人です。
その彼が、年齢を言っているところが
公になるわけですからね。
周防 あれも、実は、
ぼくが年を訊いてるわけじゃないんですよ。
ぼくがいないときにカメラが回ってたんです。
テープを観るまで、あの画があるのを
知りませんでしたから。
糸井 なるほどね。じゃあ、周防さんは、
礼儀正しい好青年として。
周防 青年じゃないですけど(笑)。
糸井 失礼な話は全部カメラマン、と(笑)。
周防 そう。若い人が。
糸井 若い人たちが。
周防 やった。
一同 (笑)
草刈 これまでいろんな国の
アーティストとも接しているので、
彼らがどれだけ気むずかしいかも
よくわかっているんですよ。
ちょっとしたひと言がけっこう大変なことに
なっちゃうこともあります。
ですから、接するときには
最大限の注意を払って、と
思っていたと思います。
周防 ただただ心の中で尊敬してるのって、
国籍も違うはじめて会うような人たちには
なかなか伝わりません。
敬意をほんとうにきちんと表さないとね。
あの‥‥俺、さっき、
話の腰折ってなかったよね?
大丈夫?
草刈 大丈夫、大丈夫。
糸井 あぁ。周防さん、
いまも、注意を払って‥‥(笑)。
周防 いや、はい(笑)、ちょっと気になって。
糸井 日本でずっと育ったんだから
得意なことではなかったはずですよね。
バレエの文脈の中で覚えていったんだね。
周防 なんだか自分が年を取ってくると、
わかってくる部分がありませんか?
つまり、長くやってきた人にはそのぶん
生きてきた歴史が
ちゃんとあるんだと実感できるようになる。
糸井 あります、あります。
周防 そうすると、どんなにすごい、
いやだなと思う人にも、
糸井 いやだな、と思う人にも(笑)。
周防 露骨にいやだとは見せられない。
人として、きちんと最低限の敬意は
払おうと思います。
(つづきます。次は最終回!)
2011-07-07-THU
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HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN