経済はミステリー。
末永徹が経済記事の謎を解く。

第16回 ネットは一人勝ち?


つまり、ヤフーは広告代理店である。
電通やテレビ局のライバルだ。
世の中全体で宣伝に使われる費用が急激に増えない限り、
ヤフーが儲かれば、電通やテレビ局の経営が苦しくなる、
という関係にある。

そして、宣伝を載せる媒体として、
テレビとインターネットのどちらが魅力的か?
少なくとも、現在までのところ、明らかにテレビである。
インパクの宣伝をテレビでやるのは、象徴的。

一年前のネットバブルの絶頂期も、
「あなたは、近い将来に、
 世の中のほとんどの広報活動が
 インターネットを媒体にして
 行なわれるようになると思いますか?」
と質問したら、
「イエス」と答える人は少なかったと思う。
あの頃ヤフーの株を買うことは、
そういう未来に賭けるようなものであった。
 
でも、当時は、
「もしかしたら、そうなるかもしれない」
という狂おしい熱気があって、
ネットバブルを膨らませた。
ただ、「イエス」と答えた人たちも、
「それでは、テレビ局はすべて潰れてしまうのですか?」
と聞かれたら、考え直したのではなかろうか。
みんながそういう冷静さを取り戻して、
ネットバブルはあえなく崩壊した。

ヤフーが広告代理店なら、楽天は、
「零細な製造業者に売り場を貸す」小売店。
「デパートの諸国名産展」と何も変わらない。
 
ただ、テレビ局の場合と違って、
「デパートがほとんど潰れる」ことは、もしかしたら、
ありそうですね。でも、だからといって、楽天が
「諸国名産展」という商売を独占することにはならない。
もし楽天が大儲けしたら、次々と
同じ商売をやる企業が現れるだけである。
 
これは、ヤフーと楽天に共通して言えることであるが、
「ネットは早い者勝ち、ネットは一人勝ち」
という妙な迷信がネットバブルを煽った。
 
多分、
「ネット=通信=電話=独占」
あるいは
「ネット=メディア=(地上波)テレビ=寡占」
という間違った連想が働いたのだろう。
しかし、電話と地上波テレビは、
国から免許をもらった人しかやれない規制産業だから、
独占、寡占の体制になったのである。
ネットは、まったく逆で、誰に対しても開放されている。
 
もうひとつ、
「ネット=パソコン=マイクロソフトとインテル」
という連想も働いたかもしれない。
しかし、マイクロソフトもインテルも、
単に、非常に優れた企業であったから
ライバルを圧倒しただけである。
楽天が小売業者として
非常に優れた企業であると判断する根拠は、
当時も、今も、まったくない。
 
いまさらネットバブルを
「あれは、バブルだった」と言うのも気がひけるが、
ここを整理しないと先に進めない。
「インターネットが普及する」ことと
「ヤフーや楽天が儲かる」ことは、別。
「ヤフーや楽天の株を買った人が儲かる」ことは、
まったく、無関係。
 
次回は、
「インターネットはどのように普及すべきか」
について、僕のささやかな意見を。

2001-04-21-SAT

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