経済はミステリー。
末永徹が経済記事の謎を解く。

第15回 なぜヤフーや楽天は儲からなかったのか(1)


アメリカのヤフーの経営が苦しくなって、
3510人の社員の12パーセント、
420人のクビを切るという。
2001年の売上は、
95年の創業以来はじめて、前年度を下回る見通し。
 
「IT」、「ネット」、「Eなんとか」などと
言われる現象は、次の三段階を
はっきり区別して考える必要がある。

1)それが私たちの生活に与える影響
2)それに関わる企業の業績
3)その企業の株価

3)の意味で、ネットバブルは明らかに崩壊した。
ヤフーの株価は、二〇〇〇年三月から
二〇〇一年三月の一年間で、九十パーセント下落した。
株価が10分の1になったのである。

しかし、それは、2)の意味で、
ヤフーがダメな企業になってしまったことを
意味するわけではない。
ネット企業の株価は、もともと、
業績を無視した高値で取引されていたのだから。
ただ、人々がヤフーの業績に対して抱いていた
ものすごい期待が剥げ落ちた、と言うことはできる。
実際、ヤフーの業績は悪化して、
人員削減に追いこまれた。
 
だからといって、1)の意味で、
ネットが私たちの生活にとって無用になったと思う人は、
ほとんど、いないであろう。
インターネットが私たちの生活や考え方に
大きな変化をもたらすという意味での「IT革命」は、
多分、今も進行している。
「革命」であるから、反対勢力もあるし、
「反革命」の動きもあるだろうが。

ともかく、3)の意味でネットバブルが崩壊し、
2)の意味でネット企業が苦戦していることは、
1)の意味での「IT革命」とは、
まったく、無関係である。
それをはっきりと押さえた上で、
まず、ヤフーや楽天の株価がなぜ暴落したか、
つまり、人々はヤフーや楽天に
どういう勘違いな期待を抱いて株を買ったのか、
考えてみよう。
 
ヤフーについて。
世界中の人がパソコンを買って、
毎日、インターネットに接続するようになる。
そのホームページ
(インターネット接続ソフトを起動した時に現れる画面)
は、みんな、ヤフーのサイトだ。
何十億人という人が毎日サイトを見るのだから、
さぞかし、儲かるに違いない・・・
というところであろうか。
 
僕は、あまり、ネット業界のニュースに
明るくないので断言はできないが、
「ヤフーのサイトを大勢の人が見る」
という期待そのものは、
それほど、勘違いではなかったのでは?
しかし、ヤフーは儲からなかった。
 
理由は簡単。
みんな、文字通り「ただ、見る」だけだから、
ヤフーには一銭も入らない。
何十億人見ようが、それだけでは、
儲かるわけがないのだ。
もしかしたら、そういう事情を知らないで、
ヤフーの株を買った人もいたかもしれない。
もちろん、ヤフー自身は
「ただで見せる」ことが目的ではなく、
「何十億人も見る」サイトに載せる広告料で
儲けるつもりであった。

(続く)

2001-04-18-WED

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