TOKYO ⇔ IMABARIやさしいタオルのふるさと、今治をたずねました。

こんにちは、「ほぼ日」タオルチームのシェフです。
先日、同じチームのやえみちことともに
愛媛県今治市を訪ねてきました。

今治──いまばり、と読みます。
平安時代以前は伊予国の国府として、
また江戸時代以降には
戦国武将の藤堂高虎(とうどうたかとら)が築城した
今治城の城下町として、さらなる発展をとげました。

現在は西瀬戸自動車道(しまなみ海道)によって
広島の尾道ともつながり、交通の便もよくなっています。
その立地をいかして、造船業もさかんな町なんです。

そして今治は、江戸のむかしから
綿織物の産地として知られた町。
明治時代にタオルの生産をスタート、
いまや世界一のタオル産地と言われるまでになりました。
「やさしいタオル」も、
2003年の最初のモデルから、
この今治でつくりつづけています。

最近の今治は“ゆるキャラ”の「バリィさん」でも
知られるようになりましたが、
そのバリィさんがしているハラマキは、
タオル生地なんだそうですよ。

「やさしいタオル」がお世話になっているのは、
大正時代に設立された
「藤高」(ふじたか)さんというタオル会社です。

こちらが社長の藤高豊文さん。
今治のタオル業界で藤高社長の名を知らぬものなし。
いま今治でいちばん忙しい人のひとり、
‥‥と言われるくらい多忙をきわめながらも、
あたらしい綿のことや織り、染めの技術のこと、
そしてタオルづくりにおける斬新なアイデアを、
つねに考え続けているひとです。
なんと、よい綿をさがして、
外国へひとり旅することもあるのだそうです。
(そしてふだんはダンディでユーモアにあふれる、
 まるでイギリス紳士のようなかたなのです。)

そしてこちらは、技術担当の宇都宮誠さん。
藤高社長とともにチームで開発した
「五彩織り」という技術で、
国の「ものづくり日本大賞」において
「製品技法開発部門 経済産業大臣賞」を
受賞したこともある、藤高を代表する技術者です。
「やさしいタオル」は、宇都宮さんの技術があって、
つくられていると言っても過言ではありません。

この日は「やさしいタオル」にかかわるメンバーで、
これからのやさしいタオルのあり方についてミーティング。

世界でいま「綿」という素材がどうなっているのか、
そんなレクチャーをいただいたり、
じっさいに触らせていただいたり。
そしてタオルにおいて「やさしい」って
いったいどういうことなんだろうということを、
あらためてみんなで考えたり。
ぼくらも、いままで知らなかったことを、
たくさん知ることができましたし、
もしかしたら数年のうちに、
あたらしい「やさしいタオル」が誕生するかもしれない、
そんな期待にあふれる話がつづきました。
(じっさい、つくりたいと思っています。)

そして社内の「頭脳」ともいうべき、
宇都宮さんたちの部署を見学。

いまやコンピュータ化されているタオルの製造ですが、
そのプログラミングに必要なのは、人の頭脳。
「やさしいタオル」も、「ほぼ日」がつくった
デザイン画をもとにして、
宇都宮さんたちが、1本1本の糸を、どう染めて、
どう組み合わせるのかを設計します。
この資料は、その設計図にあたるものだそう。
(見ても、ちんぷんかんぷんではあるのですが。)

いままでのデータもファイリングされていました。

糸も、理想の色になるまで
何度もサンプルを染めてたしかめます。

ここまでが「やさしいタオル」をつくる、準備の段階。
こんどは現場へうかがいます。
藤高社長も毎日ワークウェアに着替えて回るそうです。

これは糸染めの窯。おそろしく深い!

こちらは染めが終わった糸のストック。

こうして先に染めた糸を織ってつくるのが、
タータンチェックや無地系のシリーズです。

チームのやえ
元来の「とことん気質」が
タオルの品質管理という仕事と化学反応し、
いまでは宇都宮さんと
“技術トーク”ができるほどの間柄に。
宇都宮さんもはりきって説明をしてくださいました。
こういう会話から、あたらしいアイデアが
うまれてきたらいいなあ!

そしてこちらは、糸を整経するところ。
整経というのは、必要な本数のたて糸を揃えて、
長さや張力などをととのえ、
1枚のタオルを織るための準備をする過程。


まるで、スパイダーマンの糸みたい。
でも広がっているのではなく、写真の左から右の方向に
糸をまとめているんです。

そして、織りの工程に入ります。
こまかすぎて写真にうつらないほどの、糸の数。

いまは、織機は自動で動くようになりましたが、
どのタオルをつくるのも
同じ動きでよいというわけではありません。
糸の種類も異なりますし、スピードもちがう。
もちろんデザインも、織り密度もかわります。
「やさしいタオル」には「やさしいタオル」だけの
特別な織り方があるのでした。
(片面ガーゼ、片面パイルを、いちどに織る、
 というだけでも、じつはかなり
 たいへんなことなんですよ。)

さて! 「やさしいタオル」には
最初に糸を染めて、チェック柄などを織る方法とは別に、
織り上げたタオルに、色・柄をのせる(プリントする)
という方法もあります。
たとえば今シーズンでいうと、こんなタオルです。

これをつくるためには、
まず「版」をつくらなくてはなりません。
「やさしいタオル」の場合は、
みちこがつくったデータをもとに、
こちらの工場で、そのデザインを、
タオルにプリントするのに最適なデータに変換。

そして「紗張り」といって、タオルにあわせた
フレームをつくります。


感光剤を塗ったあと、製版機で印刷。


露光して感光材を固定、
さらに水洗い。


最後は樹脂で補強をして、自然乾燥させます。


そしてその版を、また別の工場に運んで、
大型の印刷機にかけます。


ぴんと張られたタオルに、
色ごとに版をのせていきます。
複雑な色・柄のものの場合、
これを何度も繰り返します。

先染のタオルも、プリントのタオルも、
出荷の前に「洗い」「乾燥」の工程を必要とします。

「やさしいタオル」は、
四国山脈の伏流水と、シャボン玉石鹸で洗って、
柔軟剤を使わずに仕上げます。
そのほうが、吸水性がアップして、
より「やさしい」タオルになるからです。

このあと、タグをつけ、二度にわたる検針を行ない、
ほつれなどの不具合のあるものははじき、パッケージング。
そこまで藤高さんは、自社工場内で行なっています。

そうして完成した「やさしいタオル」が
東京を経由して、
みなさまのところに届けられる、というわけです。

駆け足で見学してきましたが、
こうして「やさしいタオル」がつくられるんだ‥‥と、
チーム一同、あらためて感動。
なにより、タオルをつくっているみなさんが
とても元気であかるい!
こういう現場でつくられていることを、
とても誇りに感じたのでした。

「やさしいタオル」は、
4月17日(木)午前11時から、
今シーズンのラインナップの再販をおこないます。
そして、夏のタオルも、現在鋭意準備中。
どうぞおたのしみに、お待ちくださいね。

2014-04-15-TUE

   
やさしいタオルに
冬の新作が登場します。
タオルの上を「歩く」。
動画をごらんください。
ひびのこづえさんと
いっしょに
やさしいタオルを
つくりました。
     
活版印刷ユニット
「TOKYO PEAR」に
よる、新作。
植物由来の染料を使った
ボタニカル・ダイに、
「ジンジャー」と
「シナモン」が登場。
やさしいタオルのふるさと、
今治をたずねました。


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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
スタイリング:伊藤まさこ 写真:有賀傑