<京都・立命館小学校×ほぼ日手帳>
立命館こども手帳
PROJECT 

みんなでつくろう、
たからもののてちょう。ほぼ日刊イトイ新聞では、2014年の春から
京都の立命館小学校のみなさんといっしょに
あたらしい試みをはじめています。
その名も「立命館こども手帳PROJECT」。
お父さんやお母さん、先生がたにご協力いただきつつ、
小学生のみんなに「ほぼ日手帳」を使ってもらい、
宝物の手帳を作ろうというプロジェクト。
使うみんなのたのしい時間が増えたり、
あとで読んでうれしい1冊ができたら、なにより最高。
また、こどもたちの自由な発想から、
面白い手帳の使い方が生まれたらいいな。
そんな想いとともにはじめました。
このページで、ときどきご報告していきますね。
 
Report07

2015/04/22
番外編、お父さん座談会(その2)

前回のおさらい~

「ほぼ日子ども手帳」の開発を目指して
立命館小学校に協力をあおいだ
ほぼ日・お父さん乗組員の3人。
子どもたちには、こんな手帳がいいはずだと
考えて臨んだプロジェクトのスタートから
1年が経って、考えの甘さを反省する一方で
「ほぼ日手帳」のポテンシャルを再発見するのでした。



<お父さん座談会の出席者>

   
プロモーションを担当。
小3の男の子と
小1の女の子のパパ。
  ほぼ日手帳チームの
リーダーとして広く携わる。
5歳の女の子のパパ。
  デザインと撮影を担当。
5歳の女の子と、
2歳の女の子のパパ。



西本 ほぼ日手帳を、こどもたちに使ってもらう。
実は、これがスムーズにはすすまなかったんです。
学校から正式にアナウンスされる前に
PTAの方々からも了解をとらなければならない。
学校側から保護者会で
このプロジェクトについて説明があったとき、
「手帳をつけることが学校の成績となるのですか?」
「これは宿題のひとつなんですか?」
という、質問がたくさんあったみたいで、
ぼくらも保護者会の方々と意見公開などを
することになったんです。
むねひろ 「これは課題なんでしょうか?
 学校のカリキュラムなんでしょうか?」
って、聞かれてましたよね。
西本 「なぜ、『ほぼ日手帳』でないといけないのか、
 他の手帳でもいいでしょう。」
という意見もありました。
「ほぼ日手帳」のことを
知らない保護者の方の視点にたつと、
それは、もっともな指摘なんです。
ですから、何度も「ほぼ日手帳」そのものについて
説明することになりました。
保護者会に来ていただいた方々には、
まずは「新たに宿題を増やすものじゃない」
ってことは理解してもらいました。
―― カリキュラムではなく、
自由参加なことが肝ですよね。
西本 はい。自由参加で4月から始めようとなりました。
こうして、このプロジェクトが育っていって、
そのうち、生徒や保護者の間でも広まって
みんなが書くようになるといいですよね、と。
そして、ほぼ日手帳に記録していった子たちが、
うれしくなったらいいね、というスタートです。
―― はじめから、「これをやろう」みたいなこととか
テーマにしていたことは、あるんですか。
西本 校長先生と「残す」ということを
テーマにしましょう。と話しました。
夏休み前に、レンズ付きフィルムを渡したのも
デジカメじゃなくてフィルムカメラじゃないと
いけない理由があって。
ーー なんだろう。すぐに確認できないとか?
西本 二つ理由があって。
ひとつは校長先生は
スキューバーダイビングが趣味らしいんですね。
フィルムカメラの時代までは
プリントしてはアルバムに貼ったりしてたから
いまでも家族で見返すこともあるんだけど、
デジタルになってからは
たくさん撮った写真もPCの中に保存したままで
家族で見返すことは無くなった。
というエピソードがあって。
ーー なるほど。写真をプリントして
「ほぼ日手帳」に貼ろうということですね。
西本 もうひとつは「残す」ときに
そのときの「自分の視点」も
残してもらいたかったんです。
レンズ付きフィルムだと、
ファインダーを覗かないと撮れない。
つまり、写真を撮るときに
そのときの視点がちゃんと残るんです。
「風景じゃなくて、視点を残すためにこれなんです」
っていうことだったんですよね。
この年の、夏の視点を残してほしくて。
むねひろ そう、枚数も限られてますしね。
西本 現像してプリントするのって
それなりにお金もかかるから
だいじに撮るかなと思いきや、
早い子は1日で撮りきってましたよ。
―― ほんとですか。
西本 カメラを配って、僕らが帰るときには
「もう撮ってもうたでー」とかって。
製本ワークショップの映像の中にも
「校長先生の写真」を貼ってた子がいたけど、
その写真もレンズ付きフィルムを
渡した直後に撮った写真じゃないかな。
―― これが7月、8月でしたよね。
今年の2月に製本で訪れてみてどうでした?
西本 小学校って夏休みが終わってからは
行事が続いて怒濤のように忙しいんですよ。
運動会があって、文化祭があって、
年が明けたら、すぐ進級でしょ。
たまに京都までうかがって、
何人かの手帳を見させてもらう機会もあったけど、
書かなくなったけど大事に手帳は持ち歩いている子や
おもしろがって書いているうちに
手帳がどんどん育って大きくなっている子もいて、
その子の個性によって
手帳が育っていくのをみるのは
楽しかったですよ。
―― 子どもの手帳ってかわいいですよね、
のびのび書いている感じで。
西本 とくに1年生とか2年生ぐらいの子の
手帳は面白かったなー。
高学年だとプライベートなことも書いてるみたいで
手帳をなかなか見せてくれないの。
低学年の子は
「ほらほら、見てーな」って
率先してみせてくれる(笑)
むねひろ でも、親子で書くから、
いい面もありましたよね。
西本 低学年だと、親御さんが介在する余地があって、
家族でいっしょに作る手帳になるんです。
手帳の中に、その子だけでなく、
家族も残っているんです。
保護者のおばあちゃんが
「ほぼ日手帳」を読み返しながら
「疲れてるときは、字も疲れてるんですよね」
おっしゃっていて。
そういうエピソードって、たまにお会いして
聞くたびにキュンキュンするんですよ。
一番グッときたのが、
誕生日の日が過ぎてから、
「あなたが生まれてくれてありがとう」
という、いつ、その子が読むかわからない
メッセージを書いているお母さんがいてね。
田口 ああ、それ。
ちょっと、いい話でした。
西本 クリスマスの時期ぐらいに
学校にうかがったときにね、
手帳を見せてもらっていたら、
子どもが
「あ、お母さんがこんなこと書いてる!」
って発見して。
そんな手帳の使い方って、
「ほぼ日手帳」ならでは、
だと思うんですね。
むねひろ そうですね。
田口 僕はこう、普通でいいなと思いましたね。
最初は「子どもにいいことさせよう」とか、
「すごい!こんな使い方するんですね、子どもって」
みたいなこと、やってくれないかなっていう
やましい気持ちもあったけど、
これがいい意味で普通だったんですよ。
そんな使い方をしてくれる子もいたとは思うけど、
みんなが自分なりに使えている感じが
いいんだなっていうのが、わかりましたね。
むねひろ ああ、そうでしたね。
田口 ちゃんと使ってくれている人は
自分なりの使い方をやってたし。
使っていない子も、使ってないなりに、
そのときの自分が出てるし。
それでいいんだな、って気はしましたね。
プロジェクトのはじめのころは
取材するなかで、
「こんな使い方してんのか!」みたいに
わいわい盛り上がれば、コンテンツとして
いいなっていう気持ちもあったけど。
いい意味で普通に使ってくれてて。
それがむしろ、よかったなっていう。
―― たしかに取材に行くときって、
こういうふうに使ってくれたらなって、
想像しちゃいますもんね。
西本 「これやって、背がグングン伸びました」とか、
「ハキハキとものを言えるようなった」
とか、そういうものじゃないし(笑)。
田口 「部活でみんなで使って、大会に勝ちました」
みたいなエピソードは、キャッチーなんだけど、
そんなのことっていつもあるわけじゃないし、
でも、普通に考えればそうだよなと思って、
改めて実感できたかもしんないですね。
西本 手帳を見ていると、
その子がちゃんと見えてくるんですよね。
田口 いつもおばあちゃんと来ていた子の手帳は、
おばあちゃんと作り上げてるような感じだったし。
西本 製本しているときに、その親子の関係と、
手帳との付き合い方が何となくわかったね。
お母さんがずっと寄り添ってやってるとか。
田口 お子さんの手つきがもどかしくて、
お母さんが手伝いすぎちゃうとか。
むねひろ それでもね、いいと思うんです。
自分一人で1冊作り上げるのもいいと思うし。
あと、けっこう印象的だったのが、お父さん。
立命館小学校って私立だから、
小学生でも電車で通うわけですよ。
で、お父ちゃんが通勤で途中までいっしょに
電車に乗って、その中で絵を描いてくれて。
そういうのって、自分が残したものだけじゃなくて、
たまに、お父さんとかお母さんとかおばあちゃんの、
ちょっとした絵や文章が入っていると、
高校とかでグレたときにもいいですよね(笑)。
―― 大人になると、効きますね。
むねひろ 効きますよね。おばあちゃんが亡くなっちゃってから
自分の手帳にふと、おばあちゃんの書いた字が
出てきたりしたら、すごくキュンとしますよね。
「あのとき、おばあちゃんもいたな」って。
西本 最初の発表会のときに、校長先生が
お母さんたちに話してくれたんですけど、
「これね、書いて見せてくれるの今だけですからね。
中二ぐらいになるとね、見せてくれませんよ」って。
今しかこういうのできませんって、たしかにね。
田口 日記でも、仕事のスケジュール帳でもないところに、
今のほぼ日手帳が存在しているっていうのは
前に糸井さんも言っていました。
日記だけだとプライベートなものになるし、
仕事用だと、完全に仕事だけのものになるけど、
そこに自分のプライベートもあって、
誰かが介在してきたりとか、
見せたり、見せてもらったりっていう、
ちょうどいい塩梅でほぼ日手帳がいるという話は、
まさにそうなんだなって思いました。
家族と一緒に使ったり、見せたり、製本したりは、
確かにおもしろいもんだなと思いましたね。
―― このプロジェクトのテーマって、
「みんなでつくろう、たからもののてちょう。」
ですよね。これを実感したことってありましたか?
西本 子どもたちの手帳を見せてもらって
おじさんたちがキャッキャッいったり、
ウルウルしながら写真撮るのは、
子どもたちにとっては異様なんですよ。
「えっ、これの何がええの?」みたいなね。
「知らないおっさんがウルウルしてる」から
もっとウルウルさせようと、
「こんなのもあるよ?」って見せてくれる。
つまり、本人はまだその価値に気づいていない(笑)
お母さんたちは製本してから
「ああー。こういうことなんですね!」
と、すごく喜んでくれたんだけど、
本人たちは
「なんかオトナ達が盛り上がっているなー」
という感じなんですね。
―― 普通にやっていたことですもんね。
西本 これはもしかすると
「いい時限爆弾」を
作ってるようなプロジェクトなんだよね。
―― いい時限爆弾!
西本 子どもたちがすこしオトナになってから
ようやく起動する時限爆弾。
田口 当初は、毎日からこぼれ落ちるようなものが、
ポロポロ残っていくといいなって話してました。
夏休みに1度お試しで使ってもらったときに、
「しんどい」って、ひと言だけ書いた子がいて、
その次のページには「楽しい」って書いてあった。
そんなのって、ふつうは残らないですよ。
絵を描くわけでもなく、手紙を書くわけでもなく、
「楽しい」「しんどい」みたいなちっちゃい感情が、
たまたまめくっていたらそこに残っている。
―― 「夏休みの思い出を1ページにまとめて」だと、
「しんどい」にはならないんですよね、きっと。
西本 「日々の言葉」の中に
「言いまつがい」まではいっているから、
「上に書くことは
 マジメなことだけじゃなくてもいいんだ」
ってみんな感じてくれたみたいなんです。
この立命館小学校ってね、
みんなたくさん本を読む学校なんです。
平均で年間100冊くらい図書館で借りるそうなんですよ。
よく本を読むっていう習慣と
「日々の言葉」を読み込むということが
相性がよかったようで、
小1からほぼ日のマニアになってる子もいたり(笑)。
―― 子どもたちからすると、
「ほぼ日が、Webでこんなコンテンツやってます」
っていうのを見たことは‥‥?
西本 ほとんどの子はないと思う。
でも、日々の言葉を通じて、
どういう人かは全く知らないけど
「糸井重里という人がいいこと言ってるな」
と、思ったという子どもたちも
アンケートではいたんですよ。
つまり、「ほぼ日刊イトイ新聞」というのは
子どもでも大人でもわかるコンテンツを
作ってきたんだっていうことに気づかされました。
このプロジェクトを通じて、
自分たちがやってる仕事やコンセプトに、
改めて気づかされた、いい経験でした。
―― 2月の製本で久しぶりに集まってみて
手帳が育ったなぁという印象を持ったんですが、
みなさん、どう感じました?
むねひろ この日は、30人ぐらいが来てくれましたよね。
土曜の朝なのにね。
親御さんもいっしょに参加するって、
結構ハードル高いはずなんですけど。
―― 製本までしなくても、
残せることは残せますしね。
田口 でも、自分の手で本に仕上げることをやって、
親御さんは1年やってきたことの意味を、
実感されてたような気はしました。
むねひろ そうですよね。
本を自分で作るって感動しますもんね。
西本 製本の動画にも残っていると思うんだけど、
「ダメじゃないか。お父さんに貸してみろ」
なんてお父さんのシーンが好きだなあ。
黙々と作業する子もいて、
製本がうまくいかない子もいて、
それはそれで、製本がうまくいかなかった、
その年が残ることも、
すばらしいなと思って見てました。
田口 いや、これけっこう手間だし、
大変なことですよ。
ワークショップを見ている間に、
休日にわざわざこれをやりに来てくれているのは、
とんでもないことだなと思った。
西本 ほんと、そうだよね。
忙しいなか来てくれて、うれしそうに帰っていって。
そのあと、保護者会があったらしいんですよ。
そこに参加した、あるお父さんが
「私は最初は正直、このプロジェクトについて
よくわからなかったが、製本をして
ようやくプロジェクトの意味がわかった。
これは、大変いいプロジェクトだから、
皆さんもやった方がいいと思います」って
おっしゃったらしいですよ。
―― すごい。
西本 これは「立命館こども手帳PROJECT」の
一例だけで、ほんとうはどんなご家庭でも、
このプロジェクトは始められると思うんです。
「小学生のお子さんをお持ちの皆様、
とくに低学年のお子さんをお持ちの皆様のご家庭でも
子ども手帳プロジェクト、始めてはいかがでしょうか」
と、つよくおすすめしたい(笑)
田口 親御さんからの感想メールもいただきましたよね。
学校の先生が、感銘を受けたって言ってくれて。
西本 今の子どもたちって、みんな忙しくて、
朝はきっちり学校に行って、塾とかもあって。
家に帰ったら「すぐご飯を食べなさい」とか、
「早く寝なさい」って言われて。
それで、よく手帳を使い続けてくれたなと。
それは本当にうれしかったです。
田口 ほんとにそうだし、
当初、僕らが描いてた
「こんな感じになったらいいな」みたいな部分が
うまくいかなかったことも、
僕ら自身、とても勉強になりました。
むねひろ そうですね。
全部、机上の空論でしたよね。
―― 親御さんや子どもたちが喜んでくれることが、
あとになって、すごく効くものなんですね。
西本 そう、これは時限爆弾なんで。
このプロジェクトに参加した小学生が
もしかしたら15年ぐらいしたときに
「今、すごいグッときました(涙)」って
メールが送られてくる可能性もあるからね。
それを楽しみにしましょう。
田口 まだ机上の空論の途上にいるかもしれないですよね。
何年か後に、とらえ方がまた変わっていって、
「あ、そういうことだったんだ」って言うの、
僕らの方かもしれない。
西本 6年生ぐらいになって、1年生のときの手帳を見ると
「字がへたくそだな(笑)」ぐらいにしか
思わないだろうけど、
6年生の自分と30歳とでは
感じかたが変わるから、
この魅力はどんどん熟成されていくんだね。‥‥。
―― 増えていくでしょうね。
むねひろ めんどくさいかもしれないけど、
ちゃんと使うともっとおもしろくなるよ、
っていう感じですね。
西本 小学生のお子さんがいるかたは、
今すぐにでも始めておくと、
いい時限爆弾が作れますよ。
田口 確かに、時限爆弾ですよね。
読み返したときに、爆発する。
西本 仮に不良になったりしてもね、
「この子はほんとは悪い子じゃないんです」(笑)
田口 結婚式で両親から
「子どものときの『ほぼ日手帳』だよ」
って渡してあげると、ちょっと泣けるだろうな。
―― そんなことをした人は、また何か連絡をくれれば。
西本 そうですね。20年後とかに覚えていたら、
ぜひメールを(笑)。
田口 ぼくらおっさん3人の
誰もいなかったりして(笑)。
西本 プロモチームとしては
「うちの小学校でもやってみたい」
「クラブ単位でやってみたい」
「会社でやってみたい」
というオファーが増えるとうれしいな。
ご興味がある方はpostman@1101.comまで
気軽にご相談ください。
田口 商売熱心やな!
西本 いえ、ぼくは本気です!
お気軽にお問い合わせくださいませ!
―― 子ども用のほぼ日手帳をつくろうとしたはずが、
子どもたちに驚かされたという3人でした。
これからも機会があれば、
子どもたちの手帳を見せてもらいましょう。
お付き合いいただき、ありがとうございました!



2015-04-22-WED
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