スマートフォン版で見る

LIFEのBOOK ほぼ日手帳

LIFEのBOOK ほぼ日手帳

ほぼ日手帳カバー「TS」シリーズは、
毎年、グラフィックデザイナーの佐藤卓さんに
選んでいただいた革で作っているカバーです。
候補に上がる革の種類は多いのですが、
卓さんはその中から迷うことなく
「これだ!」と、見事にひとつを即決してくださるんです。
卓さんは、ものを選ぶときに
どんな目線で、どのように選んでいるのでしょうか。
いつも持ち歩いているバッグの中身や、
デスクの上で使っている文房具を見せていただきながら、
お気に入りのものの選び方について、話を聞きました。

Profile
グラフィックデザイナー。
1979年東京藝術大学デザイン科卒業。
1981年に同大学院修了。
株式会社電通を経て、
1984年に佐藤卓デザイン事務所設立。
「明治おいしい牛乳」や
「ロッテ キシリトールガム」などの
商品デザインおよびブランディング、
NHK Eテレで放送中の『デザインあ』の総合指導や
『にほんごであそぼ』のアートディレクション、
21_21 DESIGN SIGHTの
ディレクターおよび館長を務めるなど、
多岐に渡って活動中。
www.tsdo.jp

第2回 デザイナーが黒を選ぶ理由

ーー
「TS2017」はシルバー色の革でしたが、
「TS2018」で選ばれたのは、黒革ですね。
いろんなかたが手帳として持ったときに
スタンダードなものとして使っていただける色ですが、
卓さんが個人的にもっているイメージとしては、
「黒」は、どんな色なんでしょうか。
▲TS2017
佐藤
黒‥‥そうですね。
デザイナーってね、なぜか
黒い服を着ている人が多いんですよ。
1年に1回、いろんな都市で
世界のグラフィックデザイナーが
集まる会があるんですけど、
そこにいる人たち、ほとんど真っ黒。
ーー
(笑)。
佐藤
フォーマルな場にもふさわしい色っていうのも
もちろんあるんだけど、
デザイナーは「黒子であればいい」っていう
考え方も、ちょっとある気がするんです。
「デザインそのもの」が、世の中で生きていればいい。
デザインの裏側にいるデザイナーは、
存在感を消したいという気持ちが少しあって。
ーー
なるほど、デザイナーという職業柄で。
佐藤
黒っていうのは、あまり主張しないで
そのまま空間に消えていくようなところが
あるんでしょうね。
ただ、デザイナー的には、黒といっても、
その上で少し質感を工夫したり、追求したりしたい
という気持ちはあるかもしれません。
ーー
たしかに、同じ黒でもTSブラック ベーシックと
TS2018バトラーでは印象がまるで違いますね。
佐藤
それからもうひとつ、黒という色で思うことといえば、
日本人は髪の毛が黒いから
黒を着ると、自然と髪の毛も含めて
コーディネーションが成立しちゃう
っていうところもありますよね。
ーー
そうか、黒は日本人の髪の毛の色!
佐藤
そう。たとえば、少し髪の毛を茶色くするだけで、
着るものの服の色って、変わりますよね。
僕も以前、ド金髪にした時に、
ピンクのセーターとか、蛍光オレンジの服を
けっこう積極的に着ていました。
でも、そういう、行き過ぎた時代を経て。
――
経て(笑)。
佐藤
今はもう、黒い服が多いですね。
さらに言うと、日本の場合は、
色に対して、名前がすごく豊かに付いていて
それだけ、色を見分けるっていうことが
もともとの文化の中にあるんです。
だから同じ「黒い革」のなかにもね、
すごく豊かな世界があるんだと思います。
――
ベーシックとバトラーを見比べると
よくわかる気がします。
ところで、卓さんの好きな色は何色ですか。
佐藤
「好きな色は?」って聞かれたら
「黄色」と答えるようにしています。
黄色はね、有彩色の中で、どんな色にも合う色なんですよ。
――
どんな色とも合う。
佐藤
無彩色、つまり白とかグレーとか黒なら
隣にどんな色が来ても合うでしょう?
赤とか緑とかの有彩色だと、
合う色と合わない色があるんだけど、
黄色は隣に青や緑が来ても、グレーが来ても、
真っ赤が来てもOKでしょう?
――
そうですね。
佐藤
ちょっと理屈っぽいんだけど、
どんな色にも合わせられるっていうのと、
明るくて楽しくて軽いっていうところが好きかな。
重たくないし、強すぎない。
だから、黄色は好きなんです。
――
卓さんにデザインしていただいた
「ほぼ日」のロゴが入った
ことしの「おまけのボールペン」も黄色です。
どんな色にも合うって聞くと、
なんだかうれしいですね。
佐藤
そういえば、さっきから
ちらっと見えているんだけど、
それ、ことしのトートバッグだよね?
――
あ、はい!
TS2018の革「バトラー」で作った
卓さんプロデュースのトートバッグです。
完成したので、見ていただこうと思って
持ってきたんです。
佐藤
いやぁ、うれしい。この荒い感じがいいね。
あららら、これ、また気に入っちゃったなぁ。
――
この完成形になるまでに、
何度か、調整をしましたね。
佐藤
カジュアルな印象になるよう、
上のほうの幅を少しだけ広げてもらったんです。
ーー
A4ファイルが横に入るサイズというのも、
使いやすそうです。
佐藤
うん、それから
取っ手の縫い目が、
バッグの内側に隠れるようにできたのもうれしい。
取っ手の縫い目が見えずに
きれいに収めてあるバッグは、
意外と少ないかもしれないね。
佐藤
それから持ち手のカーブもいいね。
前回の「TS2017」のときと比べて
今回は持ち手を丸くしてもらったので、
ちょっとまた表情が違っていて。
――
この丸さが、手に馴染みますよね。
かっこよさと、かわいらしい印象もあるので
男性はもちろん、女性も持ちやすいと思います。
佐藤
ブランドのロゴや文字が何もなくて
「グラフィック要素がない」ところもいい。
探しに行っても、なかなか見つからない。
そういうものができて、すごくうれしいです!
(つづきます)
前へ
次へ
 

今回、佐藤卓さんが選んだ革「バトラー」で作った
トートバッグ「バトラー/トート」を受注販売いたします。
受注期間は2017年9/1(金)午前11時~9/11(月)午前11時です。
くわしくはこちらのページをご確認ください。

これまでのコンテンツリンク
株式会社ほぼ日のロゴマークができました。佐藤卓✕糸井重里対談
ほぼ日手帳2017 かっこいい革ってなんだ? 佐藤卓さんと「革会議」。