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LIFEのBOOK ほぼ日手帳 2017

LOFT手帳部門12年連続NO.1

ほぼ日手帳 2017

ひとコマ絵日記から
あの日がよみがえる
片倉真二さん&奥さま

5匹の飼い猫たちとの日々をつづった
『ペン太のこと』が人気を集めている
漫画家、片倉真二さん。
3年前から
ほぼ日手帳の月間スケジュールをつかって、
毎日イラストを描いています。
このひとコマ絵日記、
発案者は『ペン太のこと』に
「嫁さん」としてたびたび登場する奥さま。
およそ3年ぶんたまった絵日記を
見せていただきました。

プロフィール

片倉真二

静岡県出身。上京後、ゲーム会社に就職。
のちに独立し、現在はイラストレーター兼漫画家。
「嫁さん」と、
ポン太、金太、はむやん、はたけという
個性豊かな4匹の猫とともに暮らしている。
2014年から
オリジナルwebコミックサイト「モアイ」にて
飼い猫を題材にした「ペン太のこと」を連載中。
現在、単行本が8巻まで発行されている。

Twitter @katakura_shinji

――
ほぼ日手帳はいつから、どんなきっかけで
使われるようになったんでしょうか?
片倉
3年くらい前、気づいたら家にありました。
嫁さんが買ってきたんです。
奥さま
わが家で飼っている猫たちを題材にした
「ペン太のこと」の連載がはじまったのが、
2014年の1月なんですが、
その少し前、連載が決まったときに
スケジュール管理をしようと思って手帳を買いました。
買ってすぐ、月間スケジュールを開いて、
「ここに毎日、絵を描いて」ってお願いしました。
片倉
さいしょは、意味がわからなかったです(笑)。
奥さま
彼はこれまでも口ぐせのように
「俺は君より早く死ぬ」って言ってたんです。
だから
「じゃあ、あなたが死んだら見返すから、
その日のために描いてよ」
と伝えました。
片倉
「なんで描くの?」と聞いたら「なんでもよ」、
「いつまで描くの?」と聞いたら
「いつまでもよ」って。
奥さま
さいしょはちょっとした思いつきでした。
わたしは1日ページのほうに、
原稿の進行状況をメモしたりしていたので、
せっかくだから空いている月間ページに
なにか記録を残してもらおうと思ったんです。
ただ、連載スケジュールのほうはひんぱんに変わったり、
ずれ込んだりすることが多かったので、
編集の笹岡さんがくださる一覧表で管理することにして、
いまではほぼ日手帳は日記専用になりました。
――
では、1日ページはいまはどんなふうに?
奥さま
思いついたことや起こったことを
わたしがたまに書いています。
あまり日付は気にしませんね。
そこにも、イラストをつけてもらうことがあります。
片倉
1日ページも、嫁さんが気まぐれで
「ちょっと描いて」と言ってくるたびに
描かされて‥‥、いや、描いています。
――
描かされて(笑)。
では、
1日ページは片倉さんと奥さまの合作なんですね。
月間ページのイラストは、
毎日、その日に描いてらっしゃるんですか?
片倉
はい。毎日寝る前に「はい、描いて」って
手帳を渡されるんですよ。
奥さま
なので、
数コマにわたってひとつの絵が描いてあるところは、
わたしが「描いて」って言い忘れた日です(笑)。
片倉
このあたりは、嫁さんが入院してたんですよね。
「男一人はなんもできねえ」「そうさのう」
――
毎日手帳を渡す人がいないから、
あとから大きく描かれたわけですね。
「なんもできねえ」‥‥。せつないです。
片倉
無事退院して早々に、
毎晩手帳を渡される習慣が再開しまして、
毎日ひとコマ描く生活に戻りました。
奥さま
このひとコマ絵日記は、何かに役立てようと思って
はじめたわけじゃないんです。
でも、
「前回、原稿を入稿したのはいつだったっけ?」
というときに、かなり役に立つんですよ。
片倉
会った人のこととか、原稿の進行状況とか、
あとから自分の描いたイラストを見て
思い出すことは多いですね。
奥さま
両親が上京した日なんかは、
電話でしかやりとりしないのでメールも残らないし、
とくにツイッターに書くわけでもない。
だからこの記録がありがたいんです。
片倉
(手帳をめくりながら)
あ、植田まさし先生と会ったの、
この日だったんだ。
――
植田まさし先生タッチの絵が描いてありますね(笑)。
片倉
さいしょに描いたほうの出来がよくなかったから、
翌々日に描き直しました。
――
前々日の絵を見て
「描き直したい」と思われたんですね(笑)。
片倉
はい。「これはイケてない」って。
――
こうやって一つひとつ見ているだけで
とっても楽しいです。
笹岡
1日の記録がこのちいさなコマに
ぎゅっとつまっているから、
その日に何をやったかが、よくわかりますよね。
奥さま
わたしは「描いて」とお願いはするけれど、
内容のリクエストは一切出さないんです。
だから描かれたものをみるたび、
「1日いろんなことがあったけど、
彼にとって今日のメインはこれだったんだ」
と思えて、おもしろいんですよ。
それに、なにかあったときに
直接そのことを描いていなくても、
その日食べたもののイラストから
「あ、これを食べた日ってことは、
あそこに出かけた日だな」と記憶が転がっていく。
それがなかなか楽しいんです。
――
掲載してよいかどうかわかりませんが、
「家出」なんて日もありますね。
奥さま
はい。赤裸々なことも描いてあります。
――
『ペン太のこと』には奥さまがよく登場されますし、
夫婦げんかの描写などもありますね。
奥さまとしては、そうやって赤裸々に描かれることに
抵抗はないですか?
奥さま
(即答で)あります。
全員
(笑)。
奥さま
とくに連載のはじまった2014年は、
二人のあいだのネガティブな部分も描いてしまうことについて、
ぶつかりまくってました。
いまはあるていど理解しているつもりですけど‥‥。
笹岡
でも「嫁さん」のキャラは、
読者からすごく人気があるんですよ。
――
あっ、1日ページのほうで、片倉さんが奥さまに
謝っているイラストを見つけてしまいました。
奥さま
これはケンカして、
わたしが怒って口をきかなかったとき、
その場でばっと描いて、こっちに見せてきたんです。
それを何ページにもわたって続けるから、
途中でおかしくなってきちゃって、
そのケンカは終わりました。
片倉
はずかしい‥‥。
――
手帳がケンカをおさめるのにひとやく買ったなんて、
うれしいかぎりです(笑)。
およそ3年間、ひとコマ日記を描かれて、
なにか変化はありましたか?
片倉
最近、描くのが楽しくなってきました。
最初の頃は、ものすごく嫌々描いていましたから。
奥さま
なんどもケンカしましたよ。
「仕事でもないのに
なんでこんなに描かなきゃいけないの?」って。
そのたび
「あなたが死んだら読むの」とか言っていましたけど、
わたしは単純に、おもしろいと思ったんですよ。
最初のころ、むりやり描いてもらった1ヶ月分を
読み返してみたら、
ぜったいにこれはおもしろいし、
ためればためるほど
あとでいろんなことを思い出せるものだって確信した。
それで、ぶつかりながらも続けてもらったんです。
たまに友人や親戚に見せたりして楽しめる、
同人誌よりもちいさな、内輪の読みものとして、
こんなにいいものはないなって。
――
でも、私的な内容なのにどこかサービス精神があって、
わたしのように片倉さんの生活を
知らない人間が見ても、とてもおもしろいです。
片倉
1年くらい経って読み返してみたら、
自分でもいろいろと思い出せたのはよかったですね。
奥さま
内輪のものとして考えていたので、
仕事につなげるつもりもなかったんですが、
2015年、LINEスタンプをつくる話が出たときに、
「ここからとればいいんだ!」ってひらめいたんです。
ーー
たしかに、スタンプにぴったりです。
奥さま
そこで、スタンプ向きだと思ったイラストに
丸をつけて渡したんですよ。
なのに、ひとつも採用してくれなかった!
――
このイラストがスタンプになった、という
いい話でまとまるかと思ったら、
ちがうんですね(笑)。
奥さま
でも、この日記が役に立つ可能性があると気づいたことで、
描くのが以前ほどは苦でなくなったみたいですね。
片倉
うん、役に立ったね。
とはいえ、こうやって振り返ると、
なんで自分のおしりにおできができている絵を
描いてるんだろうなあ‥‥。
――
はたから見たら、とっておもしろいです(笑)。
『ペン太のこと』は毎日更新ですが、
連載開始以前とくらべると
やはり生活も大きく変わりましたか?
片倉
インターネットで漫画を連載すること自体、
初めてだったものですから、
「こんなもんなのかー」と思いながら、苦もなく‥‥。
いや、苦はありますね(笑)。
笹岡
最初は土日はお休みだったんですが、
途中で「毎日更新しませんか?」と提案したら、
「やる」と言ってくださったので、
以来、完全毎日更新でがんばっていただいています。
読者もとても喜んでくれました。
「webコミックサイト モアイ」全体でも
『ペン太のこと』がいちばんアクセス数が多いんですよ。
原稿は月に2回、
だいたい2週間分を描きためていただいてます。
――
2週間分‥‥。かなりの量ですね。
笹岡
たいへんだと思います。
1回につき、14本のネタを
描いてくださるということなので。
片倉
植田まさし先生にお会いしたときに
毎日連載について相談してみたんです。
そしたら、
「僕もネタは尽きるよ、やっぱり2万本以上描いてると」
とおっしゃられて、「万?」って(笑)。
それこそケタの違うお話をしてくださって、
すごく励みになりました。
『ペン太のこと』は
12月でようやく1000回を迎えたんですが、
ちょっとした達成感がありますね。
――
1000回を超えても、
『ペン太のこと』は続けていかれるんですよね。
片倉
はい。
飽きて「もうやだ」ってなるまでは
続けたいと思います。
笹岡
そうですね。10巻はめざしましょう。
――
ひとコマ絵日記のほうも、
今後も続けてくださいますか。
片倉
そうですねー‥‥。
奥さま
はい。もちろんです。
――
ありがとうございます(笑)。
奥さま
とうぜん、数日空く日もたまにはあると思います。
わたしはなんでもかたちから入るタイプで、
「手帳を買ったからには、毎日書かなきゃ」
という気持ちが強すぎて、1日でも空くと
「もうつかえない」と思ってしまっていたんです。
でも、以前彼に手帳を渡しわすれたときに
3日分のスペースを
たっぷりつかったイラストを描いてくれた。
それを見て初めて
「そうか、べつに毎日きっちり書かなくても、
こういうのもありなんだ」って思えたんです。
だからこれからも、
気負わずに続けていってくれたらいいなと思います。
片倉
どうやら、
嫁さんはぼくの葬式にこの手帳を飾るつもりらしいんで、
ずっと描き続けることになりそうです(笑)。
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