ほぼ日手帳 2016

ほぼ日手帳に書きつづる 高校球児の野球日誌 豊川高校野球部、選手とコーチの記録

愛知県、豊川高校の野球部コーチが、
「ほぼ日手帳」を使った新しい試みをはじめました。
それは、部員全員が野球日誌を手帳に書いて、
コーチと毎日やり取りをするというもの。
「ほぼ日手帳カズン」に記録されている
天気、体調、素振りの数、印象に残った言葉が、
選手とコーチが過ごした歴史を物語っています。
甲子園を目指して日々練習する野球部のみんなを、
ときどき訪問してレポートしていきます。

倉橋幸資こうすけくん(新2年生)
キャッチャー
清水稜雅りょうがくん(新3年生)
ライト/レフト/ファースト
三浦祐斗くん(新2年生)
サード

#2 春を迎える球児の記録倉橋幸資くん、清水稜雅くん、三浦祐斗くん

三浦くんのほぼ日手帳

ほぼ日
三浦くんが「ほぼ日手帳」を書くようになって、
記憶に残っていることや
思い入れのあるページってありますか。
三浦
日誌を書きはじめたばかりの頃に、
自分が「これはだいじだ」と思ったことに対して、
青山コーチから「レベルが低すぎる」と
書かれて返ってきて、レベルの違いを感じました。
これまでは反省すべきことがあったとしても、
「ダメだった」としか書いていませんでした。
じゃあ、どうしたら次はよくなるか、
書きかたや意識のしかたを教えていただきました。
自分がどう考えるかをコーチに指摘されて、
「あ、そうだな」と納得して日誌に書いています。
ほぼ日
手帳を使うのは初めてですよね。
使ってみて、どうでしたか。
三浦
それまで手帳を使ったことはなくて、
日記みたいなことは書いていたんですが、
自分の本音は、ちゃんと書けていませんでした。
しばらく日誌を書き続けているのですが、
次の日の目標を書けることが役に立っています。
「こうなりたいんだ」っていう目標を、
前日からちゃんと頭に入れながら練習に臨めるので。
あとは、チームメイトの日誌を見たりして、
「ああ、こう思ってるんだ。じゃあ自分もこうしよう」
という刺激を受けることもあります。
ほぼ日
お互いに見せ合ったりするんですね。
手帳を見てみると、11月9日のページに
「三浦の歴史になる」と書かれていますが。
三浦
この日誌のことを書いた日です。
前日に「個人の記録」について、
青山コーチから教えていただきました。
それを受けて、
自分が書く記録は、何年経っても見ることができて
振り返ることができると書いたんです。
ほぼ日
三浦くんも、あとで振り返ることを
「これは歴史になるぞ」って思えたんですね。
自分から進んで記録するようになったんですか。
三浦
みんなでお互いに見せ合ったり、
コーチから書き方の指導をいただいたりして
書きはじめるようになりました。
あと、自分の中で印象に残っていることは、
部内の人間関係で反省すべきことがあって、
「悔しい気持ちもあります」と書いたら、
「お前はまだわかってない」と返ってきて。
これは今でも、反省しています。
ほぼ日
野球の技術で怒られるよりも、
人間関係のことは心にズシンときますね。
三浦
確かにそうかもしれません。
でも、この厳しさが成長につながっているはずです。
野球部では甲子園での全国制覇を目標に掲げていますが、
野球を通じた目的は、社会に通用する人間形成です。
だから、この日誌にコーチからいただくコメントも、
すべてありがたく受け取っています。
ほぼ日
真面目な姿勢が伝わってくる手帳でした。
三浦くん、ありがとうございます。

倉橋くんのほぼ日手帳

ほぼ日
続いては、新2年生でキャッチャーの倉橋くん。
よろしくお願いします。
倉橋
よろしくお願いします。
ほぼ日
倉橋くんの手帳を見ると、11月9日に、
「三浦の日記を見ろ たわけ」と
書かれてしまったんですね。
この日には、なにがあったんですか。
倉橋
練習にあまり身が入らなくて、怒られた時期です。
コーチから「自分はどうなりたいんだ?」と聞かれて、
日誌に「自分を変える」と書いたんですが、
その内容が悪かったから、「三浦の日記を見ろ」と。
三浦は、体調管理もしっかりできていて、
自分の意識が低かったなと、すごく感じました。
それから日誌の書き方も変えて、
天気、体重、スイング数、ご飯のグラム数とか、
しっかり書いて管理しようという形にしました。
ほぼ日
コーチからは、どんな指摘を受けることが多いですか。
倉橋
視点について教えてもらうことが多いです。
自分が技術面で意識していることを書くと、
コーチからの指摘もあって意見の交換もできます。
日誌を読み返してみると、
調子がいいときに意識していたことが
細かく書いてあるので、わかりやすいですね。
調子が上がってこないときとか、
気分が乗らないときには日誌の行数も減ったり、
内容も「やっつけ」みたいになってしまうので。
ほぼ日
日誌を書くときには、なにを気をつけていますか。
倉橋
まずは、チーム全体のことを先に書くようにしています。
野球はチームスポーツなので、
チーム全体の課題や、その日に起きたことへの感想、
どうした方がいいのかを先に書いてから、
あとで自分のことを書くようにしています。
目標の立て方も、チームでやりたいことと、
個人の目標との2つに分けて作っています。
ほぼ日
これは青山先生から伺ったんですが、
1年生は自分のことを書きたがる傾向にあるけれど、
倉橋くんはキャッチャーというポジション柄、
チームのこともよく見えていると聞きました。
チーム全体に目を配ろうと意識しているんですね。
倉橋
青山コーチと意見を交換する中で、
「キャプテンになるか?」みたいな話もいただいて、
先輩キャプテンの話を聞いたりしています。
全体を見られないと、キャプテンの役割はできないので。
自分はもともとキャッチャーではなくて、
入学時はサードだったんです。
意識が変わったのも、キャッチャーになってからです。
ほぼ日
キャッチャーに変わったのはいつですか。
倉橋
11月ですね。その頃は全然慣れていなくて、
試合に出させてもらっても結果が出ませんでした。
「キャッチャー無理なのかな」って迷っていた時期に、
「捕手で出る覚悟はあるか?」とコーチに言われました。
覚悟を決めてやらないといけないんだと気づいて、
自分が変われたんだと思います。
ほぼ日
悩んでいる時期にコーチからの熱いメッセージ、
これはうれしいですね。
過去のページで、読み返す日ってありますか。
倉橋
去年の12月、静岡県の常葉菊川高校の練習に
参加させていただいた日があって、
意識の違いを目の当たりにしました。
おかげで1月序盤は相当いい感じで取り組めて、
練習中もみんなに声をかけていました。
悩んでいるときに、よかったときのことを読み返して、
どうしたらいいのかなって考えるようにしています。
ほぼ日
常葉菊川は、甲子園で優勝経験のある学校ですもんね。
ところで、裏表紙に書かれた文字はなんでしょうか。

▲「身長-体重=90」など、目標が具体的。

倉橋
ウェイトトレーニングをして、
3年間で絶対に達成したい数字を書いています。
それまでの日誌では毎週紙が変わっていたけれど、
手帳なら、つねに見られる場所に置けるので。
この日誌はもう、自分の日常生活の一部です。
高校を出ても、大人になっても、
毎日、日記は書こうかなと思ってます。
ほぼ日
いい習慣ができましたね。
倉橋くん、ありがとうございました。

清水くんのほぼ日手帳

ほぼ日
清水くんは新3年生で、
寮長としてリーダーの役割を担っているそうですね。
これまで、日記を書く習慣ってありましたか。
清水
いや、まったくなかったです。
A3の紙に書いていた日誌はあったので、
手帳も、その紙の延長線上だと思っていました。
コーチからマーカーで線を引いていただいたりして、
あとで読み返す機会も増えましたね。
ほぼ日
清水くんの手帳を見ると、メモがかなり多いですね。
絵でフォームを確認することがあるんですね。
清水
これは、守備の指導をしていただいたときに、
自分のフォームがうまく直せなくて。
自分のダメな例と、いい例を絵で描きました。
そのページに書かれている青山コーチからの言葉も、
よく読み返すようにしています。
「苦しみから逃げる者は永久にその苦しみに追われる
 苦しみを乗り越える者は永久に楽になる」
これは特に気に入っている言葉です。
ほぼ日
ああ、いい言葉ですね。
自分の日誌から、成長を感じることはありますか。
清水
はい、あります。
あとになって読み返してみると、
時間がなくて何も書けなかったりする日が、
明らかにわかるんです。
自分の中で、その日の目標が達成できている日と
できていない日の差がだいぶあります。
あとは、コーチに指摘していただくことによって、
文章力もだいぶ良くなってきたと思います。
ほぼ日
変化がわかると、うれしいですね。
書いていてよかったことはありますか。
清水
その1日にあったことを読み返せるのがいいですね。
でも、普通に過ごした日は、書くことに苦労します。
何かを見つけなきゃいけない気がして。
ほぼ日
その一方で、紙を貼ってまで書いた日もありますよね。
すごい量を書いていますが、なにがあったんですか。
清水
自分がほんとうにダメで、かなり怒られた日でした。
書きたいことがありすぎて、書いたんです。
しかも、この日の日誌を読んだコーチから、
「書く量じゃなくて、行動で表せ」と言われるし。
ほぼ日
反省している気持ちはうかがえるんですけどね。
でも、それを高校生のうちから指導されることは、
社会に出てから効いてくると思います。
グラウンドでも、寮でも、忙しいと思うんですが
一日の中で、どの時間に日誌を書くんですか。
清水
練習が終わったら夜ごはんを食べて、
お風呂に入って、消灯の時間になるんですが、
自分は寮の消灯係なので、
寮の電気を全部消してから
学習室という部屋で毎日書いています。

▲コーチから「チームの鑑となる」というメッセージも。

ほぼ日
他の選手に指導することもありますよね。
清水
洗濯機の使い方が悪かったり、
布団のたたみ方が雑だったりすると
部屋を回っているときに注意します。
ほぼ日
その経験も、社会で役に立ちそうですね。
清水くん、ありがとうございました!

4月から新入生も加わり、甲子園を目指して
さらに切磋琢磨する豊川高校野球部のみなさん。
夏を迎える前に、また手帳を見せてくださいね。
がんばれ、豊川高校!

*後日談
このインタビューをおこなったあと、
青山コーチは4月から石川県・尾山台高校の
野球部監督へ赴任することが決まりました。
ほぼ日手帳を使った野球日誌のやりとりは、
4月からも引き継いでいただけるそうです。
春からの新年度、豊川高校も、青山コーチも、
実りある一年になりますように。

<夏につづきます>

2016-03-23-WED