さよならアルネ   2002-2009 and beyond... Arne
大橋歩さんの『アルネ』が、 12月15日発行の30号で終了になりました。 「さよならアルネ」。 ちょっとさみしいタイトルですけれど、 「すてきな誌面をありがとうございました」 「これからも、たのしい何かを待っています」 そんな、大橋さんへの感謝をこめての、 「さよならアルネ」。  「さよならアルネ」では、 11月に三重県立美術館で催された、 大橋さんと糸井の対談をそのままお届けします。 大橋さんのお仕事を振り返りながら、 終盤『アルネ』の話題へとつながってゆく対談を、 会場にいるような気持ちでおたのしみください。  またこの機会に、『アルネ』最終号と、 大橋歩さんのグッズを「ほぼ日」で販売いたします。 かわいいおまけつきの数量限定です。ぜひ!
 ありがとうございます、イオグッズはすべて完売いたしました。
Arne30-表紙
大橋歩さんのプロフィール。
Arneのこと。
大橋さんに登場いただいた 「ほぼ日」のコンテンツ。


第1回 同じ自分に会いたくない。
美術館の人 皆さん、お待たせいたしました。
これより大橋歩展アーティストトークを
始めたいと思います。
お話しいただきますのは
大橋歩さんと糸井重里さんになります。
どうぞよろしくお願いいたします。
ではさっそくおふたりに
お話をお預けしたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
お客さん (拍手)
大橋 (すこし緊張して)
こういうの苦手なんですけど──、
よろしくお願いします。
糸井 (にこにこ)よろしくお願いします。
お客さん (拍手、終わって、ふたりに注目)
糸井 いつもそうなんですけど、
大橋さんとお会いするとき、
「なにを話そうか」って
直前まで言ってるわりには、
こうして登壇すると、
なんとなく時間たっぷりにね、
過ごせるんですよね。
大橋 そうですね。
糸井 もし、ぼくが話に詰まっちゃったら、
会場の方も、きっと訊きたいこと、
いっぱいあるでしょうから、
「こんなこと聞きたいな」って、
ぼくに言ってくださいね。
お客さん わぁー(ざわざわ)。
糸井 まずは、なんとなく、
「こんなこと話そうかな」と
思ってたところから始めます。
改めて、展覧会場を拝見して、
大橋さんがお仕事を
ずーっとしてきた人だっていうことを、
今頃になって痛切に感じるんです。
自分も長いこと仕事をしてきていますが、
「長く仕事をする」っていうことについて、
ほんとはなかなかできることじゃないんだよね、
っていう、自慢話、しようかなと思って。
単純な話なんですけど、
「長くやる」ってすごく大変でしたよね。
大橋 やっぱり、大変でしたね。
糸井 デビューのお話は前にもお聞きしました
けれども、
「運よく」っていうイメージを
大橋さんはご自分ではお持ちですよね。
──そこで、終っていたかも
しれないじゃないですか。
大橋 はい、そうですね。
糸井 3年経ったら消えてる人なんて
山ほどいるなかで、
大橋さんはどうして終らなかったんでしょう。
その頃、ご自分では
「ずーっとやっていく」って思っていましたか。
大橋 いいえ。
若かったですからね、
きっとね、あんまり深く
考えなかったかもしれないですね。
最初『平凡パンチ』の専属になった時には、
いつかやめるだろうっていうのを
考えたことがなかったんですね。
たぶん私は続けるだけ
続けさせていただけるかな、
と思っていたんです。
けれども、やっぱり終わりが来るんです。
やっぱりそれは、今考えてみると、
時代‥‥ちょうど1964年からですので──。
糸井 東京オリンピックの年ですね。
大橋 そうです。
それで、日本はものすごい
変わり方をしますよね。
70年になるともう
外国からいっぱい文化が入ってくる。
だからやっぱり、
わたしも、変わるべくして
変わったのかなという気もします。
ほんとうはスタンスとしては、
ずっと継続して仕事を、
ということだったと思うんですけれど、
なんか私の中で‥‥。
でも、それはその時にならないと
わからなかったですね。
糸井 大橋さんが絵を描くっていう立場で
ずっと続けていくんだっていうことが頭にあっても、
今の、世の中の仕事の付き合い方って、
野球の選手の話とおんなじで、
1年契約がどうだとか、
3年契約したら長いって感じるんですよね。
大橋 ええ、そうですねぇ。
糸井 一つ一つの仕事にしても、
たとえば建築やってる人だったら
一つの物件が終ったら、そこで終わりますし、
長いゲージで考えるってことは
もうなくなってるんですね、社会全体が。
そんなことが、仕事の仕方として
みんなにとって普通になっちゃってるときに、
たし算をすると、何年やってきたんでしょう、
大橋さんは。
大橋 ええと、えーと、45年から46年ぐらい。
糸井 もう半世紀になってしまうわけですよね。
大橋 そうです。
糸井 それだけやってくるっていうこと自体が、
やっぱりすごいことだと思って。
大橋 今、思えば、そうなりますけど、
それはぜんぜんよくわからないうちに、
今まで来た、という気持ちが、
なくはないんです。
糸井 1個ずつの仕事が長いですよね、まず。
大橋 いや、皆さんは短いっていいます‥‥
そうでもないのかな。
『平凡パンチ』の表紙が7年半、
「ピンクハウス」は8年ぐらいになった時に、
自分でちょっと難しくなってきて。
でも、やっぱり10年が区切りだから、
10年、させてもらったんですよ。
そして『アルネ』は7年ちょっとなんですけど。
‥‥長いですか。
糸井 この会場には若い方がたくさんいらっしゃるし、
おそらくイラストを描きたい方とか、
フリーで仕事をなさってる方とか、
たくさんいらっしゃると思うんですけど、
みんな7年続く仕事なんて
想像もできないんじゃないですかね。
大橋 ああ、そういうことではね、
すごく幸せだと思います。
糸井 ぼく長い付き合いをするほうなんですけども、
広告の仕事をやっていた時のことを考えると、
7年っていうのは、なかなかないですね。
大橋 そうですか。私、皆さんにね、
「すぐにやめちゃう」とか言ってるんですけど、
でも糸井さんがそう言ってくださると、
なんだかすごくよかった。
糸井 展覧会場をぐるっと回ったら、
誰でもわかると思うんですけど、
やっぱりおんなじものを描いてるんじゃなくて、
変わりながら続いてる、変化してるということと、
同じリズムで続くっていうこととが、
両方成り立ってて、
「変わらないと長くはできないんだな」
っていうことを思い知りますね。
大橋 そうですか。よかった。
私はすぐ変わっちゃうから、
飽きっぽいと思ってたんですけど。
そうですよねえ。
糸井 今回の大橋歩展のポスター、
『平凡パンチ』の表紙ですよね。
『平凡パンチ』の表紙って、
あんなふうな絵がずっと続いてたと、
みんな頭の中では思ってるんですね。
だけど、ぐるっと回るだけで、
どれだけ技法を変えたり、
デザインに委ねたり、
デザイナーと一緒に冒険をしたり、
自分の画材まで変えてるときがありますよね。
あれだけ変えてるっていうことは、
ぼくらは読者の側からは
あんまり意識してなかったですね。
大橋 そうですね、ああやって並べてもらうと
本当にはっきりしますね。
糸井 人っていうのは案外そういうもんで、
おんなじやつと会ってるようなつもりだけど、
相手はあのぐらい
変わってるのかもしれないですね。
大橋 そうか、そうですね。
糸井 大橋さん、ご自分で
「飽きっぽい」と思ってらっしゃるんですか。
大橋 はい。飽きっぽいと思ってるんです。
とにかくおんなじ‥‥たとえば、
昨日のつづきぐらいなら大丈夫なんですけど、
ずうっとつづきになると、
「これ、今やりたいことかな?」
って思ってしまうんですよ。
スタイルを変えないという発想でしたら、
世の中にそういう方は、
たくさんいらっしゃるんですね。
それはそれで、すごく突きつめて、
すごくいいものをなさるからいいと思うんですけど、
私は、そこへ行かないんです。
ある程度のところまでくると、
なぜか、違う描き方あるかもしれないとか。
で、他の方たちからは、
飽きっぽいっていうのか、
「変わるね」みたいなことは言われてきましたので。
草森紳一さんが、
前に仕事をさせてもらったんですけれども
私のことを「脱皮型だ」と
おっしゃられたことがあったんですよ。
そうすると、なんかちょっと
カッコいいんですけどね。
糸井 変化してくわけですよね。
脱いでは変化していく。
それは自分もそういうタイプだったっていう
気がするので、とてもよくわかるんですよ。
つまり、同じものとは、自分も会いたくないし、
相手側から見たら
自分はいつも同じだったら
飽きるだろうなっていう、
人の目が自分の中に
ついてるような気がするんですね。
大橋 ああ、わかります。
「そう思われるの嫌だ」みたいなのあります。
糸井 そうですよね。
お笑いだったら、
「その話、もう聞いたよ」って言われたら
おしまいですものね。
大橋 ふふふ、私、会話では時々やっちゃいます。
糸井 表紙の絵のように、
ずっとシリーズでやってることで、
「だいたいこういうものが出てくるでしょうね」
っていうのが期待どおり出てきたら、
「いいね、変わらなくていいね」
って言う人もいるかもしれないけど、
毎回ぜんぶを見ている人からは、
「おまえ、ぜんぜん変わんないな」
って言われそうで、イヤですよね。
大橋 それはイヤなほうなんですね、きっと。
同じような人もいるし、
それは悪いことではないんですけれど、
自分においては、続けていけなくて。

(つづきます)

2009-12-15-TUE
 
次へ

更新の予定
明日、スタートします。
第1回 同じ自分に会いたくない。
第2回 85点、60点、120点。
第3回 つけまつ毛とソバカス。
第4回 無限のおままごと。
第5回 わたしは、おんな。
第6回 昔の自分が偉いなんて。
第7回 こんなに抜けられるんだ!
第8回 男の子、いいなぁ。
第9回 貧しさが育てたものと、豊かさが育てたもの。
第10回 慢心
第11回 「アルネ」は島、「ほぼ日」は船。
最終回 迷いません。

大橋歩さんの生活用品、 「IOGグッズ」のこと。  大橋さんにうかがいました。
完売のおしらせ

12月15日(火)から販売しておりました
「IOG(イオ)グッズ」の商品は、完売いたしました。
予想を上回るたくさんのお申し込みをいただきまして、
ありがとうございました。

「イオグラフィック」さんには、
できるかぎりの量を
「ほぼ日ストア」のためにご用意いただき、
こちらからお買い求めできるようにしていたのですが、
今回、すぐに完売してしまったため、
お求めいただけなかった方も
いらっしゃるかもしれません。
今回ご紹介した「イオグッズ」は、
「イオギャラリー」のHPの「NET SHOP」
ご購入できるものも何点かございます
(2009年12月16日現在)。
「ほぼ日ストア」特典のおまけはつきませんが、
ほかにもいろいろすてきな
「イオグッズ」がありますので、
ぜひ、訪れてみてください。


メールをおくる
ほぼ日ホームへ
(c)HOBO NIKKAN ITOI SHIBUN