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── 東さんは現代美術家として活動されていて
ペンギンのパラシュートは
その傍らで制作したものと聞きました。
そうなんです。
普段は土で、
祠みたいなものを作ってまして。
── 祠とはどのようなものですか?
僕は、どうしたら建物が成り立つかという
建築の構造に興味がありまして、
人が入れるような祠を
作品として作ってきたんですね。
ある時、知り合いの方から、
「ちょっと遊べるような作品も
 出してよ」
と言われたので、
以前から自分の中で温めていた
パラシュートのアイデアを形にしたわけです。
── パラシュートを作りたいと思われた、
そもそもきっかけは何だったんですか?
何でしょうねえ。
子どものころ遊んだ花火の中に
パラシュートのオモチャが入っていたり
テレビでスカイダイビングの映像を
見たりしたのが原点ですかね。
その瞬間に、
パンと開くおもしろさに惹かれて
それがどういう仕組みなのか
ずっと気になっていました。
── パラシュートもやはり仕組みや構造に
興味を持たれたわけなんですね。
それをペンギンにしようというのは
どういうところから?
最初は丸いパラシュートを
作ってたんですよ。
「これ、もうちょっと膨らむと
 動物の形になるな」
と思って、
今度は、丸いパラシュートの下に
動物の体がついてるタイプを
制作しました。
作りながら、少しずつ進化して
体全体が膨らむペンギンになった
という感じです。
飛べない鳥が空を飛ぶなんて
夢があるでしょう?
それもあって、ペンギンにしました。
── そうなんですね。
それにしても、このパラシュート、
放り投げるとふわっと膨らんで
ちゃんとペンギンの形になる。
うまく飛ばすために、
構造上の工夫を
いろいろされているのですか?
というよりは、まず段ボールで
立体の原型を作るんですよ。
ペンギンを上からみたところ、
横から見たところなんかの断面を
それぞれ板状に切り出して
貼り合わせていく。
段ボールの立体ができたら
まわりに紙を貼って石膏を塗って
型を取るんですね。
── もうその段階で、立派な作品ですね。
立体の原型ができたら、
その上に直接線を引いて
パーツにする部分を決めていきます。
あとはそれを元に型紙を起こして
布を裁断して、ミシンで縫います。
それで案外うまくいくんですよね。
── 原型がしっかりしているから
なんでしょうね。
この大きさも、関係あるんですか?
そうですね。
できれば、飛ばしたその瞬間だけ
ペンギンに出会えるようなものに
したかったんです。
小さすぎると、
飛ばす前からきれいに形が出てしまって
瞬間のおもしろさがないんですよ。
例えば子どもが遊んだときに
瞬間しか出会えないことに
楽しさを感じたり
そこから何かを
読み取ってくれたらいいなって。
── 瞬間のおもしろさ、
すごくわかります。
大人でも、つい何回も
飛ばしたくなってしまいますから。
この作品は、
「自然を捕まえる」
というコンセプトもあるんです。
目に見えない空気だったり、
重力だったり。
そういうものに
実体を与えるというのかな。
── ペンギンを通して
目に見えない自然の原理を感じる、
ということですかね。
あと僕にとっては
これがいいコミュニケーションの
ツールにもなっているんです。
── といいますと?
海外に滞在しながら
作品を制作するという
アーティスト・イン・レジデンスに
選ばれて
1か月、ケニアのナイロビに
滞在したんですけどね。
自作のパラシュートを見せると
子どもも大人も寄ってきて
言葉は通じないけれど
「わあ楽しいね」って。
それがきっかけで
「うちに寄ってきなよ」
なんて言ってもらえたり。
── ペンギンを、
いつもカバンの中に忍ばせて……。
何かのときに、
こうパッと広げてみると。
── ペンギン以外の動物があっても
楽しいですね。
これからやろうと思ってます。
モグラとかダチョウとか、
飛べない鳥シリーズで。
美術とプロダクト、
活動の方向性は違うけれど、
どっちも同じ種から
いけるんじゃないかと
思っているんです。
── まずはペンギンが、その第一歩ですね。
これからも楽しみにしています。


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