HOBONIKKAN ITOI SHINBUN

ほぼ日のおかし 私のためのおいしいもの

「これだよ!」のおかしを見つけました。オリオリのパイ、特別販売します。

おかしは姿も味も魅力的です。
「あれを食べたいな、さぁ食べるぞ、ああ~」
という気持ちの高まりが、夢とたのしみを増やします。
糸井重里やほぼ日乗組員が出会ったおいしいおかしを
ひとつずつ紹介していくこと、
これまでずっとやりたかったのです。
自分だけで食べてもよし、
誰かとの時間をおかしで花開かせてもよし。
魅力をみなさんと分かちあいながら、
ほぼ日からおかしをお届けしていきます。
賞味期限や生産数がそれぞれ異なるので
販売のたびに形式が変わりますが、
どうぞその都度確認しながら、おたのしみください。
まずは、パイです!
イラスト : 丸山素直

糸井重里のはなし

親が食べてない。

糸井
これはパイだから軽いし、
おつかいものにもいいと思いますよ。
賞味期限も2週間ありますから。
‥‥あなた、たくさん食べますね。
ほぼ日
はい‥‥。
この企画の発案は、
さきほどからの話でわかるように、
私ではなく、最初に食べた糸井さんです。
糸井
はい、そうです。
ほぼ日
「こういう企画があるから、
おいしいものを好きなあなた、担当しませんか?」
と話をいただきました。
そのとき「待ってください」と申しました。
私は、自分がおいしいと思うもの以外できない、と。
そして覆面で、自由が丘のオリオリまで、
パイを買いにいったんです。
糸井
どんな変装で。
ほぼ日
コートの襟を立てて行きました。
もちろん、新入社員のご家族だったので、
すぐに顔バレしてしまいました。
でもまぁ、なんとかヘラヘラごまかして
5枚ほど買って帰って、家で食べました。
糸井
で、どうでした?
ほぼ日
自分で全部ひと晩で食べてしまったんです。
糸井
わかる。
ほぼ日
週末に実家に帰る予定があったので、
翌日、2連チャンで
自由が丘に行くことにしました。
すると、その日は完売で、
オリオリは閉店してました。
糸井
そうなんだよね、売り切れてるときもあるの。
ほぼ日
「うわぁぁ!」となって、
いま担当となり、ここに座っているわけです。
私が言いたかったのは、つまり、
親に食べさせたいと考えたことです。
「実家に買って帰りたい」と
すぐに買いに走ったのは、
親はこのようなパイを
食べたことがないだろうな、と思ったから。
糸井
そうだよね、伝えたいよね。
ぼくも義母に食べてもらったから、
その気持ちはわかるよ。
「これ、お父さんやお母さんの知ってるような
パイじゃないんだよ」
って言いたいよね。
ちょうどいい、ストライクのおいしさっていうか。
ほぼ日
コテコテにモリモリですよ、
というかんじじゃないのに、
シンプルにおいしいんです。
親の時代より、
ベーシックなおいしさがあがったというか。
糸井
きみたちはいよいよ明日、
オリオリのパティシエさんに
会いにいくんでしょう? 
ほぼ日
はい、おいしさの秘密を
訊いてこようと思います。
糸井
おかしの職人さんというのは、
たのしみを作り出す人ですから、
たいしたお仕事だと思います。
さきほども言ったように、
たのしみは、文化そのものです。
ほぼ日
パティシエは魔法使いのようですね。
糸井
そう。
ほぼ日
「文化は人の毎日を豊かにするもの」と聞いて、
昔、吉本隆明さんから伺った話を思い出しました。
戦争中、もしくは戦後すぐのとき、
石鹸が配給されたらみんながすごく喜んだ、と。
食べることも大事だけれども、
身のまわりを清潔にして病気を防ぎ、
さらには身なりを整えたりすることが、
みんなの大きな喜びになっていた、と。
糸井
ぼくたちもそういったことを忘れずに
仕事していきたいですね。
かたちのあるものも、ないものも、
いろんなたのしみを生んだり伝えたり、
していきたいものです。
ほぼ日
このおかしの連載の、第1弾となるパイは、
とにかくつくるのに手間がかかるので、
数量が限られています。
少ない数がスタートとなってしまいますが、
これを皮切りに、これからもおいしいおかしを
ご紹介していきたいと思います。
糸井
つぎのおかしも、考えているんでしょう? 
ほぼ日
はい。
なるべく早めにまた、パイにつづくおかしも
ご紹介していければと思っています。
いずれも「おいしい」ことを出発点に
していきたいです。
 
そして、私たちは
このパイをつくっている人に会いに、
自由が丘まで行くことにしました。

自由が丘の「オリオリ」というお店です。
(明日はお店で話をうかがいます)
2020-04-10-FRI