ことしの海大臣は、こんな味です。
  • 壱
  • 「遠くから、おいしさの大軍が押し寄せてくる」
    ‥‥と選考会のメモに書いたひとがいました。
    「わかる!」と、一同。
    バリッと厚く、香ばしさがたっぷりなので、
    まずその印象で「うまいっ!」となるのですが、
    そのあとも歯切れよく、口どけもかるく、
    さらにシャクシャクとした噛みごたえが続きます。
    しっかりした甘みがあり、
    塩味とのバランスもよいので、
    「あれ? どんどんおいしくなってきたぞ」
    と感じるのですね。
    ほんのすこし残る、海藻ならではのヨード香も、
    うれしい個性のひとつです。
    これをごはんと合わせたら‥‥ああ、なるほど。
    香ばしさが消えることなく、
    といってごはんを打ち負かすこともなく、
    むしろ引き立てる。
    なかなか、こんな海苔はありません。
  • 弐
  • さくり、とした歯ごたえのあと、
    口のなかでさっと溶けて、
    「ふわり」と広がる甘み、うまみ。
    いきなりガツン! とくるのではなく、
    奥ゆかしいほどに、食べているなかで
    個性をつよくしていく海苔です。
    ことしの海苔をふたつに分類するならば、
    雄々しい「ますらお」な印象の
    つよい海苔が多いのですけれど、
    そんななかでこの「弐」は、
    「たおやめ」的なやさしさを持っています。
    海苔の繊維が長いからだと思いますが、
    溶けたあとのおいしさが長持ち。
    しかも、あとを引かない、
    すっきりとした後味のため、
    またすぐ次の一枚が食べたくなる海苔なのです。
  • 参
  • 海苔のおいしさを分解していくと、
    いろいろな要素があることに気付きます。
    口元に寄せたときにふわっと立ち上がる香り、
    「ぱりん」とした歯ごたえ、香ばしさ。
    やがてひろがる塩味、甘み、
    ほんの少しの、いい感じの苦味と酸味がまじり、
    渾然一体の「うまみ」となるところ。
    「参」は、そのすべての要素を持った海苔です。
    乾物ならではの、すこし枯れたような印象は、
    噛み続けたときのシャクシャク感のなかで、
    口のなかで瑞々しく「海」を思い出させるように
    変化をしていきます。
    そして、食べ終わった後も、海藻ならではの
    ほんのりとしたヨード香がのこる──。
    そのままでもじゅうぶん感じる甘さは、
    ごはんを巻いたとき、さらに力を発揮。
    おつまみによし、食事によしの、
    オールマイティな海苔と言えそうです。
  • 肆
  • 「かりっ」
    「ざくざく」
    「ぱりん!」
    手にするとしなやかさを感じる海苔ですけれど、
    口にしたとき、最初に驚くのは、
    そんなふうに噛みごたえのある食感です。
    そして「肆」は、そのあとがさらにたのしい。
    口に入れたはしから
    すっと鼻に抜ける香ばしさにつづいて、
    噛むほどに広がっていく、甘み。
    そして、シャクシャクとした噛みごたえの中から、
    バランスのよい、ほどよい塩味が感じられます。
    口に残る香りもよく、後味すっきり。
    「清流に育つクレソンのような、
    さわやかな後味がありますね」
    という選考会での感想もありました。
    この個性、酢めしやお魚との相性もよさそうです。
  • 伍
  • 「いちばん最初の海大臣を思い出します」
    誰ともなく、選考会でそんな声がこぼれました。
    そう、海大臣を知らない人に食べてもらうとき、
    「まず、そのまま一枚食べてみて!」と言いたくなる、
    それがこの「伍」かもしれません。
    なにしろ歯切れがいい。かりんっ、という音がしそう。
    そして口にした途端に、焼海苔ならではの香りとともに、
    ぱぁっと甘さが広がります。
    では歯ごたえと香り、甘さだけが個性なのかというと、
    それだけではありません。つづいて、
    覆いかぶさるように塩味とうまみがやってきます。
    ミネラル感を感じるかたも、いることでしょう。
    そのバランスのよさたるや‥‥。
    しかも後味に「コク」が残るので、
    しみじみと「おいしいねえ」と言いたくなるのです。
    ついつい、このまま食べ続けてしまいそうですけれど、
    「ごはん」とあわせたときの凄みときたら!
    海苔とごはんそれぞれの「いいところ」が、
    口じゅうに、ふわっと広がりますよ。
  • 陸
  • 「味がたっぷり」
    ひとことで言うと、そんな印象の海苔です。
    ちょっと説明がしづらいのですが、
    「芯がしっかりしている」と言いますか、
    噛んでいると、甘み・塩味・うまみが、
    口のなかで「ぐんっ」と立ち上がるのです。
    しかも、シャクシャクとした歯ごたえが続きますから、
    食べていてたのしいだけでなく、
    「あれ? 甘みが強くなった?!」
    という印象がうまれるほど。
    (おそらく、甘みが“残る”のだと思います。)
    そうそう、香りもちょっと面白い。選考会では、
    磯の香りの奥のほうから、独特の熟成香、
    チーズで例えるならウォッシュタイプの、
    食欲をそそるおだやかな芳香を感じました、
    というひとも。
    見た目では選ばない「海大臣」ですから、
    この「陸」も、表面にすこし曇りがあります。
    でもこういう抜群の個性の海苔を紹介できるのですから、
    「10年続けてきて、よかった」と、しみじみ感じます。
  • 漆
  • そうだ、海苔って、海そだちの農作物なんだ!
    そのことをあらためて感じさせてくれるのが
    この「漆」です。
    ツヤがあり、パックを開けたときから
    磯の香りが立ち上がる。
    いちまいいちまいに厚みがあって、
    ほかの「海大臣」に比べると、
    さっと口どけするタイプではありませんが、
    それだけに、香ばしさが長くつづきます。
    海そだちらしい塩味も、つよめ。
    そして食べているうちに、甘みが出てくるのも
    この海苔のおもしろいところです。
    そのままわさび醤油でもつけて、ぱりんっ、と
    お酒のおともに、なんて思いますけれど、
    じつはごはんと合わせたときに変化して、
    みごとに寄り添うという柔軟さも。
    いろんな世代が集う食卓で、
    人気者になること、まちがいありません。
  • 捌
  • さてここからの「捌」「玖」「拾」3つの海苔は、
    これまで紹介した海苔とは、
    ほんのすこし産地がちがいます。
    同じ有明海なのですけれど、佐賀寄りの海域で、
    筑後川から海に流れる栄養がたっぷりのエリア。
    その味をどう表現したらいいものか、
    ちょっと迷ってしまうのですけれど、
    「若い感じ」と言うのが近いように思います。
    シャキッとみずみずしく、
    元気な野菜にも通じるようなはつらつさがあります。
    その3つの海苔のなかで、
    この「捌」の個性は「ほっとする、やさしさ」。
    口どけのよさは、繊維の細かさゆえ。
    ほんのりした甘みがひろがって、
    食べ終わっても味が残るので、あとをひきそう。
    ついつい「もう1枚」ということになりそうですよ。
  • 玖
  • 佐賀寄りの海域から穫れた3つの
    「あたらしい海大臣」。
    筑後川から海に流れる栄養がたっぷりの海域で
    のびのび・すくすく育った、
    若々しく、活きのよい印象の海苔です。
    この「玖」の個性は──、
    乾物にこんな形容をするのも
    なんだか不思議な感じがしますけれど、
    音楽に例えるなら「高音の伸びがいい」、
    というのが選考会で出た意見でした。
    スッキリ、さらりとしたうまさで、
    口どけよく、塩味と甘みのバランスがいい。
    厚みがあるのに、硬くはなくって、
    食べ応えは「ふわり」なんです。
    心地よく、スッと入ってくる印象なのですね。
  • 拾
  • パリッとした弾力、
    シャリッとした歯ごたえで、
    雄々しいインパクトのある海苔です。
    佐賀寄りの有明海、
    筑後川の栄養が豊富に流れ込む海域で
    すくすく、すなおに育った若々しい
    「あたらしい海大臣」のなかで、
    この「拾」がいちばん個性が強いと言えそう。
    食べてすぐの元気な食感や海藻感はもとより、
    口どけよく、なのに食べ応えがあり、
    甘みと塩味が調和してゆく感じは、
    健康な海産物を食べるうれしさ、たのしさを
    じゅうぶんに味わわせてくれます。
    「食べ終わりかけたとき、
    まるで上質なチーズのような独特の旨みを、
    遠くで感じることができる!」
    という意見も、選考会で出ていましたよ。
  • 拾壱
  • こちらの「しお」のベースになっている海苔は、
    同じ有明海でも、佐賀寄りの海域で穫れました。
    筑後川のゆたかな栄養分がそそぐエリアで、
    のびのびと育った、若々しい印象の海苔です。
    シャリッとした食感、さらりとした口どけ。
    「かろみ」のあるうまさで、
    ごはんと合わせると香ばしさがきわだちますから、
    家庭では、こどもたちが夢中になっちゃうかも?
    ──選考会ではそんな感想が出ていました。
    このおいしい海苔に、植物油をふきつけて
    自然塩をまぶしてつくったのが「拾壱 しお」。
    「かろみ」をのこしたまま、「うまみ」を足して、
    いくらでも食べられそうな味の海苔をつくりました。
    そのままでもおいしくいただけますし、
    もちろんごはんに合わせても、どうぞ。
  • 拾弐 しお
  • しお加工をする海苔は、そのまま食べておいしい
    「海大臣」の候補からえらびます。
    しお加工に向いている海苔の特徴は
    小穴が多いこと(しおをまぶしやすい)。
    そしてほかの海苔に比べて、
    もともとの味が、やさしいこと。
    「拾弐 しお」のベースになった海苔は、
    さわやかな風味があり、口のなかでほどけにくく、
    ほんのすこしの苦味があって、後味はさっぱり。
    やわらかな繊維がからむような食感で、
    噛むほどにしみじみ甘みを感じるタイプです。
    ここに植物油をふきつけて自然塩をまぶすことで、
    「うまみ」のうんと強い、
    「しお加工」の海苔がうまれました。
    そのままおつまみにもなりますし、
    サラダやパスタ、サンドイッチの食材にしても。
    あたたかいごはんをのせて手巻きにすると
    その風味がよりたのしめますよ。

ひとつだけ、えらぶなら。

「これがいちばん!」なんて言えません。
なにしろ今年は(量ではなく質の意味で)海苔のあたり年。
不作だった昨年は、「海大臣」に適する海苔をさがすのに
ちょっと苦労をしてしまったのですけれど、
ことしは12種類が揃うという状況です。
そのなかからひとつだけえらぶとしたら?
ああ、どれが、とは言えません。ぜんぶ大丈夫です。
「えいやっ!」で決めてください。

ただ、「海大臣は初めて」というひとなら、
(「しお」を除き)プレーンな焼海苔である
「壱」から「拾」からひとつ、
おえらびいただくのがよいかと思います。
ちなみに「壱」から「拾」のうち、
「壱」「弐」「参」「肆」「伍」「陸」「漆」が、
これまでの海大臣とおなじ海域で穫れたもの。
いわば「ベテラン勢」、
いままでの海大臣をご存知でしたらば、
違和感なく「うまいっ!」と言っていただけると思います。
「捌」「玖」「拾」この3つの海苔は、
ほんのすこし海域がちがいます。
といっても穫れたのは同じ有明海のなかの、
佐賀寄り、筑後川から海に流れる栄養がたっぷりのエリア。
この海苔はみずみずしい「若手」と表現するのが
適しているかもしれません。
「そんなにちがうの?」と言われると、
それほどまでには、ちがいません。
どちらがいいということじゃなくって、
「ほんとうに微妙な味のちがい」です。

ふたつ、えらぶなら。

ほんのちょっとだけ、穫れた海域が異なることで、
たのしい味のちがいがうまれた今年の海大臣。
海域別に「壱」から「漆」まででひとつ、
「捌」「玖」「拾」からひとつ、というのはいかがでしょう。
あるいは味のついていない(でも味は深いですよ!)焼海苔と、
しお加工をしたタイプをひとつずつというのもよさそうですよ。

みっつ、えらぶなら。

海域別に「壱」から「漆」まででひとつ、
「捌」「玖」「拾」からひとつ、
そして「しお」からひとつでいかがでしょうか。
ふだん味付け海苔はちょっと苦手というかたにはぜひ、
ふだん味付け海苔を食べるかたなら尚更、
「海大臣の味付け海苔」を知っていただきたいなと思います。
もちろん「しお」加工をしていなくても
じゅうぶん味の濃い海大臣ですから、
あえて「しお」を外すということも、アリだと思いますよ。

「海大臣っておいしいよ!」と
人にあげるなら。

プレゼント用。こうなると、間柄がどうかとか、
どういう好みの人なのかとか、
いろいろ考える要素が多いので、
相手が「海大臣を知らない人」だと仮定します。
「あの人を、びっくりさせたい」という気持ちで──。

そうするとやっぱり「壱」から「拾」のなかから
ひとつを選ぶと思います。
そちらのほうが「いつもの海苔と、こんなにちがう!」って
わかっていただける気がしますから。

そのときに、贈答用と自分用をどうするか、
ちょっと悩みますよね。
食べ物をシェアできる間柄であれば
ちがう種類を買ってはんぶんこ、というのもいいですよね。

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