ぼくらが新しい仕事場に引っ越しをするとき、
フロアの一部分に、小さいギャラリーのように使える場所があることに気づきました。
大きな展覧会はできないかもしれないけれど、
ここは、いろんな作品を展示したりするには、
悪くないような気がするぞ‥‥。
内装を計画するとき、そういうつもりで設計してもらって、
実際に、ギャラリーにも使える会議室のように設えてもらいました。部屋のニックネームも、そういうつもりで、画廊のように、「スペースAOYAMA」と付けておきました。

いつか展覧会をはじめよう、と思っていましたが、
誰と、どんなふうに、ということは、なかなか決まらないままでした。

でも、オープニング記念企画にふさわしい、すばらしい作家と出会えました。「えつこミュウゼ」さんです。
スタイルのいい人が、周囲の目を惹きつけずにはいないように、歌のうまい人がみんなの耳をそばだたせずにいないように、ぐぐっと人のこころをつかみとってしまう絵を描く磁力の強い作家でした。

この作家のユニークでポップな魅力を、まるごと感じてもらえるような展示の方法をと考えていて、版画としてカンバスや紙ではなく「シャツ」に印刷するというやり方を採用しました。シルクスクリーンやインクジェットの技法を最大限に発揮して、満足のいく表現になりました。
ただ、この版画は「着られちゃう」のです。もともと「Tシャツ」に刷ったのですからね。
作家自身も、「どんどん着ます」と言ってますし、関係者も着たい着たいと期待しています。着られるようにつくったのですから、それは当然のことですが、「飾っておくだけ」ということも多いに理に適ったことであるので、この作品のための木製のオリジナル額も特別に創りました。

仕事の場の一部分という場所での、不思議な作家の、奇妙な展覧会となりましたが、このおもしろみを、まるごと感じとっていただけたら幸いです。

なお、100号サイズの、カンバスに描いた新作も展示いたしますが、この大きさは「Tシャツ」にするのは無理なので、そのまま会場に展示させていただきます。

どうぞ、「えつこミュウゼ」という作家の妖しくも愛らしいスピリットを、ふんだんに浴びてください。

「スペースAOYAMA」代表 糸井重里

今回、わたしたちはアーティスト・えつこミュウゼが描いた原画から、全16点の版画作品をつくりあげました。
それぞれの絵の特徴を忠実に再現するために、シルクスクリーンプリントと、インクジェットプリントという2つの印刷技法を用いています。
シルクスクリーンでは、2種類のインク(顔料インク、ラバーインク)を、絵によって使い分けています。
特筆すべきは、その版数の多さです。
最大で11版、つまり1つの作品に11度刷り重ねる作業を経て、完成しています。

また、今回は作品を所有し、鑑賞することを目的とするのではなく、身につける、つまり着ることができるアート作品ということで、わたしたちはそのカンバスに「Tシャツ」を選びました。
Tシャツのボディは、スタンダードな形のSサイズ、Mサイズ、そして新たにFeminineボディを用意しました。
ぜひ、えつこミュウゼの作品を着て、お出かけください。
なお、すべての作品の背面右下には、えつこミュウゼ直筆のサインが入ります。
さらに、今回Tシャツを着ていただくことはもちろん、鑑賞作品として飾っていただくこともできるように、限定で額縁もご用意しました。
(額縁について詳しくは、こちらをお読みください。)