イセキさんから
「三國さんと、ニットにちなんだジュエリーを作りたい」と
お話をいただいた時には、それはもううれしくて、
二つ返事でお引き受けしました。

アンティークジュエリーへの探究心と愛情、
そこから培った独自の審美眼、
いわば「イセキ好み」とも呼べるような、
筋道の通ったセンスを感じさせる
彼女のオリジナルジュエリーのファンでしたので、
「ニットとイセキさんのジュエリー！？

おもしろそう！やりましょう、やりましょう」と。

それが数ヶ月前のことです。

コラボレーションとは言っても、
わたしはあまり大したことはしていません。

最初のアイディア出しと、
制作過程でのディテイルの確認くらいでしょうか。

イセキさんには「こういうものが作りたい」
という着地点がしっかり見えていて、
さらに、作品を理想に近づけていこうとする情熱は
小型のハリケーン並みなので、
わたしはハリケーン・アヤコが必ずや目的地に到達する、
ということを確信しながら、
えっちらおっちら（そしてわくわく）並走していた、という感じです。

と書きながらも、実はわたしがさせていただいたことがちゃんとあります。

それはまず、ジュエリーになる羊の容貌についてのリクエストです。

どんなものを作るかについてのおおよその案が決まった後で、
たくさんの羊候補の中から好みの羊を選ばせていただきました。

わたしが一番好きだと思ったのは、
図らずもシェットランド諸島で
飼育されているシェットランドシープでした。

彼らは、わたしが自分のニット作品で
最もよく使う毛糸（シェットランドヤーン）の
原毛を背中に生やす、
常々わたしが大きな恩義を感じている羊です。

シェットランドシープのセーターガーズと指輪とは……！

うむむむ！！！

このスペシャルな感じ、
編みものが好きな人にはわかっていただけるのではないでしょうか。

こんな素敵なものがこの世に生まれることに関われたのは、
わたしにとって、すごく誇らしいことです。

そしてもう一つ。
リングの子羊の瞳の色を選ばせていただきました。

ヴィクトリア時代のジュエリーを手本に、
サファイアの青、ダイヤの無色透明、
ガーネットの赤の３つの中からどれか、
とおっしゃるので、赤い瞳の子羊が一番可愛いと思う、
と、ガーネットの赤にしていただきました。

ただ赤は赤でも、もしルビーを使えたら完璧よね…
と心の中で思っていたら、
はじめ、宝石問屋さんに「ない」と言われていた
極小サイズのルビーが幸運にも見つかって、
「ルビーで行けます」とイセキさんがおっしゃった時のうれしさ！

なんだか自分に都合のいい夢を
見ているような気持ちになったほどでした。

あららら、長くなってきました。

イセキさんとかジュエリーとかについてならば
いくらでもお話ししていられるのですが、
そろそろ切り上げましょうね。

数ヶ月のやり取りの末に仕上がった
セーターガーズと指輪を先日見せていただいて、
その制作過程を知りながらも、
さらに想像を超える出来栄えだと思いました。

可憐で、素朴で、華やか。

これを購入される方はきっと、
ずーっとうれしく使い続けていかれることと思います。

わたしも自分のために子羊の指輪を買わせていただきました。

この指輪をつけたら、編みものをしながらも、
子羊の赤い瞳と時々目が合ったりするんでしょうね。

大切に作られたいい指輪って、
身に着けるたびにちょっとした感慨があるんです。

物なんだけれど、自然に備わったキャラクターを感じて
敬意を表したくなる、というか。

だから指にはめる時にはいつも、あいさつします。

可愛いね、きれいね、今日もよろしくね、と。

イセキさんのところから来たこの子も、
うちの大事な子として、これから末長く、
大切にお付き合いしていきます。

三國万里子