おおむら・たけし

1977年福岡県生まれ。
高校卒業後美容師の道へ。
その後、陶芸家岩田圭介氏に師事、
2001年岐阜県立多治見工業高等学校
陶磁科学芸術科卒業。
多治見市のレンタル工房「studio MAVO」を経て
現在は福岡県にて制作。



僕の師匠は陶芸家の岩田圭介さんです。
そうです、石原稔久さんと同じ師匠筋です。

岩田さんのところに行くまで──、そもそもは、僕、
高校時代が終わってから美容師になったんです。
ところが想像していた世界とはまったく違って。
なんとか頑張って1年半やったんですけど、
何か違うなと思って辞めました。
美容師は接客の仕事が大きいんですね。
僕にはそれが全く向いてなかった。



その頃、岩田圭介さんに出会うんです。
僕の実家は居酒屋で、
いい器があるって使い始めたのが
偶然近くで開窯なさっていた岩田さんの器でした。
それがきっかけだったんです。
これだ! と。
衝撃を受けて岩田さんのところに押しかけました。
なりふりかまわず行って、でもつながりもないから、
「髪切りましょうか」って‥‥。

いや、笑われますけど本当にそうなんですよ。
それから岩田さんとのお付き合いが始まりました。

なぜ岩田さんに惹かれたかというと、
岩田さんのつくるものには
ものすごく感情が溢れているんです。
僕は幼い頃からいつも周りのものに
いらいらしていたんです。
たとえば大量生産のものが嫌いだった。
感情が入り込んでないじゃないかって。
それが岩田さんのところへ伺ったときに
岩田さんのつくられたものだけじゃなく
岩田さんの集められたものまですべてが
いきいきしていたんです。
それがすごいな、と思って。
素直に信じられる気がした。
衝撃的だったんです。



僕、最初に影響を受けた作品は岩田さんですが、
その頃岩田さんが地元でギャラリーをされていて
そこで扱われていた陶芸家の小沼寛さんや
ガラス作家の辻和美さんにも衝撃を受けました。
おふたりにもものすごい感じがした。
ものに感情が入ってるって。

岩田さんとは髪を切りながら
いろいろな話をするようになりました。
欲しい器があると言うと、
「これだったら3回だな」とか言われて
3回髪を切るとくれたりするんですね。
で、そのうち土を触らせてくれるようになりました。
あるとき僕から手伝わせてくださいと言ったんです。
そしたら、
「1年限定でならいいよ」とおっしゃってくださって。

岩田さんは弟子をとらない人なんですよ。
岩田さんの仕事には他者が入れないんです。
岩田さんにしかできない仕事をしている。
だから土練りと梱包ぐらいしかすることがない。
手伝うことがほとんどないので時間があるんです。
すると、「時間が余ってるならつくっていいよ」
とおっしゃる。
だけど、ものの形をつくるというのは
とんでもないことで、
つくろうと手を動かしても失敗ばかりで‥‥。
しまいには、「大村君、やっぱり学校に入ったら?」
って言われてしまって(笑)
それで岩田さんの母校である
岐阜県多治見市にある窯業学校に入りました。



学校は学年1クラスで30人もいないかな?
2年間焼肉屋のバイトをしながら通いました。
同じ頃、近くで陶芸家の安藤雅信さんが
「ギャルリももぐさ(百草)」をつくられて、
できたばかりのときで手伝いをさせてもらっていました。
しばらくして安藤さんがギャラリーの近くに
レンタル工房「studio MAVO」をつくることになりました。
それで卒業後すぐにその工房に入りました。

MAVOには5年くらいいました。
自分のかたちになるまで
ひたすら窯を焚いていましたね。
そして福岡に越してきたんです。

そのころ作っていたものですか。
ろくろの基本で、
まっすぐ切立ち(きったち)をあげる、
というのがあるんです。
真っ直ぐの形ですね。
ずーっとそればっかり練習してた。
削りをせずに
まっすぐあげて形にしようと。
削らないというのは、
作った痕跡っていうのが、
ぼくは絶対いいなと思ってて。
そのほうがものに感情が入るというか。



色は、黒が好きで、
黒い器作ろうと最初から思っていました。
そのときに骨董屋で、ペンキが塗ってある、
ボロボロのパチンコ台を見たんですよ。
こういうふうに塗りたいなと思って、
バイトしてた陶芸教室で上絵具を借りて、
塗ってみたのがこれなんです。
そうですね、片口、好きですね(笑)。



いま、自分でつくるものは、
器、オブジェ、いろいろです。
器は使い途をわりと考えます。
醤油差しとかだったら、こう、
きれいに洗える醤油差しが欲しいとか。
また、形を作ってから、
使い方を考えることもあります。
でもたくさん実験しても、実際使えるのは、
ほとんど──1割もないんですけれど。



今回「ほぷらす」に参加できるのがとても嬉しいです。
最初にお話を聞いたときから、
参加したいなぁと思っていました。
ごはん茶わんと湯のみ、つくります。
どうぞよろしくお願いします。

2012-03-07-WED
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HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN