「ある土に出会ったとき、
 これは仏さまになるな、と思った。
 それが野焼きをはじめたきっかけです。」

土楽の当主、福森雅武さんが土にほれこみ、
比叡山の寺にこもって野焼きをはじめたのは
今から10年以上前のこと。
そのときは、寺の敷地に穴を掘り、
百体以上の陶仏を置き、
小枝や薪をかぶせて焼いたそうです。

そして、この3月末、
福森さんが土楽ではじめて野焼きをされることになり、
窯づめから窯出しまでの10日間を取材しました。



野焼きは縄文時代、
今から1万2000年以上前に始まり、
4〜5世紀に朝鮮半島から
窯焼きの技術が入るまで行われていた、
世界最古の焼き方です。

窯焼きと違って壁も煙突もないため、
穴から熱が逃げやすく、
温度を一定に保つことがむずかしい焼き方です。
そのため、ひびや割れも起こりやすく、
そのできあがりは、だれにも予想がつかないとのこと。
野焼きがはじまる前に、福森家四女の道歩さんは
「前回は、陶器がぜんぶ溶けたんです。
 うちはガス窯や登り窯のときは1200度で焼いてますが、
 野焼きは1000度くらいにしかなりません。
 そこで、低い温度で焼ける土を使うのですが、
 これが1000度を超えたら溶けたんですよ。
 温度が低すぎたら、焼けませんし。
 どうなるか、いまから窯出しの日が心配です。」
と、ドキドキされてました。



野焼きとは、そういった不安定な焼き方のため、
今回、福森さんは穴を作るときに
急激な温度変化をふせぐ工夫をしていました。
長方形の大きな穴の前方に
かまどを半分にしたかたちのおおいを作り、
中央と左右にひとつずつ、
合計3つの小さな窯口を作ったのです。
この窯口に薪を少しずつ入れて、
穴の中の温度をゆっくり上げて、
十分にあたたまってから、
大量に薪を投入し、1000度まで高めていきます。



穴はタテ4メートル、
ヨコ2メートルくらいの大きさです。
穴の中はゆるやかな階段状になっています。
ここにびっしりと器やつぼ、陶仏を置いていきます。



この「窯づめ」とよばれる作業は、
2日間かけて行われます。
3日目はガスバーナーの火で
穴の中の水分を飛ばします。
4日目からは24時間体制です。
穴の中の温度が少しずつ上がっていくように、
小さな窯口に薪をくべ続けます。
6日目は最後の追い込みです。
巨大な薪を穴の上からぼんぼん入れて、
10時間ほど焼き続けます。
それが終わると3日間かけてさまし、
「窯出し」となります。

今回、わたしたちもはじめて体験した
福森雅武さんの野焼きを
スライドショーでご紹介します。





2009-04-28-TUE