「小鳥のブローチ」を実際に作ってくださった
ロンドンのジュエリー職人、
ライオネル・J・ウィッフィンさんについて、
イセキアヤコさんにお話をうかがいました。

イセキさんとのどういうやりとりを経て、
このブローチは生まれたのでしょう?

インターネットのテレビ電話を活用して国境を超え、
ロンドンのイセキさんにインタビューをしました。

   
─── イセキさん、こんにちは。
イセキ こんにちは、よろしくお願いします。
─── そちら(ロンドン)は、いま?
イセキ 朝の10時です。
─── そうですか、おはようございます、
こちらは夜7時です。

きょうは、ジュエリー職人の
ライオネルさんのお話をうかがいたいのですが。
イセキ はい。
ライオネルさん。
─── ライオネルさん。
前もって写真をいただいていたのですが、
この職人さんの工房はすてきな場所にあるのですね。
イセキ ハットン・ガーデンという、
イギリスでいちばん有名な
宝石商とジュエリー工房が密集した通りです。

▲ HATTON GARDEN

▲ ジュエリーショップが軒を連ねる
イセキ そうですね。
ライオネルさんはその一角に工房を持っている方で、
ある日、知人から紹介されたんです。

以前から私は、
アンティークのリプロダクション・ブローチを
イギリスで作ってみたいと思っていたので
これはぜひ、会いにいかねば、と。
─── それで、ライオネルさんの工房を訪ねた。

▲LIONEL.J.WIFFEN LTD
イセキ はい。
ヴィクトリア時代に流行した、
枝の上に2羽の鳥がとまっているブローチを持って、
「これを、もうちょっと使いやすくして、
 強度を出しながら復刻させたい」
ということを話したんです。
そうしたら、
「じゃあ、裏のピンの部分は
 こういう素材に替えてみようか」とか、
「金もイエローゴールドとグリーンゴールドの
 2色を使ったほうが美しいんじゃないか」
 とか、いろいろ提案をしてくださって。

▲工房でのライオネルさん。
─── へええーー、
最初から積極的に受けてくださった。
でも、ライオネルさんは日本の「ほぼ日」のことを
もちろんご存じないでしょうし‥‥
どういうポイントで「この仕事はたのしい」と
思われたのでしょう?
イセキ もともとライオネルさんは、
今回のように同じデザインをいくつも作ることを
されていない方なんです。
イギリスのセレブリティのために、
大きな宝石をあしらったものとか、
豪華なエンゲージメント・リングとか、
そういうのを主にやってこられた方なので、
「リプロダクションもおもしろい」
と思ってくださったようです。
─── 興味を持ってくださった。
イセキ あとは、そう、
工房の20〜〜30代のアシスタントの女の子たちが、
私が置いていったブローチを見て、
「キャーッ、やりたい、やりたい」と
盛り上がってくれたと聞きました。(笑)
それでライオネルさんも、
「うちのガールズが楽しんでるから、いいよ」
と。

▲数名のアシスタントさんと一緒にお仕事をされています。
─── なるほどー。

具体的にはどのようにして、
おふたりで仕事を進めていったのでしょう。
イセキ まずライオネルさんは、
もとのアンティーク・ブローチを
解体するところから始めました。
このブローチは、
鳥が枝に2羽刺さっているんです。
あとは、葉っぱが2枚ついた枝。
これらをバラバラにして、型を作るんです。

▲こうしたゴム型で制作していきます。
─── 型を作って、試作のパーツをつくるんですね。
イセキ ええ。それを繰り返してもらいました。
─── それは、何回くらい?
イセキ えーーと‥‥
トータルで言うと、
5回か6回くらいだったかと。
試作品ができるたびに見せていただいて、
「ここをもうちょっとこういうふうに」
ということを繰り返しました。

▲工房でのイセキさんとライオネルさん。
─── 日本の職人さんとイギリスの職人さんでは
いろいろ違うところがあると思うのですが‥‥
その、「日本人の要求は細かい」
と思われることは‥‥?
イセキ それは、きっと感じていらっしゃった
と思います。(笑)
でも、ライオネルさんは
私のリクエストに
忍耐強く応えてくださいました。
日本のスタンダードに合わせるために、
すごく努力してくださいました。

─── 当然のことですが、
それはやはり、
腕があるから応えられたことなのですよね。
イセキ もちろん。
普段から常に
質の高いものを作っている方だからこそ、
安心してお任せできました。

─── すばらしい。
イセキ 細かすぎる要求かな?
と修正をためらいそうになったときも、
「やっぱりこうしたほうが
 きれいだと思いませんか?」というと、
「そうだね。やってみるよ」と。
ベテランの職人として、
仕上がりの美しさを追求する
プライドと技術を持っていらっしゃるので、
頭が下がる思いでした。

─── かっこいいです、ライオネルさん。
イセキ はい。
ご一緒できたことを光栄に思っています。
─── 日本の、「ほぼ日」の読者に
「小鳥のブローチ」が届いて、
よろこばれて、
その「よろこびの声」を
ライオネルさんに届けたいです。
きょうはどうもありがとうございました。
イセキ こちらこそありがとうございました。
私も、たのしみです。
※ライオネルさんが、「小鳥のブローチ」をお買い求めの方へ、
 メッセージを書いてくださいました。

「小鳥のブローチ」をお買い上げのお客様へ

57年間、私は職人として
あらゆる種類のジュエリーを作ってまいりましたが、
アンティークの品からインスピレーションを得た
ブローチの製作は、これが初めての試みでした。
完成品の仕上がりに
ご満足いただけることを願っております。

敬具
ライオネル・J・ウィッフィン

Photography : Alice Rosenbaum

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