富岡さん

磨かない米を仕込んで日本酒をつくるためには、
磨き込んだお米で日本酒を作るのとは、
ちょっと違う技術が必要なんですよ。
ひとつには、磨かないお米は、
磨いたお米にくらべて
水分を吸いにくいんです。
玄米を炊くのに、
水量と時間がよぶんに必要でしょう?
それとおなじです。
お酒をつくるときはお米を蒸気でふかしますが、
その時の水加減が難しくなるんですね。
さらに、そのお米に
麹菌をつけて麹を作りますが、
そのときにも、磨かないお米は、
中に菌糸がはいりにくいので、
ここでも、技術が必要です。

その技術っていうのは、
お米を磨きこんで日本酒を
作るなんてことはしてなかった昔だったら
よく知られていたことかもしれないんだけど、
いまじゃ「忘れられた技術」だったんですよ。

でも「よしかわ杜氏の郷」には、
富岡という杜氏がおりまして、
だいぶ高齢なんですが、
この人が磨かないお米から
日本酒を仕込む方法を、
知識として持っていました。

「有りがたし」をつくるときには、
富岡の知識がおおいに役立ちました。
けれども、酒づくりというのは
知識と技術があれば誰でもできるものではない。
富岡にしても、自身の知識だけではなく、
現場でのたいへんな試行錯誤を重ねて、
ようやく「有りがたし」が完成したんです。
富岡という「名杜氏」がいたからこそ、
できあがったのが「有りがたし」なんですよ‥‥。

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